2021年11月15日、NTTドコモ(以下ドコモ)とエアバスは、高度約20kmの成層圏を飛ぶ高高度無人機(HAPS)「Zephyr(ゼファー)S」を用いて、成層圏から地上の受信アンテナへのUHF帯(450MHzおよび2GHz帯)の電波伝搬測定実験を実施したことを発表した。

 今回の実証試験は米アリゾナ州ユマにて、8月25日から9月13日まで実施。実験期間のうち成層圏での滞空日数は18日間で、HAPSから送信した電波の伝搬状況を測定・分析し、成層圏から地上にあるスマートフォンなどのデバイスへの通信サービスの実現可能性を実証した。この結果をもとに、両社は今後通信エリア化が難しい山間部や離島、海上などへの通信サービスの提供を目指すとしている。

エアバス社HAPS「ゼファーS」離陸時の様子

 両社はエアバスのHAPSを飛行させ、スマートフォン向けの通信に利用されている2GHz帯の周波数を用いて、成層圏と地上間での電波の伝搬特性を測定した。HAPSと地上アンテナとの直接接続を行い、通信距離や天候(晴天、曇り、雨)、HAPSの飛行パターンなどさまざまな条件下で、電波の減衰特性の分析を行った。加えて、低速だが長距離通信が可能となる低い周波数(450MHz)を使用し、約140kmの長距離接続の伝搬測定にも成功した。
 これら試験内容から、UHF帯電波を用いるHAPSとスマートフォンの直接通信が最大約140kmの距離で、十分な通信品質を実現可能であることを確認した。

 今回の試験でHAPSの最高到達高度は約23.195kmに達しており、成層圏の極低温な環境下でも提供が可能であることを実証している。

 5Gのさらなる高度化および6Gに向けた取り組みとして、空・海などを含むあらゆる場所に通信網を拡大する「カバレッジ拡張」の検討が世界的に進められており、基地局設備などを搭載して成層圏を飛行するHAPSを用いてネットワークを構築する、非地上ネットワーク(Non Terrestrial Network、NTN)技術が期待されている。このネットワークは、空や海へのカバレッジのほか、災害対策やイベント会場など人が密集する場所での通信容量確保、建設現場での重機の遠隔操作などに有効であると考えられている。

実験概要図