Visual SLAMとは、カメラやイメージセンサーを用いて自己位置(自分がいる場所)の推定と周囲の環境地図作成(周辺の空間把握)を同時に行う技術で、操縦者の指示に頼らないドローンの自律的な飛行を可能にする。作成した周囲の3D地図を基に非GPS環境下での安定した自律飛行にも役立てられる。「SLAM」とはSimultaneous Localization and Mapping(同時に位置特定と地図作成…の意)の略。

 SLAM技術はLiDAR(ライダー、レーザーによる距離計測機器)を用いたものと、カメラやイメージセンサーを用いたものがあり、カメラを用いたVisual SLAMは、高価なLiDARに比べて安価なことに加え、技術の進歩から精度が向上し、急速に普及してきている。また、Visual SLAMは、映像解析や機械学習などの先進的な技術と組み合わせることで、より正確な自己位置推定と環境地図の作成が可能になる。近年は、ドローン以外にもロボットの自律運転や、建物内での自律型巡回など、あらゆる分野で活用されている。

仕組み

 Visual SLAMを搭載したドローンは、複数のカメラやイメージセンサーなどにより周囲を三次元的に認識して環境地図をリアルタイムに作成することができる。その高精度な環境地図データや機体に搭載されたIMU(慣性計測装置、加速度や傾きなどを検知)のデータをもとに自分がどの程度動いたかを推定することで位置を算出し、自律的に飛行する。

高精度で自己位置を推定できる一方でVisual SLAMは、非常に複雑であり、計算量が非常に多いため、高度なコンピューター処理能力が必要である。また、センサーの精度によっては自己位置推定の精度が低下することもある。

活用

 GPS等を受信できない屋内や橋梁下などでは、ドローンの飛行が不安定になる。このような環境でもカメラやイメージセンサーによって作成された環境地図を基に安定的な飛行を実現する。また、機体の向きも環境地図から推定できるため、磁気センサー(コンパス)がエラーを起こしやすい環境(鉄塔や金属の橋梁近くなど)でも安定した飛行が可能だ。ただし、映像から環境地図を作成するため、暗所ではその特性を活かすことができない。