2023年11月9日、センシンロボティクスは、中部電力パワーグリッドと共同で、送電設備点検業務の効率化に関する研究を実施し、画像解析によるリアルタイム異常検出技術を確立したことを発表した。

 2023年中に同技術をモバイルアプリケーション「SENSYN Flight Edge」に実装し、中部電力パワーグリッドが保有する送電設備の点検業務に活用する予定だ。

(電線損傷画像は、画像編集ソフトで模擬作成)

 モバイルタブレットに伝送されるドローンのライブストリーム映像をもとに、画像解析による送電線・がいしなどの異常をリアルタイムに検出する技術により、送電設備点検のさらなる省力化を実現する。市場に流通している一般的なモバイルタブレットを活用し、現場においてリアルタイムに異常状況の判定ができるようになり、送電設備の点検業務の効率化および点検品質の均一化が期待される。また、3次元点群を活用した自動点検飛行ルートの補正機能などの業務実装に向けた技術的な実現性の調査を完了した。

リアルタイム異常検出技術

 公衆保安確保の観点から、電線の断線やがいしの断連が生じるほどの重大な異常は早期に発見する必要がある。こうした背景から、モバイルタブレットに伝送されるドローンが撮影している映像(ライブストリーム映像)を用いて、送電線やがいしの異常のリアルタイム検出技術を確立した。センシンロボティクスの送電設備点検アプリケーション「POWER GRID Check」が実装する送電線自動点検飛行モード中に、電線の素線切れ・溶損やがいしの破損・欠けなど、明らかな損傷をリアルタイムに発見することができる。

 これらの自動異常検出技術により、電線の断線やがいしの断連が生じるほどの重大な異常の早期発見を可能とし、点検品質の均一化が期待できる。

電線異常検出
がいし異常検出(電線損傷画像は、画像編集ソフトで模擬作成)

業務実装に向けた技術調査を完了

 現状の自動点検飛行は、現地に出向した操縦者の目視確認で安全な飛行ルートを選定しており、操縦者の技量に頼るところがあった。そこで、LiDARカメラや航空測量で取得した3次元データを用いて、自動点検飛行ルートの安全航路設計や座標取得の簡略化技術等も確立。今後、これらの機能をPOWER GRID Checkに実装するとしている。

 また、山地での測量業務は、測量機器を用いて人的作業で行われており、非常に労力がかかっている。そこで、LiDARカメラや航空測量で取得した3次元データを用いて、測量業務の代替となる業務の調査を行い、業務適応に向けて技術要件をまとめた。

3次元点群を活用した安全航路設計イメージ

送電設備点検アプリケーション「POWER GRID Check」について

 架空送電設備の保守業務に特化した業務アプリケーション。自動航行させたドローンで鉄塔、送電線を一括で自動点検する。

<送電線自動追跡点検の手順>
1. Webアプリケーション「POWER GRID Check」に送電設備情報と座標情報を入力し、自動航行ルートを生成。
2. ドローンとの通信・制御を行うモバイルアプリケーション「SENSYN Flight Edge」で航行ルートを取得し、ドローンへ送信。
3. ドローンがその飛行ルートに沿って自動航行し、送電設備を撮影。