ドローンは目視内の限られた範囲で飛行する測量や点検、農薬散布などに役立てられ、利活用が年々拡大している。近年は、安全な運用を前提にドローンの利便性を向上するべく、国と民間企業が足並みを揃え、広域の目視外飛行運用の実現に取り組んでいる。

 広域運用で注目が集まる物流配送や災害現場の状況把握では、遠隔制御によって補助者等の運用人員の削減や災害対応者の安全確保が実現でき、現場に人を派遣せずに役割を果たせるメリットは大きい。

 従来の目視内飛行はドローンと送信機間の制御で行っていたが、広域の目視外飛行となると遠隔から制御・モニタリングするシステムが必要となる。そこで、リモート接続ソリューションを開発するTeamViewerジャパンは、ドローンと互換性を持つ既存のソフトウェア「TeamViewer」の販売をドローンユーザー向けに開始した。

両セットにはDJI Matrice 300 RTKとTeamViewerライセンスに加え、充電用バッテリーステーションや送信機用モバイル通信ドングルが付属する。

 ドローン用TeamViewerは、産業用ドローンの販売・レンタルを行うスカイシーカーから販売を開始。今回、DJI Matrice 300 RTKとTeamViewerを組み合わせた「多拠点配信 基本セット」のほか、予備バッテリー4本とZenmuse H20Tを含む「多拠点配信 災害対応・点検用途向けセット」も発表している。基本セットの価格は141万2752円(税込)、災害対応・点検用途向けセットは289万6487円(税込)で提供を開始した。

リモートツールを応用したドローン遠隔運用の必需品

 TeamViewerはリモートデスクトップツールとして提供しており、外部のPCを手元のPCから遠隔操作したり、近年身近な存在となったWeb会議システム(チャット、音声通話、映像共有)としても活用できるツールだ。初めて使う人でも専門知識を必要とせずに利用でき、セキュリティーに注力していることなどが魅力として挙げられ、全国25億以上のデバイスにインストールされているという。

 前述したとおり、ドローン運用における遠隔制御システムは注目を集めているが、新規開発したものや専用品などが多い上に、高価なものがほとんどだ。そこで既存のTeamViewerを応用することで、低価格かつ迅速にドローンの効率的な遠隔運用が可能となる。

 TeamViewerは、ドローンの送信機にソフトをインストールすることで、ドローンのカメラから受信した送信機の映像をリアルタイムに複数カ所へ共有することができる。また、映像だけでなく、音声通話も可能となっているため、ドローンの運用現場に一人いれば、その映像をもとに遠隔地から指示を出し、的確に撮影することが可能となる。これは、撮影不備の防止や災害時の迅速な対応などにつながるという。
 TeamViewerはWindowsとMacのほか、Android、iOS、LinuxのOSに対応しており、ドローンの送信機にインストールすることで利用できる。設定も10分程度で済ませることができ、ライセンス購入からすぐさま利用できることも魅力だ。

 また、TeamViewerで実現できる機能は遠隔地との情報共有だけではない。元々は外部のPCをリモート操作するツールであったことから、ドローンのリモート制御機能も備えている。現在においては遠隔からドローンの飛行を制御することは、法律で禁じられているが、技術的にはすでにTeamViewerに搭載済みの機能となっている。

 現状では飛行制御ができない一方で、カメラや積載装置の外部制御であるI/O制御は可能となる。スマートフォンやタブレットにインストールしたTeamViewerのAndroidアプリから制御でき、専用アプリの開発は不要だ。例えば搭載したカメラを動かす、荷下ろし用フックの開閉、マルチスペクトルカメラのレリーズボタンの制御といったことが、TeamViewerを利用すれば簡単にできてしまう。

 今後、遠隔制御システムはレベル4飛行やドローン物流の実装に欠かせず、既存製品を活用することで開発費を削減できるだけでなく、スムーズに運用を始められる。これから本格的に始動するドローンの遠隔利用によって、新たなドローンの活用法なども創出されそうだ。