2024年3月28日、NSi真岡は、自律型飛行ソリューション「DJI Dock 2」の性能を評価するため、実務を想定したフィールドで実証実験を実施したことを発表した。

 DJI Dock 2は、クラウド遠隔管理ツール「DJI FlightHub 2」を使用することで、飛行中のドローンのリアルタイム映像を遠隔地から確認可能。Dock 2の状態や飛行環境(風速や天候)の把握、詳細な飛行計画の立案、ミッションの開始まで、チーム全体でワンストップ管理ができる。

ダム巡視点検の実証実験(安田測量)

 栃木県矢板市の寺山ダムにおいて、ダムの巡視点検を目的とした実証実験を実施した。(主催:安田測量、協力:NSi真岡、DJI JAPAN)

1. ダムの日常巡視

 ダム監視員の日常巡視ルートを、DJI FlightHub 2でプログラムしたDJI Dock 2からドローン(Matrice 3D)を遠隔自動飛行させて撮影した。

 飛行計画は全てFlightHub 2で作成し、飛行ルートはダム監視員の日常巡視ルートを設定。帰還時にはダム貯水池全体を監視できるルートを計画した。

 安定した飛行と途切れることのない映像伝送により、従来業務をサポートできることを確認した。着陸時に突風が吹いた際は、一時的にホバリングを行い風が止んだタイミングで降下に切り替えて着陸。無接点充電によりドローンのバッテリーを給電し、機体温度に応じてTECエアコンによる充電コンディションの最適化を行う。

往復2kmの距離をプログラムどおり飛行。飛行周辺の気象状況やバッテリー状況も確認が可能。
DJI FlightHub 2のフライト作成画面。事前にカメラ画角と地図画像をもとに、目標に対して正確にフォーカスが可能。

 FlightHub 2により発行したQRコード(URL)を読み込むことで、スマートフォンやタブレットからも映像確認が可能なため、複数人での同時モニタリングにも対応する。撮影した収録データは、ドローン(Matrice 3D/TD)が着陸後、自動でクラウド上にアップロードされる。

2. ダムの臨時点検・緊急事態対応

 地震や台風などの異常気象発生後の臨時点検や緊急事態対応を想定し、DJI Dock 2によりドローンを遠隔自動飛行させて、全体状況を把握するためのオルソ画像や3DモデルをDJI Terraを用いて作成した。全体状況の面的な把握や定期的なダム状況の確認は、DJI Dock 2を現地に設置することで、必要な時に飛行させてデータ収集からモデル作成まで一連で行うことができる。

ダム全体の2Dオルソ画像
3Dモデル。緑の三角の箇所が写真撮影箇所。地形に沿って飛行を実施した。

3. 人や車のリアルタイム検出

 ダム管理敷地内の不法投棄物の発見や、ダム放流前の下流河川内の人や車などの有無確認を想定し、ダム天端(てんば)道路内の人・車のリアルタイム検出を実施した。

 安田測量が開発したAI物体検出技術を用いて、モニタリング中の映像から人や車などの物体を検出した。飛行中のMatrice 3D/TDに画像解析などのAI技術を組み合わせることで、DJI Dock 2による撮影データの2次利用が可能。

Matrice 3DのデータをリアルタイムでAI物体検出。飛行中に人、車などを自動検出している様子。

災害時の情報発信を目的とした実証実験(中京テレビ放送)

ネットワーク不通を想定し、衛星経由での遠隔操作を実施。

 NSi真岡と中京テレビ放送が運営するそらメディア、DJI JAPANの3社は、愛知県内沿岸部にDJI Dock 2を設置し、災害時に遠隔からDJI Dock 2を運用するという想定で以下のテストを行った。

1. 災害発生時の状況把握と発信を迅速かつ広範囲に実現したい。
2. 立ち入りが危ぶまれる状況であってもドローンで安全に情報収集を行う。
3. 映像だけではなく収集したデータから多角的な状況分析をする。

 地震による津波の発生を想定し、遠隔からDJI Dock 2を操作、沖合へMatrice 3Dを飛行させ、津波の伝播の様子をリアルタイムで配信する飛行を実施した。

沖合に向け飛行
左:沖からの映像、右:海岸付近の写真

 Matrice 3Dは、沿岸部の向かい風の中でも安定した飛行を見せ、発災後の海上広範囲のデータ収集を、迅速かつ長時間にわたり実施できることを確認した。前進移動時の飛行時間は50分。アーム中心部上下に備えた突起パーツは、移動時の空気抵抗を減らし、飛行効率を向上させる。

 また、事前に撮影したデータをFlightHub 2で比較し、差分を相対比較することで異常発見のソリューションを提案する。

マッピングフライトを実行することで、2D、3Dモデルのデータ収集が可能。
左:前日、右:当日。画面中央から左右にスワイプ、ピンチイン/アウトすることで、状況変化を確認できる。