⽔素燃料電池ドローンの普及に向けてクリアすべき課題

 ガスタンクの圧⼒によって⾶⾏時間を延ばすことができるうえ、環境にも優しいなど利点の多い⽔素燃料電池だが、社会実装までの道のりはもう少し先になる⾒通しだ。まずひとつめに、⽔素ステーションのインフラが整っていないことが挙げられる。全国の⽔素ステーションは、4⼤都市圏を中⼼に155カ所設けられている(2021年9⽉時点)が、⼀般的に利⽤するにはまだまだ少ない状況だ。それに加え、⾃動⾞などに使⽤されるガスタンクとは容量や圧⼒が異なるため、4.7ℓの⼩さなタンクの充填に対応するスタンドも少ないという。充填には資格が必要なため、ガソリンのように利⽤者が補給するわけにもいかず、LPガスのようにガス業者を現場に派遣してもらい、充填するといった利⽤の仕⽅になることが予想される。

 次に、規制の⾯でも⽔素燃料電池ドローンを⾶⾏させることは難しい。⾼圧ガスタンクを搭載しているため、安全に取り扱うための議論が国で交わされている。同社は経済産業省⼤⾂特認を取得し、今回のデモ⾶⾏を実施したが、取得するためには帝⼈の協⼒が⽋かせず、⼀般のドローン利⽤者が取得できるようなものではない。ガスタンクの安全性を⽴証するために、⾃動⾞同様の衝突実験やサイクルテストを数多く実施する必要がある。なお、経済産業省⼤⾂特認の取得にあたっては、1年半前から準備を進め、ようやく取得することができたという。これにより、認可を得たエリアで1年間⾶⾏させることができる。また、ドローンを⾶ばすための国⼟交通省の⾶⾏承認は別途必要となる。

取得した経済産業省⼤⾂特認と、国⼟交通省による⾶⾏許可。

 ⽔素燃料電池ドローンの実現には、このような課題が残されており、⾃動⾞や船舶といった他の⽔素燃料電池を活⽤したモビリティとともに、普及させることができるかが焦点となる。回転翼機における⻑時間⾶⾏の実現に向けて、同社は引き続き⾶⾏データの収集や改善に取り組んでいくという。