長崎県佐世保市に本社を置くFlight PILOTは、2023年9月7日~8日に出島メッセ長崎で開催された「第2回ドローンサミット」に出展し、「ダクトファン型ドローン」のプロトタイプを発表した。また11月10日には、本社隣に広がる5ヘクタールの農地を活用し、ロボティクスフィールドをオープンする予定だという。

「ダクトファン型ドローン」発表

 Flight PILOTは研究開発を中心に、ドローンに関するさまざまなサービスを手がけている。代表取締役の川上貴之氏は、高さ40メートルといった大型建設機械の技術開発に携わってきたキャリアを持つ。建設機械のハードとソフトの両方に精通する技術力と、当時から大型機械の点検のためヘリコプターを活用していた経験から、2000年代半ば頃からドローンにも関心を持ち、「気づいたら普通に作っていた」(川上氏)という。

 そんな川上氏が、“今回の一押し”と紹介したのが、このダクトファン型ドローンだ。展示品は、本展示の1~2週間前にようやく完成したというプロトタイプ。「プロペラがついていない」「超高速で飛行でき耐風性能が高い」といった特長を持ち、手のひらサイズという小型ながら、多くの来場客の興味を引いていた。

 1階イベント展示ホールでの企業PRタイムに登壇した川上氏は、ダクトファン型ドローンをマニュアル操縦で飛行させる映像を投影しながら、このように説明した。

「ファン型のドローンなので、とても制御がしやすい。機体にタイヤをつけると、前進して飛ぶこともできる。すごいのは、非常に優れた出力制限。サイズ2メートルの機体を作ると、およそ3トンのものが運搬できる。今後の空のモビリティとして、一般の道路を走れる規格まで持っていきたい。このプロトタイプ機は、気圧センサーなどは一切使用しておらず、モーター出力だけで飛行している。PID制御にもAIを使って最適解を求めて制御しているため、このような精度で飛行できる」(川上氏)

1階イベント展示ホールでのプレゼンテーションの様子
プレゼンテーションで紹介されたダクトファン型ドローン飛行シーン

 登壇後の取材で川上氏は、「本来は時速300キロメートル程度で飛べる想定だが、スピードが出過ぎないように出力を制限し、PID制御も滑らかにしている状態で、本体角度も25度以上傾かないように止めている。ただ90度に傾けても飛行は可能」と述べた。

 一方、「AIを活用したPID制御については、今いろんな人に操縦してもらって、データを取得し研究している段階。いずれは、どんな人でも操縦しやすくなる最適解を見つけて、将来的には一般の道路を走る車に使って、誰もが使えるような形にしていきたい」とも述べた。

 プロペラがない機体を開発したのは、「プロペラの危険性を排除したい」という想いから。また、プロペラよりも静音性が高いという利点にも着目し、車だけではなく幅広い用途活用を見据えるという。直近の目標は、耐風性能の向上と、点検用途機体の開発。「プロペラがないので、いままで寄れなかったところにも、ピタッと寄れるようになる」と川上氏は言う。

ロボティクスフィールド、佐世保市内にオープン予定

「11月10日に長崎県佐世保市内に、約6ヘクタールのロボティクスフィールドをオープン予定」というチラシも配布していた。これまで8年近く福島ロボットテストフィールドを活用してきたという飯原夏子氏は、「九州にも同じような施設があれば、西日本の皆さんも利用しやすいのでは」と話す。

「立地的には、海や山が近く、農地や太陽光パネルもあるので、実地の練習をしやすい。国家資格試験に対応したコースも設置予定。CADや3Dプリンタなどの講習や、利用も予定している。農業、林業、水産業、点検など、いろんな目的を持った方々に日本全国から訪れていただけたらと思う」(飯原氏)

飯原氏(左)、川上氏(右)
ブースには特許証も展示されていた

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