6月5日、千葉県・幕張メッセで開催された「Japan Drone 2026」において、1月に山梨県で発生した大規模な林野火災でのドローン活用をテーマとした特別講演「JUIDA-D³活動報告:林野火災へのドローン活用」が行われた。講演には、実際に現場で活動した日本UAS産業振興協議会(JUIDA) 参与の嶋本学氏、富士山ドローンベース代表の渡邉秋男氏、山梨県上野原市消防本部 消防総務課の後藤健児氏が登壇し、それぞれの立場から活動内容や現場で得られた教訓を紹介した。

写真:会場の様子
特別講演「JUIDA-D³活動報告:林野火災へのドローン活用」には多くの人が集まった。

 JUIDAには、ドローンによる災害対応を担う民間防災組織「JUIDA-D³(ディースリー:Drone Disaster Dispatch)」が設置されている。同組織は、JUIDA災害対応委員会と全国55の関係団体で構成され、2024年に発生した能登半島地震でドローンによる災害支援の重要性が改めて認識されたことを契機に創設された。災害発生時にはJUIDAが本部機能を担い、被災地域や保有機材などを考慮して最適な団体を選定し、実働チームを編成する。また、JUIDAは北海道を除く陸上自衛隊の各方面隊と災害出動に関する協定を締結している。

 今回の山梨県の林野火災は、1月8日に上野原市扇山付近で発生し、大月市にも延焼した。焼失面積は約448ヘクタールに及び、東京ドーム約100個分に相当する広さとなった。山梨県内では戦後最大規模の林野火災となったという。

 発災翌日の1月9日、JUIDAは協定に基づき陸上自衛隊東部方面隊から出動要請を受けた。JUIDAは、能登半島地震での活動実績があり機材も充実しているブルーイノベーション(東京都)とProdrone(愛知県)、さらに地元で日頃からドローン運用を行っている富士山ドローンベース(山梨県)の3企業に出動を要請した。

写真:壇上の3人
報告を行った(左から)JUIDA参与の嶋本氏、富士山ドローンベース代表の渡邉氏、山梨県上野原市消防本部の後藤氏。

 最初に現地入りしたブルーイノベーションは、ドローンで火災現場を上空から撮影し、延焼状況を手書きの地図に記録して上野原市消防本部へ提供した。その後、富士山ドローンベースの渡邉氏が到着し、同様の調査を実施するとともに、火災状況をデジタル地図へ反映。このデータは消防や行政、自衛隊など複数の関係機関による情報共有に活用された。さらに、Prodroneはスピーカーを搭載したドローンを投入し、上空から地上の消防隊へ火勢や延焼状況を伝える運用を行った。

 ブルーイノベーションとProdroneは遠方からの派遣であったため1月14日に活動を終了したが、その後も富士山ドローンベースが継続して現場を担当している。同社は赤外線カメラ搭載ドローンを用いて、地中の残り火の探索を実施。山林火災では表面の火が消えても地中に熱源が残ることが多く、赤外線によって熱源を特定し、その情報を基に消火活動が続けられたという。

スライド:地上隊への情報提供および完全確保のための飛行
同じ空域を飛ぶヘリコプターとドローン。航空運用調整上マイルストーンだという。
スライド:目視では確認できない残火監視のための情報収集(鎮圧後)(サーマル、可視光で撮影した画像)
ドローン搭載の赤外線カメラと可視光カメラの映像比較。赤外線カメラでは残り火がはっきりとわかる。

 講演では、今回の活動を通じて得られた課題や成果が発表された。例えば、ドローンから地上の消防隊へ火災位置を伝える際、「ドローンから見た左右」で伝えるのか、「東西南北」で伝えるのかが統一されておらず、情報伝達に混乱が生じる場面があった。嶋本氏は「共通する言葉が必要だ」と指摘し、災害対応における標準化の重要性を挙げた。また、消火活動を行うヘリコプターと情報収集を行うドローンが同じ空域を飛行する課題についても触れられた。今回は飛行高度を分け、低高度をドローンが飛行し、高高度でヘリコプターを運用する形で調整が行われた。こうした航空機の運用調整は通常、自衛隊が中心となって実施するが、今回は初めてドローンが航空運用調整の対象として正式に組み込まれたという。

 講演では今回の活動から得られた教訓として、「熱源の位置情報をリアルタイムで地図化できる機能は消防活動に大きく貢献すること」「地上隊への情報伝達にはドローン搭載スピーカーが有効であること」「航空運用調整を適切に実施すれば、消火ヘリが活動する緊急用務空域でもドローン運用は可能であること」などが挙げられた。

 発災から2月12日の鎮火まで継続して現場で活動した渡邉氏は、山林火災特有の課題についても触れた。「火災は時間とともに延焼範囲が変化するため、その都度ドローンの発着地点を移動しなければならない。しかし、移動先が必ずしも電波環境の良い場所とは限らず、安定して運用できる発着地点を探すことに苦労した」と、現場ならではの難しさを振り返った。

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