ドローンがホバリング中などに安定した高度や位置を保っていられるのは、スマートフォンやカーナビなどにも使われている位置情報を特定する測位衛星システム(GNSS)を使用しているからだ。その精度は、悪環境下における誤差で2m程とされ、信号を受信しやすい場所であれば誤差数cm程度となる。
ドローンにおけるGPS/GNSSとは
ドローンは、1つのアンテナで信号を受信する単独測位と言われる方法で、位置情報や行動を測位している。我々が国内で目にするドローンはアメリカの測位衛星システムGPSから信号を受信することが多い。
GPS以外にも諸国で衛星システムは開発されており、これらの衛星は地球上のあらゆる位置情報を特定するための衛星システムGNSSに含まれている。GPSは米国の測位衛星システムの名称であり、日本では「みちびき」の呼称で知られる準天頂衛星システム(QZSS)がある。GNSSは各国の測位衛星システムの総称だ。
GPSだけではなく、ロシアのGLONASSや中国のBeiDouなどの測位衛星システムの信号を受信できる機体も多数開発されている。
これらのドローンは環境などによりGPS信号の受信が難しい状況であっても、他の衛星システムから信号を受信して測位できるため、正確な位置や高度を把握可能だ。
ドローンが安定したホバリングを維持できる理由
GPSをオンにした状態のドローンでホバリングすると、安定した高度と位置を保つことができる。一方、GPS受信をオフ(ATTIモード)にすると手動で繊細に操縦しないと安定した飛行ができなくなる。それは、衛星の信号を受信できずドローンが正確な測位ができなくなっているためだ。
位置情報や高度は、ドローンが受信したそれぞれの衛星の位置と、衛星が発信した時間とドローンが受信した時間の差から求めた距離をもとに割り出せる。3つの衛星の信号情報から緯度、経度、高度は取得できるが、受信機の時計は衛星の時計と比べて精度が低く誤差が生じるため、4つの衛星のデータを利用して誤差を修正することで高精度な位置情報が把握できる。
これは言い換えるとドローンが4機以上の衛星から信号を受信できなければ測位精度が落ちるため、自動での安定した飛行が難しくなるということだ。
なお、ドローンが信号を受信できる衛星の数は多いほど測位精度が上がるため、入り組んだ地形のような信号を受信しにくい環境などでも正確に位置情報を把握できる。
GNSSが受信できない場所でのニーズも多数
屋内ではGNSSが受信できず、山に囲まれた山間部も受信しにくい場所がある。このような場所でこそドローンを活用したいという需要が多い。例えば、橋桁の下の劣化を確認する橋梁点検、山間部の過疎地域への物流配送、工場設備やプラントなどの屋内設備点検が挙げられる。このような非GPS環境下では、V-SLAMやLiDARによる自己位置推定を行うドローンが活用されている。