11月1日、シー・エフ・デー販売(以下、CFD販売)は、産業用水中ドローン「FIFISH W6」を活用した海中設備保守点検作業の実証実験を行い、アジア海域の大型洋上風力発電設備の海中点検機材として正式採用されたことを発表した。

 再生可能エネルギーの導入が拡大する中、海洋再生可能エネルギー発電は注目を集めており、洋上風力発電の導入が進められている。日本国内でも発電設備の設置に向けて、経済産業省、国土交通省が「海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域指定ガイドライン」を2019年6月に策定した。そのため、電気設備の技術基準においても技術員が日常巡回することを義務付けており、目視による外観点検等は「月に1回以上実施すること」と規定している。

 洋上風力発電設備を安全かつ効率よく運用するためには技術者による巡視・点検等が必要となり、陸から遠く離れた発電施設では海中点検の危険性やコストが課題となる。その保守点検に水中ドローンを活用することで、洋上という厳しい作業環境でも、安全性を保ちながら点検作業の効率化を図ることができる。

 今回の実証実験では、アジア海域に設置された洋上風力発電所にて、海中設備の保守点検作業を実施。発電設備の水中部点検項目に沿って点検を行った。

1. 支持構造物の点検調査撮影
2. 水中コラム、補強水平材、点検(陰極防食点検)
3. 通船接岸部点検
4. 生物付着状況確認
5. コンクリート構造、ひび割れ、剥離、剥落、鉄筋の腐食・露出破断など
6. 鋼構造:被覆防食(ナット/ボルトの歪みなど)
7. 抑制装置(ベンドリストリクター)点検
8. 防塵板、浮力材(筒状浮力体)、海底ケーブル等の確認

 水中に沈めた支持構造物の点検を行い、外洋の高波の中、濁り、うねりにおいても安定して上記すべての項目の点検作業ができることを確認した。

 濁りの中では、マルチナロービームソナーを使うことで、これまでの目視点検より調査範囲が広がった。抑制装置(ベンドリストリクター:海底ジョイントの端部が海底ジョイント沈設作業においてケーブルに過度な曲げを生じないようにする装置)の場所は特定が難しいが、マルチナロービームソナーで確認することができた。さらに、音響測位装置U-QPS(水中ポジショニングシステム)により、損傷部位の座標まで特定することを検証できた。QYSEA社独自のARによる測定技術を用いることで、錆や割れ目の現状把握が可能となる。

 これにより洋上風力発電設備の日常点検における産業用水中ドローンの有効性が分かり、点検機材として導入に至った。

「FIFISH W6」海洋風力発電施設における海中点検作業

 実証実験に使用した機体「FIFISH W6」は、本体寸法383×331×143mm、重さ約20kg、水深は350mまで潜航が可能。カメラ画質は4K UHD(30fps)、照明はLED2基10000ルーメンを搭載している。海洋では波のある状況下で使用することが前提となるため、モーターパワーを従来品から強化した。交換式バッテリーを採用し、駆動時間は最長6時間。外部給電システム(別売)を使用すれば連続稼働も可能。豊富なオプションにより、濁りや浮遊物で視界が悪くても調査対象を把握できる「マルチナロービームソナー」、機体の自己位置を把握できる音響測位装置「U-QPS」、強い濁りの映像補正が可能な「画像鮮明化」チップを搭載し、海洋の過酷な環境にも対応する。