2020年4月23日、KDDIは、東日本旅客鉄道(以下JR東日本)、プロドローンの協力のもと、2020年2月4日と2月5日に鉄道用保守基地内において、スマートドローン(※1)を活用した線路設備点検の効率化に向けた実証実験を実施したことを発表した。

実証実験概要

 鉄道会社における列車運行では、異常時には車両や線路設備などの点検によって、安全の確保を行う必要がある。そのためには、昼夜を問わず係員を現地に派遣し、目視などによる確認と、迅速かつ正確な係員間の情報伝達が必要になるが、この作業には多くの時間と労力を要している。ドローンを利用することで、移動時間の削減や、迅速かつ正確な当該現場の状況把握などを行えることが期待されている。

 同実証実験では、KDDIのスマートドローンプラットフォーム(※2)を活用し、線路設備上空の飛行ルートをドローンが自律飛行できることと、ドローンに搭載したカメラやLEDライトを使って線路設備を撮影し、昼夜を問わず遠隔地の係員へ映像を伝送できることを実証した。

 また、同実証実験を行うにあたり、ドローンの飛行性能や、ドローン運行に必要なカメラ、LEDライトなどの要件を、KDDIとJR東日本が共同で定義した。今後は、ドローンによる線路設備点検の要件をより明確にし、具体的な運用ユースケースに沿った検証を行うことで、実運用に向け取り組んでいく。

 なお、同実証実験は、JR東日本が主催する交通事業者と国内外企業や研究機関などとのオープンイノベーションによってモビリティ変革を実現することを目的とした「モビリティ変革コンソーシアム」(※3)の活動の一環として行われたものである。

実証実験について

 2020年2月4日と2月5日に、JR東日本の協力のもと、以下のとおり線路設備点検に関する実証実験を行った。

1. 線路設備上空におけるドローンの自律飛行の実施と飛行精度の検証

 長さ200mの線路設備上を、20mの高度を維持しながらドローンを自律飛行で往復させ、撮影対象となる線路設備を撮影フレーム内にとらえ続けることを確認した。

2. ドローンが空撮した映像の伝送

 ドローンに搭載したカメラで撮影した映像(夜間はLEDライトを使用)を、LTE通信網を用いて遠隔地の係員の元に伝送し、点検対象の線路設備の状況を昼夜問わず遠隔で把握できることを確認した。

実験に用いたドローン
ドローン空撮映像の例

 なお、上記1、2の実験と合わせて、騒音計・照度計を使って、ドローンフライト時の騒音・照度レベルを計測し、実運用に向けたデータの取得も実施した。

各社の役割

社名役割
KDDI実験の計画策定、フライト実施、フライト結果分析
JR東日本実験の計画策定、実験場の提供、フライト結果分析
プロドローンドローン機体開発、フライト補助

※1 :KDDIのモバイル通信ネットワークに対応し、目視外自律飛行、遠隔監視制御が可能なドローン。

※2 :モバイル通信による目視外自律飛行、遠隔監視制御を実現するためのプラットフォーム。モバイル通信に対応した機体と運航管理システムにより、遠隔での飛行ルート設定、飛行指示、飛行中映像監視などが可能となる。また、より安全な目視外自律飛行を実現するため、上空の高精細気象予測、3次元地図にも対応している。

※3 :「モビリティ変革コンソーシアム」の実証実験開始について(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/press/2018/20180904.pdf