三菱地所設計は、2025年3月11~14日にかけて、フランス・カンヌにおいて開催されたMIPIM 2025(不動産プロフェッショナル国際マーケット会議)に参加し、「都市・建築・人をつなぎ合わせるツール」として、建物の内外を問わずに人の移動をシームレスなものとする新時代のモビリティ「SMS:Seamless Mobility System」に関する一連の構想を発表した。

写真:発表を行う加藤氏、観客
発表を行う三菱地所設計デザインスタジオ 加藤匠シニアアーキテクト

 MIPIM(Marché International des Professionnels de l’Immobilier)は、1990年より毎年開催されている、投資家や不動産・建設企業、メーカー等が集う世界最大規模の不動産見本市。MIPIM 2025には90か国より2万人超が参加者。日本は、国土交通省と民間企業・自治体14団体による「ジャパンブース」を出展した。

 三菱地所設計は「Seamless Mobility System」と題したプレゼンテーションを実施。地上から空中にまで拡張する一連のモビリティの構想と、これにより変容する未来のまち・建築像を紹介した。

 同社が2023年度より継続して発表を行ってきた、自由な都市空間の利用を可能とするモビリティ構想SMSは、路上を走行するキックボードや、ビル内外の境界を越えて移動できる小型モビリティ、これを空中にまで展開させたVTOL(垂直離着陸機)といった一連のモビリティに関する提案。

 建築設計事務所からのアプローチとして、モビリティそのものだけでなく「進化したモビリティによる『新たな移動』がインストールされた、未来のまち・建築のあり方」の提案である点が特徴だ。

1人、2人、4人乗りのeVTOL/未来のビル
2024年に発表したVTOLの構想をさらに拡張し、MIPIM 2025では、1人、2人、4人乗りのeVTOLモデル(左)や、これにより姿を変える「未来のビル」(右)を提案した

 同社が提案するVTOLは、プロペラ・キャビン・走行の3つのユニットから構成される、全自動操縦のモジュラー(組み合わせ)型のモビリティシステム。離着陸ポートと一体で機能し、ポートからポートへの空中移動に限らず、空中と地上への移動もシームレスにつなぎ合わせる。

プロペラ、キャビン、ホイールの組み合わせ→飛行モードVTOL、走行モードPodbus
2人乗りのVTOL。モジュール(ユニット)の組み合わせで飛行モードと走行モードに変形

 MIPIM 2025では、こうした空中・地上を移動するモビリティよって姿を変える建築と都市の姿を描き出したSMSのコンセプトムービーを上映した。

【MIPIM 2025】Seamless Mobility System / Mitsubishi Jisho Design


「SMS:Seamless Mobility System」コンセプトムービーの一部

ビルの屋上イメージ
VTOLにより、ビルの「新たな玄関」となる屋上の姿。離着陸ポートとして、旅客や荷物の乗降、VTOLとPodbusのモード転換などを行う。パーゴラ屋根にはプロペラユニットを懸架しておくことができる
荷捌きの様子
空中輸送のため屋上付近に荷捌きを設置。これにより1階部分の荷捌きや倉庫といったスペースを縮小。よりオープンな都市空間を実現する
Podbusを移動させる垂直動線
Podbusを移動させる垂直動線がビルの新たな機能に加わる。従来のエレベーターと異なり、1つのリフト(レーン)に複数のパレット(床板)を稼働させることで待ち時間を短縮するシステムを構想。エレベーターもまたモビリティのひとつとして、「シームレスであること」を追求した
オフィスフロアの様子
オフィスフロア。地上や上空から各階へ直接アクセスできるようになり、小型搬送ロボットやキックボードのポートが共存する「モビリティハブ空間」が出現。ワーカーの働き方・オフィスでの過ごし方の変化にもつながる
「未来のビル」がある都市の様子
「未来のビル」と、それにより構成される都市。VTOLの離着陸ポートを屋上や中間階に設け、1階はモビリティの出入りが可能