ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルは、2020年9月21日(米国山岳部時間)に、米国ニューメキシコ州のSpaceport America(以下SpA)で、ソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「Sunglider(サングライダー)」の5回目のテストフライトを実施し、飛行高度6万2,500フィート(約19km)を記録したことを、2020年10月8日発表した。機体開発の開始から約3年という短い期間で、成層圏飛行を成功させたことになる。

成層圏を飛行する「Sunglider」

 20時間16分の飛行時間のうち、成層圏には5時間38分滞空。世界最大級の無人航空機で成層圏に到達したことに加え、飛行前に充電したバッテリーとソーラーエネルギーだけでフライトを完結することにも成功した。最大風速58ノット(秒速約30m)、最低気温マイナス73度という厳しい環境の中、機体はテストフライトを無事に完遂した。

テストフライト 概要

最大高度6万2,500フィート(約19km)
総フライト時間20時間16分
離陸:9月21日午前5時16分
着陸:9月22日午前1時32分
成層圏滞空時間5時間38分
成層圏入:9月21日午後1時57分
成層圏出:9月21日午後7時35分
テスト環境最大風速 58ノット(秒速約30m)
最低気温 マイナス73度

※記載の日時はいずれも米国山岳部時間

テストフライトの様子(HAPS Mobile)

 今回のテストフライトでは、成層圏での飛行のほか、成層圏対応無線機(米Loon社と2020年2月に共同開発)によるインターネット通信試験にも成功。成層圏対応無線機を通してインターネットに接続されたスマートフォンを持つ、SpAにいる米Loon社や米AeroVironment社のメンバーと、日本にいるHAPSモバイルのメンバーがビデオ通話を行った。通信試験については、プレスリリースを参照。

 成層圏飛行の成功により成層圏におけるビジネスの構築・事業展開や、情報格差のない世界の実現に向けて、大きな一歩を踏み出すことができたHAPSモバイルは、HAPS(High Altitude Platform Station)を通したモバイルインターネット革命に引き続き取り組んでいく、としている。

ソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO、HAPSモバイル代表取締役社長 兼 CEO 宮川潤一氏 コメント

 30年ほど前に、宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』を見て、空島に憧れを抱いたことを思い出しました。太陽光エネルギーだけで上空に浮かび続ける基地局を造るという夢の実現に、また一歩近づきました。成層圏での気温はマイナス73度にもなりましたが、繰り返し行ってきた機材の耐久試験が実を結び、無事にテストフライトを完遂しました。当日は、風速が秒速約30mにもなる気流が吹き続けていましたが、無事に全ての試験項目を終えて滑走路にSungliderが着陸した時には、ほっとしました。今回のテストフライトでは、地上のスマートフォンへの通信も問題なく成功しました。完全自動運転化するためのデータも、これでほぼそろいました。改良の余地はまだありますが、これからも夢の実現に向けてまい進していきます。