エバーブルーテクノロジーズ「自動操船」製品リリース

 帆船型水上ドローンの開発を手がけてきたエバーブルーテクノロジーズは、ついに製品版を展示した。初お披露目された新製品は、大きくは3点。帆船型の水上ドローン「AST-231」と、電動のラジコンボートを水上ドローン化したE-towingコラボモデル「AST-181」、自動航行と遠隔操船を実現する自動操船化ユニット「eb-NAVIGATOR 2.0」だ。

 「AST-231」のサイズは全長2.3m、全幅1.25m、全高4.2m、1〜2名の有人または無人でも航行可能で、最大積載重量は120kg、価格は600万円〜(税別・メンテナンスサポート費などは別途相談)だ。最大の特徴は、帆で受けた風をダイレクトに動力源にして推進するというエコな船である点と、自動操船化ユニット「eb-NAVIGATOR 2.0」によって自動航行や遠隔操船ができるという点だ。最大航行時間は約10時間(巡航速度4km/hの場合、航続距離約40km)。

「AST-231」

 「AST-181」は、トーイング(けん引)用の大型ラジコンボート「E-towing」を提供するON’S COMPANYと業務提携して機体を開発し、「AST-231」と同様に自動操船化ユニット「eb-NAVIGATOR 2.0」を搭載した電動船で、価格は360万円(税抜・別途見積り)になるという。電動水流ジェットを2機備えており、機動的でパワーがあるため、要救助者が乗った小型ボートを岸まで牽引するなど、水難救助に適したモデルだという。プレスリリースによると最高速度は35km/h、最大牽引力は68kg。

「AST-181」

 自動操船化ユニット「eb-NAVIGATOR 2.0」は、昨年は開発中のプロトタイプが展示されていたが、ついに製品版が展示されていた。製品版では防水ボックスに、ドローン用フライトコントローラー、RTK GNSS対応のGPS機器が格納され、衝突防止を目的としたAIカメラを前方に搭載、推進器、セールウィンチの制御信号を出力するという。風速、風向を計測する各種センサーや、水深を計測するソナーはオプションとなる。商用携帯回線(3G/4G/LTE対応)機器も搭載されており、遠隔操船用オリジナルスマホアプリ「eb-CONNECT」(iPhone対応)経由で、遠隔からでも操船できるという仕組みだ。QRコードで行き先の位置情報を読み取ることも可能。なお「eb-NAVIGATOR 2.0」単体では販売しないため、「AST-231」や「AST-181」のように船体に統合して水上ドローンとして提供する。

「eb-NAVIGATOR 2.0」
アプリ「eb-CONNECT」

今後の展開にも注目

 今後、帆船型水上ドローン「AST-231」は、国交省の「令和4年度スマートアイランド推進実証調査業務」の山形県酒田市飛島での離島物流において活用される予定で、波の高い外洋を約40km、無人で自動航行するという。これまで同社のプロトタイプ機は、傾きが少なく安定性の高い「三胴船」だったが、外洋の海象を考慮して、途中で転覆したとしても起き上がりやすい「単胴船」に形状を変更した。離島物流のほかにも、ダムにおける水深の測量、夜間の漁場の監視など、さまざまなニーズがあるという。

 水上ドローンの航行に関する規制として、2019年に国交省海事局が示した「遠隔操縦小型船舶に関する安全ガイドライン」があるが、同社の船体は全長3m未満で2馬力の小型船であり、同ガイドラインの規制の対象にはならないことを確認済みとのことだ。

Japan Drone 2022では講演も行った

 また、開発中の自動帆船化オプションも展示されていた。これは、ラダーと帆、船外機の制御装置がセットになったソリューションで、全長3m未満の船に装備して自動操船化ユニット「eb-NAVIGATOR 2.0」を搭載することで、使われなくなった和船や釣り船などの再利用に役立つという。自動航行や遠隔操船の技術によって、水上モビリティの乗り捨て利用も可能になるため、新たな観光資源としても活用が期待される。

自動帆船化オプション