東京都との都県境に位置する山梨県小菅村では、今、日常的に物流用ドローンが上空を飛んでいる。南北を標高1,000m以上の尾根に挟まれた谷間から飛び立ったドローンは、山の斜面に沿うように飛行し、周辺の集落に設けられたドローンスタンドに降りていく。普段は村民の注文に応じて食料品や日用品を届けるドローンだが、2021年のクリスマスには、クリスマスケーキを空から届けた。

1日10便のドローンが村内5カ所に商品を配送するサービスを構築

 このドローン配送サービスに取り組んでいるのが、エアロネクストと子会社であるNEXT DELIVERYだ。エアロネクストは2020年11月に山梨県小菅村と連携協定を締結。「小菅村に物流ドローンの研究開発拠点兼試験飛行場を設置し、ドローン物流の実証を実施するとともに、ドローン配送のための定期ルート(ドローン実験線)を開設する」と発表した。

 そして翌2021年1月20日にはドローン配送を主事業にする子会社NEXT DELIVERYを設立。同月22日にはセイノーホールディングス(セイノーHD)と業務提携し、両社で協力して小菅村での新しいスマート物流システムの開発と実績づくりを行うとするなど、2020年末から小菅村を拠点に、ドローン物流システムとサービスの開発を行っている。

小菅村のSkyHub Storeのドローン配送網(エアロネクストのプレスリリースから)。

 2021年4月からは本格的にドローン配送サービスの実証実験を開始。小菅村の中心集落に「ドローンデポ」という配送拠点を設け、ACSLの汎用機PF2を使い、約600m離れた配送地点に対してレベル2(目視内自動飛行)によるドローン配送から始めた。フライトはおおよそ週に2〜3日、1日に2便からスタート。利用者は当初、フードデリバリーといったサービスのニーズが高い20~40代のモデルファミリーを選び、利用者から主にLINEで注文を受ける形としていた。

 その後約半年間の開発期間の中で、配送先は当初の1カ所から村内4地区5カ所の5ルートに拡大。配送拠点からは最短で約600m、集落の一番端にある地点では約3kmある。また、配送頻度も朝10時からお昼前後の休憩を挟んで夕方4時まで30分間隔の定期便という形に。さらに機体は2021年夏以降、同年3月にエアロネクストとACSLが共同開発を発表していた物流専用ドローンの試作機を導入している。