6月28日、内閣官房をはじめとする各省庁が参加して「第16回小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を実施した。同協議会の議事をもとに作成された『空の産業革命に向けたロードマップ2021』の決定版と、質疑応答の内容を取りまとめた議事要旨を8月12日に公開した。

小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第16回)議事次第

 同協議会では、主にレベル4目視外飛行の実現に向けた制度整備について議論が交わされ、6月28日には空の産業革命に向けたロードマップ2021のほか、『レベル4飛行の実現に向けた新たな制度整備等』『ドローンの利活用促進に向けた技術開発について』『ドローンの利活用の促進・社会実装に向けた取組』『リモートID技術規格書(案)』『ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.2.0』『ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン』『無人航空機の飛行と土地所有権の関係について』の計8つの資料が公開された。制度整備に加え、レベル4目視外飛行の運用が前提となるドローン物流・配送についてもガイドラインを作成し、土地所有権の関係については国が初めて言及した。

▼議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai16/gijisidai.html

小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第16回)議事要旨

 改めて発表された議事要旨では、「操縦ライセンス」「機体認証」「運航ルール・運航管理」「社会実装」「リモートID」「ロードマップ」「技術開発」のテーマに分け、質疑応答が交わされたことを記しており、民間企業・団体から2022年に施行される航空改正法に向けた具体的な内容について質問されている。

以下、「第16回 小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」の議事要旨に記された質疑応答の一部を引用する。

操縦ライセンスについて

・二等資格の限定があるとき、それを講習する登録講習機関にも講習できる範囲の「限定」があるのか。それとも、二等の登録講習機関は、レベル4を除くすべての飛行について講習できなければならないのか。

⇒ 登録講習機関は一等資格までできるもの、二等までできるもの、更新のみのものといった区別があり、その内容については今後詳細に検討してまいりたい。

・既存の民間ライセンスの取扱いはどのようになるのか。

⇒ 今回新たに設ける国のライセンスはレベル4飛行に関するもので、レベル3以下の飛行であれば必ずしも国のライセンスは必要ではないが、ライセンスを取得しない場合は個別に許可・承認をすることとなる。一方、ライセンス(二等)の導入によってレベル3以下の飛行における許可・承認手続きの簡略化等を行う予定である。民間ライセンスについて今後国が変更を行うということは考えていない。

機体認証について

・自作機について、設計や製造過程の検査はどのようなことを行うのか。

⇒ 技術的な検討については、今後進めてまいりたいが、レベル3以下の飛行であれば、機体認証は必須ではないので、これまでの許可・承認の手続きについては引き続き行っていく予定である。

・操縦用送信機と受信機についても、機体認証に含まれるか。機体とコントローラーがセットの場合は分かるが、送信機を機体と別に購入する場合はどうか。送信機を交換した場合は認証の取り直しになるのか。

⇒ 機体とコントローラーは一体として認証を受けることとなるが、技術的な基準については今後検討してまいりたい。

運行ルール・運航管理について

・現在の FISS はメールの連絡となっており、オンタイムで有人機の接近を気付くことが出来ない仕組みとなっているので、無人機同士の UTM の早期導入が望まれる。

⇒ 有人機と無人航空機の共存共栄は、今後の次世代モビリティの発展に必要不可欠であると考えております。この観点から、ご指摘のありました有人機の位置情報等を含む動態情報は重要であると認識しており、これらの情報を活用するあり方を、関係者間で調整しながら検討させて頂きます。

・機体整備の詳細、飛行日誌の保管義務付け、操縦者の資格、訓練、飛行経験、健康状態などの管理なども共通ルールとすべき。また、運航管理体制についても求める事項の具体化・詳細化が必要。空域の調整やシステムの活用により適切にリスクを管理できる場合は飛行を認めるなど、レベル 3 飛行についても要件を合理化の上、適切に活用していくべき。運航ルールは常時順守すべきものであり、諸外国では運航管理者認証制度があることを踏まえれば、運航者の安全運航管理能力を認証する仕組みを検討すべき。

⇒ 運航管理体制等については操縦者のライセンスに含めていくことを考えており、今後検討することとしたい。

社会実装について

・「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン Ver.2.0」が紹介されている。5ページに例示されているドローンが道路、河川、国立・国定公園、国有林野、港湾等の上空を通過する場合における取扱いについて荷物配送のみではなく、航空測量に従事するドローンについても同様の取扱いを関係省庁と調整していただきたい。測量事業は公共性が高く、国や自治体からの要請によるものも多いので、是非配慮して頂きたい。荷物配送による場合は「上空を単に通過する場合」であるが、測量の場合はカメラまたはレーザー測量機器を搭載しており、写真などのデータの収集をすることになり、荷物の配送とは異なるものの、配慮をお願いしたい。

⇒ 基本的に今回の整理は、事業形態によって違いが生じるものではなく、上空通過をするという飛行形態の場合に手続き等が必要なのかということを示したもの。測量についていえば、色々な飛行形態が想定されるが、滞空して作業するような場合は今回の整理とは異なるところである。測量において具体的にどのような手続きが求められるかということについては、個別の飛行形態を踏まえつつ、今後関係省庁と検討していくべき課題と認識している。

・土地の所有権について、建物から上空 300 メートルというのは最低安全高度の議論であり、所有権とは関係ないということであったが、この点をはっきりとさせるためには、地下の所有権のように法律で整理をしていく必要があるものと考える。そうすると、実証実験を通じて課題の解消というのは難しいと考えるが、こうした課題の解消はどこが主体となって行っていくのか。

⇒ 土地所有権については、土地所有権の及ぶ範囲に一律の基準はないこと、上空通過権という形で第三者を排除するような権利設定はできないということが今回の整理の骨子である。また、今回整理したものが最終的なものと考えており、このほかに別途検討すべき事項があれば個別にご相談いただきたい。

▼議事要旨

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai16/gijiyousi.pdf

「空の産業革命に向けたロードマップ2021~レベル4の実現、さらにその先へ~」(令和3年6月28日小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会決定)

 また議事要旨と同じくして、『空の産業革命に向けたロードマップ2021』の決定版が発表されたが、6月28日発表資料からの大きな変更はない。

資料名:「空の産業革命に向けたロードマップ2021~レベル4の実現、さらにその先へ~」出所:小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第16回)