2024年4月25日、テラドローンは、同社子会社でベルギーに拠点を置く運航管理システム(UTM)(※1)プロバイダーのUnifly NV(以下、ユニフライ)と、3月に出資しグループ会社となったAloft Technologies, Inc.(以下、アロフト)と共同で、欧州や米州、中東、アジアなどの国外をターゲットとした空飛ぶクルマ向けUTMの開発に着手することを発表した。

 ユニフライはカナダやドイツなど国家レベルでのUTM導入実績があり、UTMやフリート管理システムを提供するアロフトは、米国のUTM市場で84%以上のシェアを持つ(※2)

※1 運航管理システム(UTM):同じ空域を飛行する複数の無人機を安全・効率的に運航するためのプラットフォーム
※2 FAA LAANCレポートとアロフトユーザーデータをもとに算出(出典:Aloft Launches New Fleet & UTM Capabilities, Surpassing 84% of LAANC Airspace Authorizations In September

 世界各国において空飛ぶクルマは新たな移動手段として期待されており、その開発が進んでいる。今後、世界の国際的イベントなどに合わせて飛行が計画されるなど、世界的に普及していくことが予測される。米国のモルガン・スタンレーの調査では、空飛ぶクルマなどを含む都市航空交通(UAM)(※3)の市場規模は、2040年に1兆ドル(約151兆円)、2050年には9兆ドル(約1,362兆円)に拡大すると見込まれている(※4)

※3 都市航空交通(UAM):空飛ぶクルマ(AAM)のうち主に都市部で行われる短距離、低高度のAAM運航(参照:空の移動革命に向けた官民協議会「空飛ぶクルマの運用概念」)
※4 Morgan Stanley “eVTOL/Urban Air Mobility TAM Update: A Slow Take-Off, But Sky's the Limit

 3社は市場拡大を見込んだ上で、空飛ぶクルマやドローン、既存の航空機などが安全で効率よく共存するには、低空域におけるインフラプラットフォームとなるUTMの存在が重要だと考え、デジタル化や自動化が進む既存のUTMプラットフォームの機能を拡張する形で空飛ぶクルマ向けUTMの開発を開始することを決定した。

3社が目指す空飛ぶクルマ向けUTM

 3社は、既存のUTMは機能的に空飛ぶクルマの飛行を完全にサポートできる仕様ではなく、空飛ぶクルマ向けUTMは、より多様で複雑なものになるとしている。空飛ぶクルマ業界のニーズを認識した上で飛行に必要な追加機能を開発し、既存のUTMに組み込む形で空飛ぶクルマ向けUTMのプラットフォームを構築する。また、自動化に重点を置き、運用の効率化を促進する方針だ。

 各国で実装が進む既存のUTMと同様に、国ごとに一部異なる仕様となることを想定する一方で、中長期的にはグローバルでのシームレスな相互運用・統合を目指し、規格化などにも貢献するとしている。

3社が開発する空飛ぶクルマ向け運航管理システムのイメージ

 開発を進めるにあたり、空飛ぶクルマ関連のメーカーやバーティポート(※5)事業者、航空系企業などからパートナーを募るほか、各国の航空当局や航空管制サービスプロバイダー(ANSP)などからもヒアリングを行うなど、関係各所と連携を図る計画だ。

※5 バーティポート(Vertiport):VTOL機(垂直離着陸機能を有する航空機)の到着、出発および地上移動等のために使用される陸上の一定の区域で、空港等のうちVTOL機専用の陸上ヘリポート(参照:国土交通省「バーティポート整備指針」)