AIの進化が急速に進む一方、ドローンを取り巻く環境も変化を続けている。機体性能の向上だけでなく、飛行制度の見直しや、各業務における実証実験なども進みつつある。

 そこで今回は、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の理事長を務める鈴木真二氏に、日本の公共分野におけるドローン活用の現状と課題を聞いた。米国の消防・防災分野で進む導入に加え、警察で広がる「DFR(Drone as First Responder)」、目視外飛行(BVLOS)の新たな制度として策定が進む「Part 108」など、日本との違いを紐解き、今後の公共ドローンのあり方を考える。

写真:模型の前に立つ鈴木氏
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)理事長の鈴木真二氏。航空機力学、無人航空機、航空イノベーションなどを専門とする工学博士(東京大学)。

日本国内の消防・防災分野でのドローン活用が着実に前進

 日本でドローン(無人航空機)の飛行ルールが本格的に整備され始めたのは2015年である。同年の航空法改正では、空港等の周辺、地表・水面から150m以上の空域、人口集中地区(DID)上空などでドローンを飛行させる場合に、国土交通大臣の許可を必要とする制度が設けられた。2022年6月には機体登録が義務化され、リモートID機能についても原則として搭載・発信が必要となった。

 こうした制度整備が進む中、公共分野ではどの程度ドローンが利用されているのか。消防・防災分野について、鈴木氏は「全国には720の消防本部がありますが、このうち6~7割では何らかの形でドローンが配備され、機体数にすると約1000機になります」と話す。消防庁資料でも、2025年4月1日時点の消防本部数は720本部とされている。

写真:話をする鈴木氏

 一方、警察組織におけるドローン導入は、鈴木氏によれば全国で数百機規模とみられる。消防と比べれば規模は小さいものの、警備や捜索、交通事故の現場検証などで利用が広がっているという。

 自治体によるドローン活用は災害対応の面で特に進んでいるが、自治体自らが専門部署を設けて運用するだけでなく、民間企業や業界団体と連携して災害時の運用体制を構築する動きもある。JUIDAもまさにその1つであり、2024年12月に法人会員などで構成するドローン民間防災組織「JUIDA-D³(ジュイダ・ディーキューブ)」を設置。全国20以上の自治体や自衛隊などと防災協定を締結し、順次拡大している。

 2026年1月に山梨県上野原市・大月市で発生した林野火災では、協定を締結している陸上自衛隊東部方面隊などからの要請を受け、JUIDA-D³の参画企業が現地入りした。ドローンによる延焼地域の撮影や被災地図の作成、熱源の確認などを行っている。

▼JUIDA災害対応部隊の富士山ドローンベース、山梨県扇山林野火災の消火活動を支援
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/news/1188294.html

 このほかJUIDAは、2024年1月の能登半島地震、同年9月の能登豪雨、2025年の埼玉県八潮市道路陥没事案、また直近では2026年の熊本地震などでも、自治体や自衛隊などからの要請を受けてドローンによる情報収集などに協力している。

米国警察で進む「DFR」、緊急通報にドローンが自動で先行

 このように、日本でドローンの出番が着実に増えている一方、鈴木氏は「広く一般に利用されている段階とまでは言い切れません」とみる。その比較対象として挙げたのが米国の警察だ。

 事件や事故が発生した際、最初に現場へ駆け付けて対応にあたる人員は「First Responder(ファーストレスポンダー)」と呼ばれる。その役割の一部をドローンが担うのが「DFR(Drone as First Responder)」であり、米国では日常的に使用されているという。

 米国では、911への緊急通報を受けた警察が、ドローンポートのドローンを離陸させる。ドローンは自動飛行によって現場へ先行し、搭載したカメラから得られる映像を警察の指令拠点などへ送る運用が行われている。ドローンを先に到着させることで、地上部隊が現場へ到着する前に状況を把握し、必要な人員や対応方針を判断するための情報を得る仕組みだ。運用はドローンポートを活用した自動飛行のため、複数のポートにそれぞれ運航者1名が割り当てられているわけではない。自動飛行とBVLOS(Beyond Visual Line of Sight:目視外飛行)、さらには夜間飛行を組み合わせた運用であり、1名が複数のドローンを遠隔で監視する体制がとられている。日本では、まさに一対多運航の技術開発やガイドラインの整備が進められているが、運用の面で米国は進んでいるのが分かる。

(出典:MilwaukeePolice)
ミルウォーキー市警察では、ドローンポートを活用した水難救助の様子を公開している。

 鈴木氏は、米国警察による活用としてカリフォルニア州のチュラビスタ市警察(Chula Vista Police Department)の事例を挙げた。同市警は2018年10月からDFR運用を開始し、2019年にはFAAから目視外飛行(BVLOS)の承認を受け、段階的に運用範囲を拡大している。現在は市内の複数拠点からドローンを発進させている。映像は警察のリアルタイムオペレーションセンターへ送られ、訓練を受けたテレオペレーターが遠隔でドローンを操作しながら現場部隊へ情報を共有する。地上部隊よりも先にドローンが現地到着する割合が約74%に達するとされる。

 これは同市警のひとつの事例であるが、米国ではこのような例が先進事例という段階にない。2016年ごろから段階的に導入がはじまり、今では6000件の警察ドローンプログラムが全米各地で運用中だ。そして、警察への緊急通報のうち、20~25%がDFRを導入済みの警察への連絡となっている。これによって、地上部隊の出動中止や対応優先度の引き下げ判断が行われたという。

 なお、DFRの運用形態は警察機関や使用するシステムによって異なり、近年ではドローンポートからの自動離着陸や自動飛行を組み合わせたシステムも登場している。鈴木氏は、こうした仕組みにより、緊急通報への対応そのものが変わりつつある点に注目している。

JUIDAと自衛隊、災害時の協力体制を全国へ拡大

 では、日本国内に視点を戻そう。JUIDAが設立されたのは2014年7月である。ドローン運航者向けの民間ライセンスの発行・交付を担い、認定スクールを全国展開していることで知られるが、活動範囲は人材育成だけでなく、産業振興や制度整備、防災分野での連携にも及ぶ。

 鈴木氏が公共分野におけるドローン活用の大きな節目として挙げるのが、2019年2月にJUIDAと陸上自衛隊東部方面隊が締結した「災害時応援に関する協定」だ。東部方面隊は首都圏・関東・甲信越地方と静岡県を含む1都10県を担任しており、JUIDAとの協定は、陸上自衛隊と無人航空機業界団体による災害時協定として初めてのものだった。

 同年9月、山梨県道志村のキャンプ場で女児が行方不明となった事案では、東部方面隊からJUIDAに捜索応援要請があり、JUIDA認定スクールなどがドローンによる捜索活動に参加した。2021年7月に発生した熱海市伊豆山土石流災害でも、東部方面隊からの要請を受けてJUIDAが現地での情報収集に協力している。

 その後もJUIDAは自衛隊との協定を拡大してきた。能登半島地震で災害対応にあたった陸上自衛隊第10師団とは2024年1月に協定を締結し、2025年6月には中部方面隊との災害時応援協定を締結。2026年5月には西部方面隊とも協定を結んでいる。直近では、この西部方面隊との締結によって、令和8年熊本地震が発生した際に要請を受け、イオンモール熊本や日本製紙八代工場での事故の捜索にも協力した。

JUIDAと自治体・自衛隊などとの防災協定の締結状況。

(出典:一般社団法人日本UAS産業振興協議会)


平時の訓練を阻む制度の在り方とプライバシーの保護のハードル

 自衛隊が複数の都道府県にまたがって活動する大規模組織である一方、消防は市町村などを単位とする組織も多い。限られた人員の中で、操縦者の育成や機体管理、法制度への対応まで含めたドローン運用体制を構築することは容易ではないという話を耳にする。

 鈴木氏は、「(小規模な組織にとってドローン運用が)制度的に複雑というのは、確かに課題です。航空法はもちろんですが、最近ですと小型無人機等飛行禁止法の改正でドローン禁止エリアが少し広がりました。日々変化する法規へ対応し続ける必要がありますし、公共機関はドローン落下による事故をゼロにしたいという意識も強いようです」と分析する。

 飛行ルールや申請手続きの変更に対応するには、人員や予算も必要となる。さらに、住宅地などでドローンを活用する場合は、プライバシーや住民への説明も考慮しなければならない。

 航空法上、人口集中地区(DID)上空は特定飛行に該当し、飛行条件に応じて許可などが必要となる。一方、国や地方公共団体、またはその依頼を受けた者が事故・災害時に捜索・救助のため緊急性の高い飛行を行う場合には、一部の飛行規制が適用されない特例がある。ただし、特例が適用されても、有人航空機や地上の人・物件に対する安全確保の責任がなくなるわけではない。問題は、実災害で安全に運用するには平時から訓練を重ねておく必要があることだ。東京都心部のようにDIDが広範囲に設定された地域では、実際の市街地環境を想定した訓練を行うにも飛行場所や手続き面の制約が生じる。

 鈴木氏は、「例えば、東京都内の閉鎖済み高速道路の上空でドローンの実証実験を実施した例もありますが、そこでは『カメラに周辺が意図せずに映り込んでしまう』というプライバシーの問題も出てきます。一軒一軒に許可を取るのも大変ですし、災害を想定した訓練もそう簡単ではありません」と話す。

 これは、鈴木氏にとっても大きな課題となっていると言い、名誉教授を務める東京大学構内で防災訓練にドローンを使用したいと相談を受けた際の例を挙げた。グラウンドのような開けた場所を確保できたとしても、DID上空でドローンを飛行させるには、飛行条件に応じた許可・承認などの手続きを考慮する必要があり、容易にはドローンを使った訓練が行えない。ドローンが災害対応に有用なツールであっても、平時から訓練できない環境が警察や消防の活用促進に影響を与えている一面もあるだろう。

地理院地図に示された人口集中地区(DID)、空港等の周辺空域
国土地理院「地理院地図」では、人口集中地区(DID)の範囲を確認できる。

日米の違い、日本の警察に「DFR」は必要か?

 日本の警察機関では、ドローンはどのように使われているのか。鈴木氏によると、人が立ち入りにくい場所の確認や、高所からの撮影、捜索などで利用が進み、その有用性が認識されつつあるという。ただし、米国のDFRのように、緊急通報を受けてドローンを先行させる日常的な運用には至っていない。

 鈴木氏は、「何か事件が起きた後の事後対応として、調査や捜索をしなければならないという場面では、日本でもドローンが使われ始めています。日本とアメリカでは治安に対する意識も違いますから、日本ではDFRに対する需要が少ない可能性も有ります。しかし、迅速な対応という意味では、日本でも検討しても良いのではないでしょうか」と話す。

写真:話氏をする鈴木氏

 米国でDFRが実現してきた背景には、警察機関など公共安全組織とFAA(Federal Aviation Administration:米連邦航空局)が、実証や個別承認を積み重ねてきたことがある。チュラビスタ市警のDFRもFAAの「Integration Pilot Program(IPP)」の一環として始まり、目視外飛行の範囲を段階的に拡大してきた。

 現在のFAA制度では、公共安全機関がドローンを運用する際、Part 107や緊急COA(Certificates of Waiver and Authorization)などに基づく手続きが用意されている。また、火災や捜索救助、法執行など緊急性の高い飛行については「SGI(Special Governmental Interest)」による迅速な承認手続きも設けられている。SGIは緊急時の承認を迅速化する仕組みであり、通常時のDFR運用そのものを包括的に認める制度とは分けて考える必要がある。

「ドローンが現場へ飛んで行って、撮影データをオンラインで送る。昔では考えられない、SF的な世界が実現していると聞いて、私もかなり驚きました」と鈴木氏は言う。続けて、「なぜ実現できたのか?その仕組みを私なりに調べてみたのですが、当初はFAAから(大枠での)ドローン飛行許可を事前に取得し、緊急の飛行時はFAAに具体的な飛行内容を連絡。そして飛行するという体制でした。ただし、その工程を踏むと対応が遅れてしまいます。そこで、消防・捜索救助・法執行など緊急時の飛行について承認を迅速化するSGI(Special Governmental Interest)という枠組みを作ったのです」と説明した。

縦割り懸念の一方、新設立の防災庁に大きな期待

 日本と米国では、国の成り立ちや法体系、航空環境・文化が異なるため、米国のDFRをそのまま日本へ持ち込めるわけではない。

 日本では航空法を国土交通省、警察行政を警察庁、消防行政を総務省消防庁がそれぞれ担っており、複数の行政分野をまたぐ運用では組織間の調整も必要になる。鈴木氏は、「(航空法を所管する)国土交通省は航空安全を監督しているので、警察業務は管轄外です。また、消防業務は総務省です。今後、フェーズフリーのドローン活用を進めるうえでは、各省庁の縦割り構造があるかもしれませんが、例えばガイドラインを両者で作るために、自衛隊だったり民間から呼びかけるというのは、1つの手段としてあるかと思います」と言う。

 災害時には、国や地方公共団体などによる捜索・救助目的のドローン飛行について航空法上の特例が設けられている一方、災害地域では消防・警察・自衛隊などの有人航空機が低高度を飛行する可能性がある。このため国土交通省は、有人航空機の安全確保が必要な地域を「緊急用務空域」に指定し、一般のドローン飛行を原則禁止する仕組みを設けている。緊急時であっても、有人機と無人機の運航調整は欠かせない。

 こうした複数機関の連携を考える上で、鈴木氏が注目するのが防災庁だ。防災庁設置法は2026年7月17日に公布され、政府は設置に向けた準備を進めており、2026年11月に発足予定だ。内閣官房は、防災庁について平時から復旧・復興まで一貫した司令塔機能を担う組織と位置付けている。この中でドローンも視野に入る可能性は多いにあるという。

 一方、鈴木氏によれば、内閣府では、ドローンだけでなくヘリコプターや航空機、人工衛星などから得た被災地の画像を一元的に扱う取り組みも「鳥の目プロジェクト」として進んでいるという。

「能登地震の際には、国交省の防災科学技術研究所で開発した画像共有用のクラウドが初めて運用され、そこへ我々も撮影データを提供しました。消防も警察も自治体も見ることができ、1度撮影したデータを多目的に使う初めてのケースとなりました。鳥の目プロジェクトにより、これを全国規模へ発展させるべく、国が動き出しています」と鈴木氏は説明する。

 災害時に複数の機関が個別に情報収集を行えば、同じ場所を重複して撮影することにもなりかねない。画像や位置情報を体系的に共有できれば、発災直後の状況把握だけでなく、その後の検証や復旧・復興にも利用しやすくなる。

国産化と「デュアルユース」「フェーズフリー」

 ドローンの利用が拡大していく中で、「国産化」や「フェーズフリー」といったキーワードが重要視されるようになってきた。海外依存の観点では、米国は特に顕著で中国製ドローンを禁止する動きが強い。鈴木氏によれば、JUIDAが海外の機関と連携する際には、特定国製のドローンが使用を避けられるケースもあったという。そのような状況下では、日本製ドローンを諸外国へ売り込む機会とも受け取れるが、日本製ドローンを海外展開する場合も輸出管理などへの対応が必要となり、一筋縄ではいかないのが実情だ。

 経済産業省は2026年3月に公表した「無人航空機に係る安定供給確保を図るための取組方針」で、2030年時点において約8万台の無人航空機を国内で量産できる供給体制の構築を目標として示している。これは、供給能力を整えるだけでなく、それに見合う需要をどのように生み出すかも課題になる。そこで、近年各メーカーが掲げるキーワードの1つが「デュアルユース」だ。民生と軍事の双方に利用可能な技術や製品を指し、ウクライナでのドローン利用などを背景に議論が活発化している。

 鈴木氏は、「ウクライナの例などを見ても、戦場におけるドローン活用は中国・DJI社の民生用ドローンを飛ばすところから始まりました。それが少しずつ変わっていき、専用のドローンが開発されています。今後は、そうして開発された専用ドローンが民間技術にも使えるかもしれません。これまでなら航空機がまさにそうでした。軍用機が最初に開発され、その技術が民間でも使われ始めました。これからは、そのような例が広がっていく可能性があります」と分析する。

 一方、昨今耳にする「フェーズフリー」はデュアルユースとは似て非なる概念だ。点検や物流、監視など平時の業務で日常的に運用しているドローンを、災害時には情報収集や物資輸送などの緊急対応に活用する考え方だ。

 災害が発生してから機体や操縦者を準備するのではなく、普段から現地で運用しているドローンや運航体制を緊急時にも活用する。特に物流では、地形や気象、発着地点などについて平時から運用経験を蓄積していることが、災害時の即応性につながる。例えば、スペインでは送電線点検用ドローンを緊急目的で使う取り組みがあるという。

▼ドローン社会実装の鍵は“フェーズフリー”─地方創生セッションに見る未来戦略
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/event/1187397.html

 なお、経済産業省が取りまとめる“ドローン航路政策”にも、同様の考え方がある。送電線や河川の点検の他、物流など複数用途で共用できる飛行経路を平時から整備し、災害発生時にも利用する構想だ。

「自衛隊が保有しているドローンを平時に民間用途で飛ばすのは難しいとされます。自衛隊であれば、防衛と災害対策の両方で使用する発想はあるのではないのでしょうか。これは、デュアルユースとフェーズフリーが混在した概念ですね」と話す。

Part 108が示す「操縦者中心」から「組織運航」への転換

 ドローンの産業利用をさらに広げる上で重要になるのが、目視外飛行の常態化と、多数の機体を組織的に管理する運航体制である。その制度設計として米国では「Part 108」が考案され、議論されている。

 FAAは2025年8月、目視外飛行を個別のWaiver(適用除外)に頼らず日常的に実施できるようにするため、Part 108の規則案を公表した。2026年8月時点ではまだ提案段階だが、物流、農業、測量、公共安全など幅広い用途で目視外飛行による運航を標準化することを想定している。

▼米Skydio社の副社長が語る、米国のドローン事情とPart 108草案への示唆
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/special/1187852.html

 Part 108案の大きな特徴は、個々のパイロットを中心とした制度から、運航事業者を主体とする安全管理へ軸足を移そうとしている点にある。FAAの案では、リスクに応じて事業者へPermit(許可)またはOperating Certificate(運航証明)を付与し、組織内にOperations SupervisorやFlight Coordinatorといった役割を置く。これらの担当者には、従来のRemote Pilot Certificateと同じ形のFAA発行資格を求めない方向が示されている。

 一方、日本における目視外飛行では、レベル3.5飛行の事例が増え始めているが、有人地帯(第三者上空)で補助者を配置せずに行う目視外飛行は「レベル4飛行」に該当する。これを行うには、一等無人航空機操縦士の資格を持つ者が、第一種型式認証を取得したドローンを使用することが条件となっている。国土交通省が2026年6月19日時点で公表している型式認証取得機の一覧では、第一種型式認証を取得した機体はACSLの「PF2-CAT3型」1型式のみであり、一般企業がレベル4飛行は行うのは不可能に等しい。

 鈴木氏は、「Part 108はまだ提案段階ですが、そこには驚くべき要件が記載されています。目視外飛行では、操縦者がドローンを操縦し続けるのは現実的ではないとされ、人による操縦を前提にせず、GCS(Ground Control System)により管理する方針となっています」と言う。

 実際、Part 108案では、対象となる機体について自動化された飛行制御を前提とし、手動による飛行制御を必要としないシステム設計が示されている。これは「1機に1人の操縦者を割り当てる」運用から、多数機をシステムと組織で管理する運航へ移行する考え方といえる。

 ただし、Part 108は単純な規制緩和ではない。FAA案では、他の無人航空機や有人航空機との安全な分離を図るため、Automated Data Service Provider(ADSP)やDetect and Avoid(DAA)技術などを活用する仕組みも盛り込まれている。運航の自動化を進める一方で、レーダーによる監視を条件とするなど、リスクに応じた安全管理をシステム側へ求める制度設計となっている。

 鈴木氏は、日本では米国に準じて型式認証及び機体認証の制度を設けたが、米国ではPart 108によって変わっていくとみられるという。飛行エリアの人口密度や、飛行機体の重量といったリスクに応じて、機体性能水準を柔軟に変化させるというアプローチが、要件に記載されているためだ。

公共分野でのドローン発展が、産業界全体にも好影響を与えられるか

 消防、警察、自治体、自衛隊などでドローン利用が広がれば、公共用途で求められる安全性や信頼性への対応が、民間向け技術にも波及する可能性がある。鈴木氏は、「公共目的利用には、高い安全性、信頼性が求められます。そこへ対応していくことは、民間技術の底上げにもつながっていくのではないでしょうか」と話す。その先には、国内で培った機体や運航技術の海外展開も視野に入る。

 さらに今後、AIはドローン運航のあり方にも影響を与えそうだ。AIの判断だけでドローンを完全自律運航させる段階にはまだ課題があるとしても、汎用型AI、エージェントAI、フィジカルAI、バーティカルAIと一連の提案から動作までを行える技術は揃い始めている。多数機の監視や異常検知、飛行計画の立案などでは活用余地があると鈴木氏はみている。

「AIの自己判断によるドローン運航などは責任分担を定める上でまだまだ難しいでしょう。最終判断は人間が行うことを前提とし、そのための情報提供や提案をAIが行う時代は近いと考えています。例えば、一対多運航の例では、当初は1人が管理するドローンは5機までと決められていました。しかし、この上限は取りやめられましたが、現実的に1人が10機を本当に管理できるかは疑問です。そのような場合に、AIが危ないものをピックアップするなど、支援することは十分にあり得ます」と今後のドローンの在り方にも触れた。

 公共分野で求められる即応性、安全性、組織運航をどのように実現するのか。消防・防災での利用拡大に加え、米国で進むDFRやPart 108の議論は、日本でドローンを社会インフラとして運用していく上でも重要な示唆を含んでいる。