TeamViewerジャパン(以下、チームビューワー)は、同社の情報共有リモート接続ソリューション「TeamViewer」をドローンに統合し、空撮映像などのデータをリアルタイムに共有する「遠隔配信セット」や、現場作業を遠隔サポートする「TeamViewer Frontline/Assist AR」などの展示を行った。

手軽で簡単にドローン動画映像をリアルタイムで遠隔共有できる

 ドローンで撮影した映像はストレージに保存され、それをダウンロードして編集・解析するのが一般的だが、最近では遠隔地からドローン映像をリアルタイムで確認し、現場で操縦するオペレーターへ指示を出したいというニーズも増えてきている。ドローンの映像をリアルタイムで配信するには、ドローン専用の遠隔監視サービスの利用、映像伝送製品の応用、ビデオ会議ツールの応用などいくつかの方法がある。

 TeamViewerはビデオ会議機能、リモートデスクトップ、デスクトップ共有、Webセミナー、デバイス間のファイル転送など多くの機能を搭載するソリューションである。PC、モバイル端末、工場の機械やロボットなどのデバイスと人、そして場所や時間を問わず世界のユーザーとの接続を可能とし、セキュリティの高いリモートアクセス、サポート、コントロール、コラボレーション機能を、あらゆるオンライン上のエンドポイントで利用できる。個人向けには無償で提供されており、現在の登録者数は60万人。法人にはさまざまなライセンス体系を用意しており、中小企業から大企業まで多様な業種で利用されている。

 昨年の12月に、チームビューワーはIT関連製品の製造・流通・販売、およびIT関連サービスの提供を手掛けるSB C&Sと共同で、ドローンを活用した空撮映像を遠隔からリアルタイムに情報共有するための実証実験に成功したと発表し、ドローンビジネスにも参入した。
 実証実験では、実際にドローンで撮影した広角カメラによる空撮映像や赤外線カメラを使った温度測定の映像に加え、遠隔地からの指示音声を、スマートフォンに搭載したTeamViewerを通じてリアルタイムで相互の情報共有を試みた。高度約150mからの空撮において4G/LTEモバイル回線を通じたインターネット接続でもストレスなく作動し、複数の遠隔地点でのリアルタイム映像共有が可能であることが実証された。

遠隔配信セットは、TeamViewer とDJIの「MAVIC 2 ENTERPRISE ADVANCED」または、「MATRICE 300 RTK」がセットになったものだが、展示ブースには「MAVIC 2 ENTERPRISE ADVANCED」と「MAVIC MINI」が展示されていた。ちなみにMATRICE 300 RTKは、最大飛行時間55分、IP45の高耐久機で、高い飛行安定性を誇る。用途に応じて、高解像度/低解像度/熱画像/Lidarカメラを搭載可能(カメラはセットに含まれない)。
TeamViewerはAndroid用のAPKファイルを公式に公開しているので、スマート送信機にも対応可能。
一般的なビデオ会議ツールを使用する感覚で操作できる。
ドローンからの映像はクリアでスムーズに共有できる。

 展示ブースではSB C&Sが提供予定の「遠隔配信セット」が紹介され、実際にドローンの映像をTeamViewerで共有する様子を見ることできた。操作はビデオ会議ツールを使用する感覚と変わりなく、映像もスムーズに共有できていた。また、音声・チャットも共有できるので、オペレーターへの指示や他の共有者との音声・チャットでのやり取りも可能だ。共有人数はライセンスによって違ってくる。担当者によると「DJIのスマート送信機などはAndroid端末であり、多くのビデオ会議ツールは対応していない。TeamViewerはAndroid用のAPKファイルを公式に公開しているので、これを使えばスマート送信機のような端末にも対応できるのが利点。複雑な設定も不要なので導入も簡単」とのこと。

遠隔配信セットの1つで折り畳み可能な小型機、DJIのMAVIC 2 ENTERPRISE ADVANCED。640×512ピクセルのHD解像度サーマルカメラと、1/2インチCMOSセンサーを搭載した48MPビジュアルカメラを搭載。ビジュアルカメラは32倍デジタルズームと16倍サーマルズームに対応。
日立LGデータストレージ製の透過型ウェアラブルデバイス(2022年後半に発売予定)との連携も予定中。直射日光の下でも鮮明でクリアな画像を表示する。ドローンを目視確認しながら、その視界にシースルーでドローンからのカメラ映像やTeamViewerからの情報を表示することが可能となれば、操縦の利便性が向上するだろう。

 「遠隔配信セット」はドローンとTeamViewerをセットにしたもので、SB C&Sが販売する。ドローンは、DJIの「MAVIC 2 ENTERPRISE ADVANCED」と「MATRICE 300 RTK」の2種類が用意されているので、用途にあわせて選択できる。価格は未定だが、導入しやすい価格設定になるとのこと。
 リアルタイムでドローン映像を複数で共有できれば、災害時など複数拠点でリアルタイムに現場の状況の把握・指示が可能となり、スピーディーな情報共有が図れる。また、点検作業においてはドローンの業務依頼者が現場に行かずとも、リアルタイムで現場のオペレーターと同じ映像を見ながら指示などコミュニケーションを取ることができ、効率化につながる。また、オペレーターは映像共有者から指示を受けることができるので、撮影漏れを防ぐことができる。映像をリアルタイムで共有することは、ドローンの利便性を向上させるとともに効率化にもつながりそうだ。また、5G環境では、ドローンの大容量データを撮影後すぐに確認・共有することも可能になり、ドローンの活用方法が広がることが期待される。

スマートグラス+TeamViewer Frontline、Assist ARで業務効率化の提案を行っていた。視界を共有しながら精緻な遠隔支援を行ったり、熟練者から遠隔で複数人への支援を行ったりできる。

 その他、スマートグラスとTeamViewer Frontline、Assist ARを組み合わせて現場作業者を遠隔サポートするソリューションの提案も行われていた。