2022年2月22日、NTTドコモ(以下、ドコモ)は、神奈川県の協力のもと、ドローンを活用した橋梁点検の実証実験に成功したことを発表した。

 同実証は2022年1月25日、2月17日に神奈川県厚木市の戸沢橋右岸側において実施。Skydio社の自律飛行型ドローン「Skydio 2」と、ドコモのドローンプラットフォーム「docomo sky Cloud」を組み合わせ、「撮影→共有→解析→確認」の一連のプロセスの有効性を検証し、自治体が実施する橋梁点検に活用できることを確認した。今後は飛行や解析などの業務プロセスの自動化を進め、さらなる負担軽減を目指すとしている。

実証実験の様子

 長さ2.0m以上の道路橋については5年に1度の近接目視による定期点検が義務付けられているが、技術者不足や点検費用が自治体の課題となっている。また多くの場合、点検作業は交通量の少ない夜間に行うため危険を伴い、暗所作業は効率も悪く作業も長引く。高度経済成長期に集中的に整備された橋などは老朽化が進んでおり、効率的に維持管理していくことが求められている。

 神奈川県の橋梁高齢化率(※1)は、県が管理する橋梁約1,200カ所のうち、2015年4月1日時点で約34%だったものが10年後には約64%、20年後には約78%に増加すると予測されている。それに伴い、橋梁に関する事故の発生リスクが高まることが懸念される。

 同県はテクノロジーの力を活用して、高齢化などによるさまざまな社会的課題の解決に向けた実践的な取り組みの推進を目的に「ドローン前提社会の実現に向けたモデル事業(第2期)」を公募し、同事業のひとつとして今回の実証実験をドコモが実施した。

※1 全管理施設に対する建設後50年以上経過した施設の割合。

橋梁を撮影する「Skydio 2」

 同実証では、自律飛行型ドローンを用いることで、日中、交通規制をかけずに橋梁の状態を確認することができた。作業時間の短縮、作業員の安全性も向上することが分かった。撮影した写真は、これまでの点検で撮影したものと同程度であった。
 また、自動飛行支援ソフトウェア「Skydio 3D Scan」を用いることで、操縦者の技術に依存せずドローンを飛行させることができるため、橋梁点検を行う技術者の確保や費用面の負担軽減が期待される。
 撮影した写真は、クラウドサービス(docomo sky Cloud)により遠隔から作業内容をリアルタイムに確認したり、解析を行ったりすることが可能だ。

 ドコモは今後も実証を重ね、橋梁点検の自動化を目指すほか、さまざまな場面においてドローン活用を促進していくとしている。

実証実験での飛行・撮影の様子(docomo YouTubeチャンネル)

検証内容

1. 自律飛行型ドローン「Skydio 2」による、橋桁を支える支承部や橋桁内部など、通常撮影が困難な箇所の手動撮影での確認および道路裏側(床版)の自動飛行の実施

通常撮影が困難な支承部の確認(左)、自動飛行による道路裏側(床版)の確認(右)

2. 「Skydio 3D Scan」を用いて、GPSが取得しづらい環境下での橋脚の自動飛行および網羅的な撮影の実施

「Skydio 3D Scan」の飛行軌跡と撮影点(左)、「Skydio 3D Scan」で網羅的に撮影された画像(右)

3. 1、2で取得した画像を2D/3Dで解析し、橋梁の状態を網羅的に把握可能かを検証

道路裏側(床版)の自動飛行から取得した画像で生成した平面図
「Skydio 3D Scan」で取得した画像から生成した3Dモデルと平面図