2022年3月9日、エバーブルーテクノロジーズは、スマホアプリなどのデバイスからの救助要請により、自動的に救命浮環が落水者まで航行して救難支援を行う「浮環ロボ・プロトタイプ」を開発し、実証実験を実施したことを発表した。

浮輪ロボ・プロトタイプ

 浮環ロボ・プロトタイプは、誰でも容易に自動操船ができる同社のオリジナルスマホアプリ「eb-CONNECT」と、自動操船ユニット「eb-Navigator」をベースに開発。全長80cmの無人ボートにeb-Navigatorを装着してモーターとラダーを自動制御することで、落水者の位置まで自律的に航行し停止する機能を持つ。落水者は浮環ロボ・プロトタイプの浮環につかまることで、水上で救難を待つことができる。

 エバーブルーテクノロジーズではこれまで、無人海洋調査・魚群探知向けの2mクラス「Type-A」、150kgの積載量をもつ無人貨物実証実験を行った5mクラス「Type-X」、固定翼航空ドローンと帆走を組み合わせ高速移動と長時間稼働を両立した「Type-P」など用途に合わせた水上ドローンを開発し、社会実装に向けた活動を続けてきた。今回の取り組みは、こうした帆船型ドローンの無人操船技術を応用したものとなる。

 同実験の成功を受けて、今後スケールアップした複数の無人艇を使い広域をカバーすることで、遭難者の迅速な水難救助活動を行うソリューションを漁業者やマリーナ、地方自治体、官公庁向けに提案していくとともに、協業パートナーを募集していくとしている。

浮環ロボ・プロトタイプ 海上実験の様子

 実証実験は、神奈川県逗子市 逗子海岸において実施。浮環ロボ・プロトタイプは水上で待機し、落水者からのSOSを受け、落水者の位置へ自動で航行して浮環を届けることで救護支援することを想定した。

 落水者がスマホアプリeb-CONNECTのSOSボタンをタップする、もしくは音声認識によりアプリを自動起動させると、自動的にSOS情報をクラウドサーバーへ送信し、浮環ロボ・プロトタイプに位置情報を伝達して自動発進。正確に落水者まで自動航行できることを実証した。

【海況と実証概要】
ボート全長:80cm
駆動方式:ブラシレスモーター+スクリュー
艇速(GPS情報から取得):最大 1.26m/s(2.45ノット)※自動操船時
移動距離:31.5m
所要時間:50秒

海上テストの様子(左)、eb-CONNECT(右)

 海や湖、川などで流されたり落水したりした際は、ライフベストを装着していたとしても低体温症など別の要因で命を落とす危険性があり、速やかな救助が求められる。他の仲間による救助も可能であるが、一人で行動していた場合や、仲間とはぐれた場合などは危険な状況となる。特に海況が悪い、夜間などは発見されにくくなる。
 昨今、水上での活動においてもスマートフォンなどを携帯することが安全面からも推奨・一般化されつつあり、落水時に救難情報を身内などに送るサービスも出てきている。

 小型船舶で装備が義務付けられている「救命浮環」は、落水者に向けて投げ入れて使用するが、落水者に気付かない場合や、距離が遠い、夜間や荒天のため落水者が見えないといったケースでは迅速な救護ができないなどの課題がある。

 浮環ロボ・プロトタイプは、救護活動を迅速に支援することを目的としている。落水者がスマホアプリなどのデバイスからSOSを発信すれば自動で浮環が届くため、水面で安全に待機する時間を確保し、救助を待つことができる。
 海水浴場や港湾施設、釣り人が利用する埠頭などの沿岸部で不意な落水があった場合などにも自動で初期救護支援を行うため、施設管理者の負担を軽減する。

 メッシュ状に複数台の浮環ロボを配置することで広い範囲をカバーし、迅速に救護支援を行うことができる。同社の自動帆走技術と組み合わせることで水上での長時間待機が可能となり、将来的には沿岸部だけでなく外洋における海難救助への活用が期待される。