プログラミング教育が可能なドローンソリューション「DRONE STAR プログラミング」を販売しているORSOは、教育関係者、ドローンスクールなどに向けて、実際にこのソリューションを使ってプログラミング教育を行う、講師の養成講座「DRONE STAR Academy」をスタートさせた。

DRONE STAR Academy開講の狙いについて話す坂本義親ORSO代表取締役社長CEO。

 2020年度から施行される新学習指導要領の中でプログラミング教育が必修となり、2021年度からは中学校、2022年度からは高校でも必修化される。その一方でプログラミング教育の担い手は不足しており、新たにスタートしたDRONE STAR Academyは、こうしたプログラミング教育にたずさわる教育関係者と共創しながら人材を養成していくことを目指している。

 ゲームアプリなどの開発を礎業とするORSOは、アプリ開発のノウハウを生かしていち早くドローンを使った教育に取り組んできた。2017年4月にドローン操縦者向け教育アプリ「DRONE STAR」と、これに対応するドローン「DRONE STAR 01」をリリース。このアプリは、カメラを搭載した重さわずか18gという超小型のドローンを、専用コントローラーを通じて操縦する中で、ドローン操縦の基礎を楽しみながら覚えて体験できるのがコンセプトとなっている。さらに2017年12月にはこのDRONE STARを使ったプログラミングアプリ「DRONE STARプログラミング」を発表。2018年にはDJIが技術提供するRyze Tech社の小型トイドローン「Tello EDU」に対応した。

ORSOでは2017年4月のDRONE STARアプリの発売以来、教育分野でのドローンの利活用に取り組んでいる。

 このアプリはプログラムすることそのものより、ドローンにさせたい目標を設定して、その目標を実現するためにプログラムを行うことを目的としたものだ。「タイムライン」にドローンにさせたい動作を定義した「機能ブロック」を並べていくUIを採用することにより、プログラミングの初心者でも取り組めるのが特徴のひとつ。“動物の動きをまねる”といった目標があらかじめ設定してあり、この抽象的な目標に向かってドローンの動きをプログラムし、実際に動作させてその動きをカメラで撮影して再生し、プログラムを修正するというPDCAサイクルを回して学んでいくつくりとなっている。

DRONE STARプログラミングは、ミッションを設けて、それを実現するためのプログラミングを行い、動画で撮影して振り返るというPDCAを回すしくみを実現している。
DRONE STARプログラミングを使って講習を行うのに必要な機材を揃えた「DRONE STARパーフェクトパック」。
Ryze Tech社のTello EDUもDRONE STARプログラミングに対応。アプリには「うさぎみたいにうごかそう」「かえるみたいにうごかそう」といったミッションが用意されている。
DRONE STARプログラミングは右の「機能ブロック」を左の「タイムライン」上に並べていくだけという直感的なUIとなっている。
フリーミッションで作成したプログラムを実行した例。

 発表会の中でORSO代表取締役社長CEOの坂本義親氏は、「一般的なプログラミングツールでは、どういう風にツールを使うのかというミッションが見えづらかった。DRONE STARプログラミングでは、このミッションを提示して、子どもたちのワクワク感を含めて提供することができる」と説明。このDRONE STARプログラミングは2018年2月から先行導入パートナーを募集し、民間の研究団体や教育団体、私立中学校、慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムなどで教材として導入されている。こうしたプログラミング教育の現場で利用されることで、どのようにDRONE STARプログラミングを活用したら効果的かといったことについて、指導者らから意見を集めてきた。

プログラミング教育の“たたき台”として共創を目指す

 4月から開講した「DRONE STAR Academy」は、先行導入パートナーをはじめ全国各地で授業やワークショップを行い、3000人を超える受講者に指導する中で得た知見を生かしたものとなっている。受講対象はドローン教育関係者やプログラミング教育関係者、ドローンスクールやプログラミングスクール運営者としており、2019年2月に東京都千代田区内神田に移転したORSOのオフィス一階に設けられたDRONE STARラウンジが会場だ。毎月2回程度の開催が予定されており、費用は教材費を含めて税別18万円となっている。

DRONE STAR Academyは教材開発者と授業実施者が一緒になって授業を作り上げていくことを狙いとしている。
ドローンプログラミング講座の開講支援や、受講者向けのコミュニティも設けられるのがDRONE STAR Academyの特徴となっている。

 講座は1回あたり2日間で、ドローンの基礎からプログラミング基礎、プログラミングの演習を行う。その中には子供たちにプログラミング教育を行うことを想定した模擬授業や、さらにはゲスト講師を招いて“未来を考える授業”という枠も設けられている。「座学だけでなく実際にドローンやプログラミングアプリに触れて体感いただくことで理解を深めることができる」(坂本弘樹事務局長)といい、受講者によるドローンプログラミング講座の開講支援や、DRONE STAR Academyのコミュニティを立ち上げる形で受講者による意見交換の場を設け、「このDRONE STAR Academyが土台となって、プログラミング教育を共創していける“たたき台”にしてほしい」(坂本義親氏)という。

DRONE STAR Academyの講師には慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの研究員でありMQ LABO代表の原田久美子氏が参加している。

 また、今回のDRONE STAR Academy開講と同時に、DRONE STARプログラミングの機能追加の開発が発表された。そのひとつは「順次」「分岐」「反復」の各モードの追加で、これはプログラミング教育必修化に向けて、より深い学びができることを狙ったものだという。もうひとつの追加機能がTello EDUのみ対応の「編隊飛行」モードで、ドローン同士の相互の状態を認識処理させることができるようになり、より実用的で創造的な学習の効果が期待できるとのこと。この機能追加については、「これまで開催してきた体験会を通じて得た教育現場の意見を反映させたアップデート」(坂本弘樹事務局長)となっている。

新たに追加される機能のひとつ「編隊飛行モード」for Tello EDU。