2020年2月5日、アイ・ロボティクスは、大阪市高速電気軌道株式会社(以下 Osaka Metro)の駅舎土木構造物の点検に、同社の『マイクロ・ドローンによる狭隘部ドローン点検サービス』が採用されたことを発表した。

 この点検調査ソリューションに使用されるマイクロ・ドローンは、レースやホビー用をベースに、目的に合わせてカスタマイズ開発された小型で安全な産業用の機体である。ヘッドマウントディスプレイなどを介して操縦者が自ら搭乗飛行する感覚で撮影と点検を行うことができる。

 Osaka Metroでは、これまで、駅ホームの天井裏にあるコンクリート構造物を点検する際には、点検用足場の設置や天井仕上げ材を撤去する必要があったが、マイクロ・ドローンの導入によって、それらの必要が無くなり、点検期間の短縮、保守作業員の労力軽減など、点検作業の効率化に加え省力化も図る。

背景

 全国の地下鉄や鉄道の駅舎やトンネルは建設から数十年を経ており、経年による構造物の劣化が見受けられる。これまで、軌道部天井裏の狭隘部の点検については、終電後から始発までの短時間作業に限られ、コストも莫大に掛かるため、容易に実施することが出来なかった。しかし、老朽化に起因したコンクリートの劣化が発生しており、点検が急務となっている。

 こうした状況のなかOsaka Metroは、より安全な鉄道構造物の維持管理を目指し点検・検査のあり方を検討しており、遠隔制御機械を活用した点検の高度化・省力化に取組んでいる。その一つとして、短時間でも成果をあげられることを実証した『マイクロ・ドローンによる狭隘部ドローン点検サービス』を採択するに至った。

Osaka Metroにおける駅舎天井裏点検

 大阪市内の地下鉄駅にて、人が立ち入ることが困難な天井裏に対してアイ・ロボティクスの特殊マイクロ・ドローンによる撮影調査を行った(俯瞰・近接撮影調査)。ドローンは天井下地材や配管、ダクト等をよけて飛行し、その結果、目的とする土木構造物の状態確認が十分に行えることが実証された。Osaka Metroは今後、地下トンネルの高所部、マンホール内などの狭隘部や高架構造物等の点検においてもロボット技術を活用し、点検作業の効率化および省力化を図る、としている。

導入時期

・2020年2月中旬

導入による効果

(1)点検作業の効率化および省力化
 ・点検用足場の設置や天井仕上げ材の撤去不要による点検期間の短縮
 ・点検に要する保守作業員の労力軽減
 ・構造物の詳細確認箇所を高精細画像により確認が可能

(2)保守作業員の安全性の向上
 ・点検足場上などの高所部や狭い天井内の移動を伴う立ち入りが不要

マイクロ・ドローンの特徴

 ・本体:幅約10cm(手のひらサイズ)
 ・360度全天球カメラ、4Kカメラ搭載可能
 ・4方向LEDライト搭載可能
 ・重さ:約100g

(左)マイクロ・ドローン(右)駅の天井部

狭隘部におけるマイクロ・ドローンの有効性

 あらゆる土木・建築構造物は、定められた法令に基づき適切に管理・修繕され、安全性を維持する必要がある。しかしながら、煙突や管路、トンネル、天井裏といった狭隘部の検査は容易ではなく、また、多くのプラントやインフラは老朽化が進行しており、人によらない自動化・遠隔化ソリューションの実現は喫緊の課題とされてきた。

 アイ・ロボティクスが展開するマイクロ・ドローンによる狭隘部ドローン点検サービスは、煙突や管路、トンネルといった狭隘部に、直径8cm~19cm、重量70g~170g程度の特殊なドローンを送り込み、遠隔操作によりこれを操作することで、人命を危険にさらすことなく、効率的かつ効果的な点検・撮影を行うことができる。

 また、汎用の通信技術を利用し、遠隔操作により効率的な運用ができることから、発電用ボイラーや化学プラントの反応炉などの人が入ることができない特殊環境下でも運用が可能となっている。

サービスの特徴

 顧客の従来の工法や作業上の課題を把握した上で、同サービスを組み合わせて活用することで、シナジー効果が見込める。例えば、従来は人が危険を冒して直接点検している場所を事前にマイクロ・ドローンを用いて安全性を確認したり、内部状況を確認して精密点検すべき箇所の見当をつけられるため、安全性向上と、確実な工期短縮・コスト低減が可能となる。

従来の工法との比較

サービス導入のメリット

・経験豊富なスタッフが、既存の作業方法をヒアリングの上で十分に検討し、ドローンによるソリューション提供が可能な対象(作業/場所)を特定する。それにより、従来工法の人による技量とマイクロ・ドローンの機動力を相互に活かした作業を効率的に実施することが可能。

・遠隔操作のため、天井裏やダクト、発電ボイラー等の人が入れない特殊な環境でも安心して利用できる。また、安価で小さいため、例えば炉内点検などの場合、緊急時などには "片道運用" として、そのまま超高温で熱分解させるなどの対応も考えられる。

・顧客によるドローン・ロボットの資産化や、メンテナンスが不要なサービスとしての提供。

独自の保険カバー

 三井住友海上との連携により、アイ・ロボティクスの提供するサービスには対物10億円の補償が付加される。(保険詳細 https://www.irobotics.jp/post/__smi

ドローン運用事業者のメリット

・技能研修・フォローアップ研修も含むコンサルティングサービスも併せて提供するため、この技能研修プログラムを受講の上「実運用検定試験」に合格し、別途「業務用無線資格」を取得することで、運用事業化が可能となる。

サービスの展開可能場所

・地下鉄・鉄道・道路・洞道、地下街など
・駅舎内調査、トンネル内調査、天井裏調査、床下調査、架空ケーブルなど
・プラント、ビルや商業施設、倉庫など
・煙突内、管路内、窯炉、トラフ、排気ダクト、パイプライン、マンホール内、発電用ボイラー、反応炉、トンネル、地下構造体、船内、クレーンガーダー、ホッパーなど

Osaka Metroのコメント

 少子高齢化及び人口減少の状況から、将来の技術者不足は深刻な問題であり、現在行っている人の手による構造物の点検を、より効率化し、高度化することは喫緊の課題です。

 そのため、人力で行うには危険な高所や、立ち入ることが困難な狭い箇所にはマイクロ・ドローンを用いた機器による点検方法が適していると考えます。ドローン技術は先進技術であり、日進月歩で進化しています。そのため、実際に現場でドローンによる点検を繰り返してデータを蓄積し、必要なカスタマイズが出来る技術力が必要であり、その技術力を保有するアイ・ロボティクスさんと協力して構造物点検に適したドローンの開発を行う予定です。