2022年11月24日、エネルギー・金属鉱物資源機構(以下、JOGMEC)は、航空機やドローンからの温室効果ガス測定について、全日本空輸(以下、ANA)と「2022年度 航空機等による温室効果ガス測定技術調査」に関する委託調査業務契約を締結したことを発表した。従前よりANAと実証検証に取り組んでいる宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)が、同事業の協力を行う。この共同調査により、報告される温室効果ガス排出量の検証手法として期待されるトップダウン手法を社会実装することを目指すとしている。

 トップダウン手法とは、衛星やドローンを用いて上空から温室効果ガスを測定する手法のことで、地域などにおける包括的な排出状況を観測することができる。

トップダウン手法による温室効果ガス測定手法のイメージ

 近年、気候変動問題に対応するための脱炭素化への動きが世界的に加速している。温室効果ガスの中でも地球温暖化係数が25倍以上となるメタンの排出削減は、国際的に重要な課題となっており、石油天然ガス産業を中心とするエネルギー事業を検討する際には看過できない対応事項として、メタン漏洩の管理方法やモニタリング手法の導入検討が議論されている。JOGMECは2022年5月に「LNG・水素・アンモニアの温室効果ガス排出量及びCarbon Intensity算定のための推奨作業指針」を公表し、トップダウン手法として衛星・航空機・ドローン等の導入の重要性を述べている。

 共同調査では、ANAおよびJAXAが従前より実証検証を進めてきたリモートセンシング技術を用いた航空機からの温室効果ガス測定手法のノウハウを活用し、航空機を改修することなく地表面のメタン測定を可能とする手法に取り組みながら、ドローンを用いたトップダウン手法によるメタン測定手法にも取り組んでいく。なお同事業はJOGMECがANAに業務委託し、JAXAは調査研究協力者として連携をとり調査および測定手法の課題の整理を行うとしている。

 ANAの持株会社であるANAホールディングスでは、2020年9月よりJAXAと共に都市域における温室効果ガスの排出量を、交通・産業などの発生源別に評価することを目指し、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測技術を応用した観測機器を旅客機へ搭載し、温室効果ガスの観測・解析(GOBLEUプロジェクト)を行っている。
 GOSATは高度666kmから正確にCO2濃度を測定することができるが、観測点1点が直径10km程度と空間分解能が十分ではなく、広域の排出量は推定できても発生源別の評価が難しいという。一方、旅客機は地表に近い高度10km以下を飛行するため、より細かなデータが得られるものと期待される。