海外において点検事業や農薬散布事業を拡大
同社はグローバル展開に注力しており、2024年1月時点で関連会社を6社保有し、14カ国で事業を展開している。点検事業では、オランダを拠点に石油タンクの厚みを測定するドローンを活用した独自のサービスを提供している。従来の方法では、2~3週間にわたり生産を停止し、足場を組んで作業員がタンクに登り、手作業で点検を行うという非効率で危険な手法が用いられていた。同社はこれを改善するため、独自に開発したハードウェアとソフトウェアを活用し、安全性と効率性を向上させた。このサービスはオランダの大手石油会社やタンク管理会社に採用され、日本国内でも展開を進め、点検事業の売上の約10%を占めるまでに成長している。
徳重氏は、競合が少なく市場規模が大きい分野に注力していると述べ、その一例としてインドネシアでのパームプランテーション農薬散布事業を紹介した。この事業では、自社開発のドローンで農薬を散布し、従来の人力作業に比べて大幅に効率化を実現している。パーム油はインドネシアとマレーシアで世界生産の84%を占め、需要が増加する中、トップ企業がドローン活用を進めている。市場規模は約5000億円に達し、継続的な需要が同社の主要なビジネスの柱となることが見込まれている。
UTM分野への継続的な投資で、グローバルなシェアを獲得
UTM(ドローン運航管理システム)の分野で、同社はベルギーのUniflyを買収し、欧州各国での採用を進めている。さらに、米国ではUTM市場でトップシェアを持つAloft Technologiesに出資し、この分野での存在感を強化している。UTMのビジネスモデルは、航空機の運航と同じくドローンが飛行するたびに課金される仕組みだ。
サウジアラムコのベンチャーキャピタルWa'edが同社に資本参加している。徳重氏は「アラムコはガスや石油、化学プラントといった膨大な設備をドローンで点検するプロジェクトを進めるため、戦略的なパートナーを探していました。その過程で、世界中から50社のドローン関連スタートアップが選ばれ、日本では当社が選定されました。このプロジェクトが本格的に始まれば、大きな飛躍のきっかけになると考えています」と語る。
テラドローンの成長戦略は、測量、点検、農薬散布、UTMの4つを柱とし、それぞれを強化することを基本方針としている。日本国内では測量事業のさらなる拡大を図り、オランダで開始した石油タンクの点検サービスも日本を含む他地域での採用が進んでいる。さらに、送電線やパイプラインの点検といった新たな分野にも挑戦しており、これらの事業は1~2年の実証実験と顧客との共同開発を経て市場投入を目指している。インドネシアではコロナ禍をきっかけに農薬散布事業の需要が高まり、急成長を遂げており、毎年安定した収益が期待されている。
また、物流分野やフードデリバリーでは、世界的にドローンを活用した取り組みが広がりを見せており、米国のテキサスではファストフードのドローン配送がすでに日常化している。同社はこの分野に注目し、こうしたドローン配送の普及が進むことでUTMの需要が高まり、大きな収益源になると見込んでいる。
テラドローンは、今回の上場を通じ、ドローン業界の黎明期においてグローバル規模でリーダーシップを発揮し、日本発のグローバルメガベンチャーとしての地位確立を目指すとしている。