2025年3月28日、神戸電鉄とDeepForest Technologies(以下、DeepForest)は、線路沿いの枯死木調査の効率化を目的に、ドローンやDeepForestの森林解析技術を活用した実証実験を行ったことを発表した。

 山間部などの沿線の枯死木が線路に倒れ、列車の運行を妨げるトラブルが増加している。これを未然に防ぐためには、日頃から沿線の枯死木を把握し、伐採等の処置を施す必要がある。神戸電鉄ではこの検出業務を作業員の巡回目視で行っており、作業に要する手間やコストが課題となっていた。

 ドローンとAIを使用した森林解析技術を活用し、倒木リスクのある枯死木の位置やサイズを事前に把握することで、これらの点検作業の効率化を図る。

 実証では、DJI製ドローン「Mavic 2 Pro」を使用し、事前に線路に沿って飛行ルートを設計、自動操縦でオーバーラップを確保しながら撮影を実施。高度100m、15分間のフライトで約5ha(鉄道沿線400m強)のエリアを撮影した。

写真:線路上を飛行するドローン

画像の3次元合成処理

 撮影した画像は、DeepForestの3次元画像合成ソフト「DF BIRD」を使用し、オルソ画像およびDSM(Digital Surface Model)を作成した。160枚の写真から1時間程度で合成処理を完了。また、国土地理院が公開する地面データ(DEM)との差分を計算し、樹木などの高さ情報を示すCHM(Canopy Height Model)を生成した。

オルソ画像、DSM、CHM

枯死木検出・サイズ推定

 DeepForestの森林解析ソフトウェア「DF Scanner」を使用し、ドローンで撮影したデータを解析した。同ソフトウェアは、森林のオルソ画像とCHMデータを使用し、単木検出・樹種識別・サイズ/資源量推定がワンストップで可能。今回の実証では、以下の解析を実施した。

  • オルソ画像から樹冠のポリゴンを生成
  • AIを活用した樹種識別により「枯死木」を検出
  • 樹高および胸高直径(DBH)を推定

 その結果、今回の撮影範囲(約5ha)を20分程で処理し、枯死木箇所を高い精度で自動検出した。また、検出した枯死木の一つ一つに位置情報と樹高情報がひもづいているため、線路からの距離が近い樹木のみを抽出する、倒木時に線路に到達するかの判定ができることもわかった(※1)。これにより、枯死木の本数や分布の定量的な確認が可能になるため、危険度の高い箇所を優先的に見つけることができる。

※1 DF Scannerに計算機能は非搭載(2025年3月時点)。今回の実証実験ではオープンソースソフトウェアのQGISを使用した。

写真:線路周りの木々の一部が赤く表示された空撮画像(赤は枯死木)
枯死木の検出結果(拡大)
写真:さらに上空からの空撮画像。ところどころ赤く表示されている(赤は枯死木)
枯死木の検出結果(縮小)

解析結果を使用した現地調査

 DeepForestの現地調査用アプリ「DF Walker」に解析した結果をインポートし、枯死木検出箇所の現地確認デモを実施した。DF Walkerはスマートフォンやタブレットで使用するアプリケーションで、GPSと連携して現在地を表示しながら、オルソ画像やDF Scannerの解析結果を確認することができる。同アプリを活用することで目標箇所(枯死木検出箇所)への到達が容易になり、また解析結果と現地状況が一致していることを確認した。アプリ上でファイルを作成できるため、解析では検出できなかった場所の記録にも活用できることがわかった。

左:線路周りの木々の空撮画像。その一部は青色で表示されている。右:ポリゴン情報
DF Walkerに解析結果を取り込んだ様子

 今回の実証実験では、ドローン撮影した画像から枯死木を高精度に検出することができた。これにより、従来の点検作業に比べ、より効率的かつ正確なリスク管理が可能となることが見込まれる。ドローンを活用することで作業員の作業量を減らし、短時間かつ安全に解析するだけでなく、定期的なドローン撮影およびデータのデジタル管理の仕組みを確立することで、時系列での森林状況を把握できる。枯死木検出以外の目的においても効率的な鉄道林管理(ゾーニング・プランニング等)への活用が期待される。