⾼圧ガスタンクによって⾶⾏時間を延ばせる⽔素燃料電池ドローン

 同社が開発した⽔素燃料電池ドローンはDJI Matrice 600に⽔素燃料電池を搭載したもの。同社の代表を務める⾙應⽒は「⽔素燃料電池ドローンは⻑時間⾶⾏を得意としていることから、ドローン物流などでゲームチェンジを狙える可能性がある。⾼圧ガスタンクと⽔素燃料電池を搭載することができれば、既存のドローンも⻑時間⾶⾏が可能となり、今回は⽔素燃料電池による⾶⾏検証のために機体を開発した。DJI Matrice 600をベースにしたのは、試作⽤ドローンでは不具合が起きた場合に機体の故障か⽔素燃料電池の故障か判断が難しくなるためだ」と話す。

⽔素燃料電池ドローンを開発したロボデックスの⾙應代表。

 ⽔素燃料電池に必要な機材の重量は約4kg。搭載した帝⼈製の⾼圧ガスタンクの容量は4.7ℓで、圧⼒は19.6MPaとしている。⽔素燃料電池の利点は、この圧⼒を⾼めることで⾶⾏時間を延⻑することができることだ。同じタンク容量であっても、圧⼒を⾼めることで⾶⾏時間は⾶躍的に延びるという。⾼圧ガスタンクは19.6MPaを上限としたものが⼀般的なため、今回はこの圧⼒に合わせて充填されているが、搭載した帝⼈製のタンクは最⼤圧⼒29.4MPaで認可されており、さらに⾶⾏時間を延ばすことも可能。なお、19.6MPaのガスタンクを搭載したドローンは室内で約80分、屋外では約55分の⾶⾏に成功している。将来的には120分の⾶⾏を⽬標としており、29.4MPaにすることで⾶⾏時間は約1.5倍延び、120分の⾶⾏も夢ではないという。それに加え、帝⼈はタンク容量9ℓの規格も製造しており、認可を取得できれば超⼤型ドローンの⻑時間⾶⾏も可能になり得る。

 同社は2019年から英国のインテリジェント・エナジーと⽔素燃料電池ドローンを共同開発しており、出⼒2.4kWのインテリジェント・エナジー製⽔素燃料電池を採⽤している。2.4kWの⽔素燃料電池は、4.7ℓの⾼圧ガスタンクとドローンの重量を考えると、バランスが良く⻑時間⾶⾏に適しているという。

 これらの搭載機材とドローンを合わせたパッケージ価格は約800万円程度と話し、⾙應代表は「インテリジェント・エナジー製の⽔素燃料電池の量産体制が徐々に整いはじめている。⽣産数の増加によって少しずつ価格が下がる⾒通しだ。また、800万円のドローンと聞くと⾼価に思えるが、バッテリーを動⼒源とするドローンを現場で⻑時間使⽤するためには、⼤量のバッテリーが必要となり、バッテリー代だけでも決して安価なものではない。それに加え、⽔素はガソリン同様に数秒で充填できるため、1本あたり約1時間弱を要する数⼗本のバッテリー充電を考えれば、労⼒や時間削減にもつながる。また、バッテリーはライフサイクルもあるため、定期的な買い替えも発⽣し、トータルコストで考えれば⽔素燃料電池はずば抜けて⾼価なものではないだろう」と説明した。

茅ヶ崎市で15分程のデモ⾶⾏を実施した。

 今回はデモフライトを⾏い、ドローンを起動してから3〜5分程度⽔素燃料電池の暖機をすると、すぐさま離陸を開始。エンジンを搭載していないため、騒⾳はバッテリー駆動のドローンと同様で、⾼圧ガスタンクと⽔素燃料電池を搭載しながらも安定した⾶⾏を⾒せた。当⽇は強⾵のため、15分程度の⾶⾏となった。

トヨタ⾃動⾞の⽔素を使った燃料電池⾃動⾞である「MIRAI」は、後部座席とトランク、フロア部に⽔素燃料⽤のガスタンクを積載。⼀般的に流通していない樹脂製のレベル4規格のガスタンクを採⽤している。⾃動⾞の場合は外気から取り込んだ空気を適正値に調整する機能があり、気温や湿度による影響はほとんど無い。※SDGs Week EXPO for Business 2021にて、トヨタ⾃動⾞が展⽰。

 ⾙應代表は開発段階にあると話し、「ドローンは形となったが、今後はあらゆる環境下での⾶⾏データを取得しなければならない。⽔素燃料電池は外気を取り込み、化学反応させるため、夏場と冬場では性能に差が出る。とくに湿度による影響は⼤きく、乾燥した冬場は⾶⾏時間などに影響がでる可能性がある」と今後の取り組みに触れた。