2021年10月7日、イノベーションチャレンジ実行委員会とkarch、セイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、エアロネクスト、経済産業省 北海道経済産業局は、上士幌町の各地においてドローンを活用した複数の先進的な実証実験を実施することを発表した。

 実証実験は10月6日~10日にかけて実施。10月6日に、1)ドローン観光商品開発、2)ドローン宅配の2つの実証実験を公開し、その後10月7日~10日の期間中には引き続き、2)ドローン宅配を上音更地区の複数個宅へ行うとともに、3)牛の検体のドローン配送を実施する予定である。

1)ナイタイ高原牧場におけるドローンを活用した観光商品開発デモ飛行

 約1,700ha(東京ドーム358個分)と広大な面積を有する公設のナイタイ高原牧場で、ドローンを活用した新たな観光商品開発の実証実験を実施。karch主催、コルソ札幌 協力監修のもと、ナイタイテラス内にグランピング特設サイトをしつらえ、利用者がオーダーしたドリンクと十勝ナイタイ和牛ステーキを麓からドローンで配送する。上士幌の食と大自然、テクノロジーが融合した、他にはない観光商品として将来的な提供を検討していく。

ナイタイ高原牧場を飛行するエアロネクストの物流専用ドローン
グランピング特設サイトに、ドリンクやステーキを運ぶ様子
実証実験に使用したドローンと、(写真向かって左より)karch代表取締役 千葉与四郎氏、上士幌町長 竹中貢氏、エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏、セイノーHD執行役員 河合秀治氏

2)次世代高度技術活用におけるドローン宅配(個宅への買物代行ドローン配送)実証

 町市街地から離れた農村地域に住む交通弱者への買物支援を想定し、食料品をドローンで個宅配送する実証実験を実施。廃校となった小学校に地元スーパーの荷物を一時在庫したうえで、その中から注文のあった商品を購入者の自宅の敷地内にドローンで直接配送する。(主催:イノベーションチャレンジ実行委員会)

 上音更地区の住民が、「予約制福祉バス」の実証のために町が貸与しているタブレットを使って、あらかじめ用意された地元スーパーの食料品の詰め合わせを注文できるアプリから「ごはんセット」を注文。約2分後には自宅前にドローンが着陸し、住民に届けられた。

上音更地区を飛行するドローン
「ごはんセット」を自宅前に届けて離陸する様子
ドローン宅配された荷物をスタッフから受け取る住民

 この実証実験は、セイノーHDとエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」の社会実装に向けたもので、オンデマンドによる個宅へのドローン配送は全国初の試みだという。SkyHubは、ドローン配送が組み込まれた、オープンプラットフォームかつ標準化した仕組みで、ドローンデポを拠点に、SkyHubアプリをベースにした配達代行、オンデマンド配送、医薬品配送、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送などのサービスを提供する。

3)牛の検体のドローン配送

 ノベルズ協力のもと、牛の乳房炎の検体(乳汁)の配送をテーマに、温度管理・振動・ドローン配送と陸上輸送との連携・配送後の検査品質評価等の一連の実証を行い、配送等の課題の多い畜産業界全般におけるスマート物流の実装可能性を検証する。ドローンを活用した牛の検体の一連配送の実証は、日本初の試みだという。
 なお、本実証は経済産業省「地域産業デジタル化支援事業」(実施機関:公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター)を活用して実施する。

 これら3つの実証実験は、本年8月に上士幌町、セイノーHD、電通、エアロネクストの4者が締結した、ドローンを含む次世代高度技術の活用による「持続的な未来のまちづくり」に関する包括連携協定の、農業・観光・産業・経済の振興、カーボンニュートラルと利便性が両立した持続可能な地域交通・物流の確保と住みやすい環境づくりに関すること、karchと連携した新たな観光コンテンツ開発の「ナイタイテラスにおけるドローンを活用した観光商品開発」に基づくもの。

 実証実験の内容は、今後実際に上士幌町での実用化を目指しており、まずは物流インフラとしてのSkyHub導入の第一歩として、11月頃より荷物を集積し一時保管するドローンデポを市街地に設置し、地上配送と将来のドローン配送を想定した買物代行サービスを開始する予定だ。