2020年2月6日、米Alphabetの子会社であるLoon(ルーン)と、ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルは、ソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「HAWK30(ホークサーティー)」用のペイロード※を共同で開発したことを発表した。

※ 高高度飛行体に搭載する通信機器を指す

 HAWK30で使用するペイロードのデザインおよび開発は、世界中のより多くの人々や場所、モノにインターネット通信を届けることを目指して、両社が2019年4月に発表した長期的な戦略的関係構築の一環として実施したものである。

 2019年4月の発表以降、Loonが運用する成層圏気球において既に活用されているペイロード技術をHAWK30に適用することを目指して、LoonおよびHAPSモバイルの技術チームが協力してきた。秒速約27mにもなる風速や、-90℃の気温など、成層圏の厳しい環境下で長時間飛行しても、安定して稼働するペイロードの開発実績を持つLoonのノウハウが大いに生かされたという。2011年に初めて成層圏で活用するペイロードを開発したLoonは、4,000万km以上の飛行実績や、世界中で30万ものユーザーをインターネットに接続した実績がある。

 今回共同で開発したペイロードは、さまざまなコンポーネントで構成されており、成層圏に浮かぶ基地局の役割を果たす。ミリ波の通信システムによって、機体と地上の通信接続ポイント間のバックホール回線を提供する他、成層圏で飛行する複数の機体間の通信を実現する。ペイロードに搭載されている高精度アンテナにより、最大700kmの距離のP2P(ポイント・ツー・ポイント)通信において、最大1Gbpsのデータ通信速度が可能になる。また、通信を維持するために、機体の動きに合わせてペイロードのアンテナが自動追従するように設計されている。これらの技術は、Loonの成層圏気球で既に活用されており、地上の通信接続ポイントや、隣接する機体間の安定した通信接続が実証されている。直近で行われたLoonの実証実験では、4,000kmの範囲にわたって浮遊する20機の成層圏気球の接続に成功している。

 時速約100kmで飛行するHAWK30に搭載することを想定し、Loonの技術チームは速い飛行速度で移動を続ける機体間でも安定して通信ができるように開発した。また、速い飛行速度であっても機体と地上の通信接続ポイントとの接続が切れないように、ペイロードのアンテナが自動追従するようにソフトウェアを改良している。その他、速い飛行速度によって発生する強い風圧からアンテナを保護するカバーも開発した。HAPSモバイルはLoonに対して、今回のペイロードの開発にあたり、HAWK30の飛行要件定義や通信技術要件などの提供を行っている。

 また、HAWK30は、3GPP準拠のさまざまな周波数帯に対応するように設計されたLTE通信システムを備えている。これにより、地上にあるスマートフォンなどの携帯端末に直接LTEの通信ネットワークを提供することができる。このペイロードとミリ波の通信システムを組み合わせることで、通信ネットワークが整っていない場所や地域にいるスマートフォンの利用者に対して、安定したインターネット接続環境を構築することができる。

 LoonのCEOであるAlastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、次のように述べている。

 「今回のペイロードの共同開発は、HAPSモバイルとの戦略的関係において、とても大きな一歩です。インターネット通信の拡大という観点では、成層圏はチャンスの宝庫です。Loonは、これまで培ってきた成層圏における経験や技術を、地上と機体間の接続に活用しようと努力を重ねています。HAPSモバイルは、同じ熱意を持つパートナーです。これからもこの新しい領域において協力し、世界中の多くの人々や場所、モノにインターネット通信を届けることを目指していきます」

 ソフトバンクの代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOで、HAPSモバイルの代表取締役社長 兼 CEOの宮川 潤一氏は、次のように述べている。

 「戦略的関係にあるLoonと共に、大きな成果を生み出せたことを大変うれしく思います。今回のペイロードの共同開発により、HAWK30の通信システム性能が飛躍的に向上し、HAPSモバイルのHAPS事業の実用化に向けての大きな一歩となりました。今後もHAPSの技術開発においてLoonと引き続き密に協力し、革新的なグローバルモバイルネットワークの構築を目指していきます」