有人航空機とドローンが共存するための課題

 今回は動態管理システムの利用が飛行の条件とされたが、日常では搭載していない機体や、詳細な飛行計画を提示していない航空機も飛行している。現状ではこれらすべてを一元管理することは難しい。さらにはドローンや空飛ぶクルマが社会実装されたときには、さまざまな高度で多様な航空機が高密度に飛行することになる。こういった場合に、航空機の競合分析や危険判断を自動的に判断するシステムが必要とされている。

 また、有人航空機と共存するためには、運用者が互いの情報や知見を共有する必要がある。高森氏は「近年、災害発生時には有人航空機だけでなく、ドローンの飛行が目撃される。例えば、7月に発生した伊豆山土砂災害では、災害発生後にドローンによる撮影を行い、迅速な被害状況の把握に貢献し、非常に機動力が高く有用なツールであることが分かった。こういったエリアではドローンを飛行させる前に有人航空機の有無だけでなく、障害物情報や周囲の環境情報を得る必要がある。そこで用いられる一つの情報が、航空情報であるNOTAM(ノータム)だ。これは有人航空機のパイロットも利用しており、特に災害時は航空局から飛行自粛区域等の情報が発信される。ドローン業界では馴染みのないものだが、安全確保のためには欠かせない情報だ。このように、飛行している航空機の情報や障害物、気象情報などを取得し、安全レベルを引き上げていく必要がある」という。

 複数機におよぶドローンの運航管理は、NEDOのプロジェクトとして、5年間をかけて「運航管理統合機能」を開発してきた。これは、飛行計画をもとにシステム的に飛行の可否を判断し、さまざまな業務を担うドローンの運航を管理するものだ。飛行可否の判断のほか、APIを通じて気象情報や地形情報などが提供される。このシステムを利用すれば、複数機の飛行計画を一度に管理することが可能になる。さらには、APIで連携することによって、有人航空機との連携機能も搭載されているという。

 同プロジェクトは2017年から5年の期間としており、2021年でいよいよ開発を終えることとなる。高森氏はこれについて「プロジェクトは2021年で終えることになるが、今後運用していくことが重要となる。これが運用できれば、イベント上空などで有人航空機とドローンを統合管理することが可能になり、さらに一歩前進することができる。有人航空機は管制などの意思疎通を図るシステムが整っているが、ドローンは趣味で飛行させる個人や、私有地で使用する運用者など、さまざまな使い方があるため、管理できないドローンも存在する。こういったものは今後、リモートIDの義務付けなどで把握する仕組みが整備されていくが、課題は残されている」と述べ、運用の重要性と今後の課題に触れた。

 また、東京五輪における有人航空機の運航管理を行い「今回の運用を皮切りに、災害発生時の航空運用調整などに役立てていきたい。2025年には大阪万博が開催されるので、有人機間と有人機と無人機間との連携を目指す。また、低空域の気象観測やドローンポートの観測インフラの展開など、ウェザーニューズならではの取り組みも進めていきたい。引き続き、今後も課題の洗い出しや技術向上を進め、安全なドローン運用を目指していく」と話した。