2025年5月29日、東京都千代田区で行われたKDDIスマートドローンが初めて主催したビジネスイベント「KSD CONNECT 2025」では、キーノートを含めて分野別に6つのセッションが行われ、ドローン活用の現状や問題点を、関係者が様々な角度から紹介した。

写真:会場の様子

災害対応や人材不足に大きな期待…地方創生セッション

写真:地方創生セッションの様子
石川県や秩父市の関係者も参加した「KSD CONNECT 2025」の地方創生のパネルセッション

 6つのうち地方創生分野に関するセッションは「地域課題を解決するドローン活用、地方創生の最前線」と題され、4人から地域での現状などが報告された。

 まず、KDDIスマートドローンの森嶋俊弘氏が同社の地方での活動を紹介。石川県ではコンビニエンスストア・ローソンを拠点として米国製ドローン「Skydio」を使った行方不明者の捜索など警察活動支援の実証、長野県伊那市や埼玉県秩父市での物流配送の実証実験などの様子をスライドを交えながら話した。

 石川県庁・地域デジタル推進課長の四柳明人氏は、まず、2024年1月の能登半島地震での被害状況を報告し、通信が途絶する中、衛星通信「スターリンク」が有効だったことを紹介した。さらに同年8月に発生した能登半島豪雨ではドローンを使って道路の被災状況や浸水状況などを把握した事例も紹介した。また、10月には同県産のリンゴの出荷に物流ドローンを使ったことも話した。

 さらに自治体の立場として「県庁の技術・土木系の職員は人手不足。これをドローンでカバーできることに期待をしている」と話した。また、昨年の災害時、自治体の行政無線が一部機能しなかったことがあり「ドローンが災害現場に飛び、スピーカーで避難誘導できれば、有効なツールとなる」とも話した。

 KDDI官公庁営業部の安房剛士氏は、能登半島地震で衛星通信「スターリンク」を避難所などに350台を提供したことを紹介。ただ、地震の際、配置まで9日かかったことを踏まえ災害と通常時を問わない「フェーズフリー」の体制をスターリンク、ドローンとも構築すべきだと話した。

 埼玉県秩父市先端技術推進課の笠井知洋氏が、秩父市のドローン利用の歩みについて紹介。同市では2016年に災害時のドローン利用協定を民間と結び、2020年からドローンの社会実装についてKDDIを含む複数の会社などと協力して進めてきた。この3月には秩父市は浜松市と共に「ドローン航路」を設定。この2月からローソンを起点としてドローン配送の実証実験を開始したことを紹介した。

 報告に続いてパネルセッションも行われ、災害時でのドローンの有効性は能登半島地震などで確認されたとしながら、即応性を高めるためにはやはり「フェーズフリー」の体制を日頃から構築する必要があり、そのためには「ドローンがビジネスとして成立する必要がある」という方向に議論が集約された。

写真:話をする笠井氏

人流などの効果を「見える化」、地域振興にも生かす…ドローンショーセッション

写真:セッションの様子

 ドローンショーのセッションは「空が情報空間に。ドローンショーが拓く新たなビジネスの可能性」をテーマに、KDDIスマートドローンの博野雅文社長、ドローンショー・ジャパンの代表取締役、山本雄貴氏、電通のドローンプロジェクト代表、上野敦史氏の3人が登壇した。3社はこの日、ドローンショーに関する協業について合意書を締結したばかり。

 セッションの冒頭、まずドローンショー・ジャパンが全国各地で行ってきたドローンショーの映像が披露された。続いて、博野社長より今年3月、3社が協力して東京の豊洲公園で行った「大阪・関西万博PRドローンショー」について説明があった。このイベントでは、auの携帯電話の位置情報から人流を可視化、会場に約2000人が集まったことが示され、その後、近くのショッピングセンターに流れていったことなどより具体的な行動がわかったと紹介した。

 博野社長は「これにより集まった人がどのくらいか、あるいは携帯電話の所持者の特性と合わせて、見た人の定量的な分析ができる」と話し、これによって「どういったプロモーションが刺さるかということもわかる」とした。また、ドローンショーではQRコードも表示できるようになったことから、それを撮った人に特別なクーポンを配信することができるとした。

写真:スピーチをするKDDIスマートドローン博野雅文社長
「KSD CONNECT 2025」のドローンショーセッションでスピーチするKDDIスマートドローンの博野雅文社長

 その後、行われたパネルセッションには山本氏と上野氏も参加。山本氏はドローンショー・ジャパンが現在、すべて自社製作のドローンを約4000機保有していることを紹介。近く台湾で「ウルトラマン」関係のドローンショーを行う予定であるとしたうえで「日本は(アニメなど)コンテンツに強みがある。そうしたコンテンツとドローンショーをかけ算すること世界に打って出られるのではないか」と話した。また花火とドローンをシンクロさせる技術でより両者の相乗効果を高め、インバウンドなどを含めた地域振興に生かせるとした。

 一方、上野氏は「のろしとかアドバルーンなど空をコミュニケーションの場として使ってきたことはあったが、これほどまで精緻に情報を知らせるものはこれまでなかった。空をコミュニケーションの場として有効活用することに、ドローンショーは最も有効な手段だ」と話し、花火などでは地元企業が協賛する例が多いが、直接社名やロゴなどを表示することで協賛の価値を高めるマーケティング効果があると話した。

写真:セッションの様子
ドローンショーセッションで可能性や今後などについて話す(左から)KDDIスマートドローンの博野社長、ドローンショー・ジャパンの山本氏、電通の上野氏。