2021年3月31日、国際航業は、KDDIやウェザーニューズなどと、南海トラフ地震への対応を想定したシナリオで複数のドローンをUTM(運航管理システム)に接続した実証実験を行ったことを発表した。実証実験は、2021年3月6日、7日に三重県志摩市の国府白浜海岸で行われ、目的とするデータ収集やドローン完全自動航行の実現に向けた運航管理システムの機能検証に成功した。

管制システムに接続されたドローン

 東日本大震災の発生から10年、災害・防災分野における新たなテクノロジー活用の期待は高まっており、ドローンは「空飛ぶカメラ」として、迅速な情報収集と意思決定の支援が可能なため、全国の消防本部や自治体への配備が進んでいる。

 今後、災害発生直後の現場上空には、ヘリコプターをはじめ複数の有人機が飛行することが想定される。そのなかでドローンを安全かつ効率的に利活用するには、有人機とドローン、ドローンとドローンのコンフリクト回避を含めた技術面・制度面での飛行環境整備が必要となる。

 今回の実証実験では、国際航業が南海トラフ地震および津波による災害後の調査活動を想定したシナリオを策定。それに基づく飛行計画を、「KDDIスマートドローン」(KDDI携帯通信ネットワークに対応した、遠隔制御による安全な長距離飛行が可能なドローンサービス)の管制システムに接続したうえで、実機によるドローンの運航および計測作業を実施した。取得したデータは同社の3次元空間解析クラウドサービスで画像解析を行い、3次元モデルを構築した。

 さらに、救助機関等のヘリコプターが同一空域に飛来することを想定し、ウェザーニューズが提供する有人航空機 小型動態監視システム「FOSTER-CoPilot」のヘリコプター仮想位置情報と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のドローン運航管理(UTM)シミュレータによる仮想ドローンおよび仮想ヘリコプターの運航情報をKDDIの管制システムで共有し、衝突回避や安全運航の検証を行った。

管制に表示されたUTMの画面

 今後は、本実証実験によるドローン運航管理システムの技術的な課題や運用面の課題を洗い出し、その改善や検証を通じて、災害時におけるドローンの完全自動航行に向けた環境整備を進めていくとしている。

 なお、この実証実験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からKDDIおよびパーソルプロセス&テクノロジーが受託した「無人航空機の運航管理システムおよび衝突回避技術の開発/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」の一環で実施した。