2019年8月28日、自動野菜収穫ロボットを開発するinahoは伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、創発計画、ドフ、複数の個人投資家から資金調達を完了したことを発表した。

inahoが目指す世界

 同社は、自動野菜収穫ロボットを活用した活用したRaaS(Robot as a Service)モデルのサービス展開を進めている。収穫を代表する人の判断が必要な農作業を"AI"と"ロボティクス"でサポートし、ロボットが取得したデータを活用して、人手不足や農業経営の課題解決を目指す、としている。
また、ミッションとビジョンを次のように掲げている。

【Mission】
時間を作り選択肢と可能性を届ける

【Vision】
- 人がやらなくて良いことはテクノロジーで
- やりたいことができる時間を作る
- 農業の未来を変える

資金調達の目的

 今回の資金調達により、以下の点を中心に強化する、としている。
・自動野菜収穫ロボットの製造及び対応作物の拡大
・高度なエンジニア人材の採用
・市場開拓やアライアンス強化を目的としたマーケティング施策

今後の展望

 現在の対応作物はアスパラガスのみだが、キュウリやトマトなど、人の目で見て収穫適期かどうかを判断しなければならない選択収穫野菜に広く対応していく。
 また、農家の高齢化や人手不足は日本に限った課題ではなく、世界の国々でも同様の課題が起きており、同社はこの世界的な課題に挑戦すべく、今後グローバル展開を目指す、としている。
 AIやロボットによる自動化によって生まれた時間で、人はより創造力を発揮することができると考えている。これからも、農業分野に留まらず「時間を作り選択肢と可能性を届ける」ために挑戦し続ける、との展望を示した。

資金調達先からのコメント

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 代表取締役副社長/パートナー 阿部 剛士氏

 inaho社が事業を展開する日本の農業分野は「高齢化」「人手不足」という大きな課題に直面しています。同社のサービスは、農家の選択収穫プロセスにおける最も大きなペインである過酷な「人手による収穫作業」に対する即効性のあるソリューションとなり、人手不足と高齢化により農地を拡大できない、農業を続けられない農家の喫緊の課題を解決し、日本の農業の持続的成長に貢献できるものと期待しています。顧客農家の現場ニーズにきめ細かく対応しながらプロダクトを改良し、またデータ活用により新たな付加価値を創造し続ける同社は、農家と共に大きく成長すると確信し、今回出資させて頂くこととなりました。今後、ITVの持つリソース、ネットワークをフルに活かして支援して参ります。

創発計画 代表取締役 高野 元 氏

 私のルーツは米農家ということもあって、高齢化が進んで衰退する一方の日本の農業に関心があり、機械化と大規模化が必要だと考えてきました。
inahoは、収穫ロボットという技術で人手の問題を解決しようとしています。またRaaSモデルはやる気のある農家の規模拡大を支援できると思いました。最新のAI技術を使った製品開発だけでなく、アグリコミュニケーターによる顧客開発を両輪で進めている点も魅力的です。
代表の菱木さんは以前からの知り合いで、こころの中から沸き起こる感情を大切にして、それに向き合うことのできる人だと感じてきました。そんな彼の周りに集まる才能ある仲間たちを応援したいと出資を決めました。

ドフ 代表取締役 齋藤太郎 氏

 とあるベンチャーキャピタリストの友人が投資をする際の秘訣について「第一印象だけではなく、その人や事業が持つ本質を見極めることが重要だ」ということを言っていました。そのとき真っ先に脳裏に浮かんだのが菱木さんでした。ピッチコンテストに審査員として参加した際に、とにかく爽やかで、やんちゃな雰囲気の菱木さんの、目をキラキラさせて展開するプレゼンを聞いた時に「あぁ、この人がやっている会社を応援してみたいな」って思いっきり第一印象だけで好きになっちゃいました(笑)第一印象だけで終わらないよう、菱木さん率いる事業と仲間たちの挑戦が、きちんと結果を出して世の中を変える存在になることを心から祈念しています!

inaho代表者メッセージ

inaho 代表取締役 CEO 菱木 豊氏

 間もなくサービスインを迎え、これから本格的な量産体制に入ってまいります。優秀な人材を採用し、開発と検証を繰り返しながら数台から数十台、数百台、数千台へと量産していくためのファーストステップとして、今回の資金調達を行いました。
 現在、さまざまな野菜や果樹の生産者様から「ロボットの開発を早く進めて欲しい」と叱咤激励を受けております。今後のロボットの開発目標として、まずは対応作物の拡大を目指すとともに、我々のサービスを待ってくださっている多くの生産者様に、より早く、より優秀なロボットを提供するため事業を加速させます。日本の、そして世界の食糧事情を変革するサービスに成長させるべく、多くの方のご支援を頂戴できれば幸いです。

inaho 代表取締役 COO 大山 宗哉氏

 多くの農家さんが、日々の収穫作業や雑草取りに「考える時間」を奪われています。どうやったらもっと美味しい野菜を作れるか、どうやったらもっと収穫量を増やせるかを考える時間が欲しい、と皆さま悩まれています。inahoのプロジェクトは、「人がやらなくて良い仕事はロボットがやる」を実現することで、人に選択肢と時間を生み出そうという野心的なプロジェクトです。今回の資金調達を通じて、いよいよ事業はサービスを提供するフェーズに入ります。農家の皆さまの期待をしっかりと受け止めて事業を推進してまいります。