2023年5月18日、DJIは、フラッグシップドローン「Matrice 350 RTK」(以下、M350 RTK)を発表した。適用性、安全性、効率性が向上し、公共安全やエネルギー、マッピング、インフラ、林業などでの活用が見込まれる。

 製品の出荷は、2023年5月下旬より開始予定。機体本体の参考価格は約100万円(バッテリーと充電器は含まず)。

パワルフな性能

 最大飛行時間は55分、ペイロードは最大2.7kgを搭載可能。DJI O3 Enterprise伝送システムを採用し、3つのチャンネルを使用して1080p HDライブ動画(デュアル制御モードが必要)を伝送する。最大伝送距離は20km(日本国内は8km)。4アンテナ送受信システムを備え、送信時は4つのアンテナから通信状態に適した2つのアンテナを自動選択して送信し、受信時は4つのアンテナを使用して受信する。これにより、耐干渉性が大幅に向上し、さらに安定した伝送を実現する。

飛行安全性を強化

 保護等級は前モデルのIP45からIP55に向上。FPVカメラは、より分かりやすいナビゲーションで安全な夜間飛行が可能になった。新たに「アームロック検知機能」を搭載し、アームスリーブがロック解除状態で飛行を開始するリスクを回避する。さらに「6方向デュアルビジョンシステム」と「赤外線検知システム」を搭載し、6方向への検知、測位、障害物検知を行い、飛行中の機体を包括的に保護する。飛行安全性をさらに高めたい場合は、オプションの「CSMレーダー」をドローン上部に取り付けることで、水平方向360°、最大30mの範囲で認識しにくい障害物を検知する。また、機体とセンサーシステムの両方に冗長設計を採用しており、厳しい環境でもより安定した制御で業務を遂行する。

効率性の向上

 標準で同梱する送信機「DJI RC Plus」は、7インチ高輝度画面を搭載、デュアル制御モードに対応しており、標準WB37外部バッテリーを使用すれば最大6時間駆動する。保護等級はIP54、動作環境温度は-20℃~50℃と極暑・極寒環境にも対応する。
 送信機の前面、背面、上部にボタンやダイヤルを複数配置し、ユーザーの好みに合わせてボタン機能をカスタム可能。
 DJI RC PlusにはDJI Pilot 2アプリがインストールされており、ドローン操作やプロジェクト管理に必要なさまざまなオプションを提供し、業務の効率性を高める。

 また、インテリジェント機能は業務の効率性と安全性を向上させる。「AIスポット点検」(Zenmuse H20シリーズのペイロードが必要)は、定期点検を自動化し、繰り返し撮影する際の精度を向上。「ピンポイント機能」は、簡単なタップ操作で被写体に印をつけ、その被写体の座標を計算し、全てのカメラビュー上でARアイコンを使って表示するため、特に捜索救助ミッションで有用な機能になっている。

バッテリー機能向上による飛行コストの削減

 M350 RTKの「TB65バッテリー」は、充電サイクル回数が最大400回(前モデル比100%増)となり 、1回の飛行にかかるコストを低減。デュアルバッテリーシステムを採用し、ホットスワップに対応しているため、電源を切らずにバッテリーを交換できる。

 新登場の「BS65インテリジェント バッテリーステーション」は、バッテリーの充電や保管、輸送全てに対応。全方向に移動可能なキャスターが付いており、輸送や移動がしやすくなっている。

 複数の充電モードを搭載し、状況にあったオプションを選択可能。例えば、長期間バッテリーを使用しない場合には「保管モード」を選択することで、50%まで充電してバッテリー寿命を延長する。「飛行準備モード」では複数のバッテリーペアを90%まで充電し、いつでも作業が始められるように準備を整えることができる。

 バッテリーステーションがDJI RC Plusに接続している時、DJI Pilot 2アプリはバッテリーステータスとバッテリー状態情報を表示する。また、自己放電日数の設定、ファームウェア更新、ログのエクスポート、他のクイック操作へのアクセスがタップ操作だけで簡単に行える。

最大3つのペイロードを同時に積載

 シングル下方ジンバル、デュアル下方ジンバル(ジンバルコネクターは別売)、シングル上方ジンバル(ジンバルコネクターは別売) といったペイロード装着方法に対応し、E-Portオープン インターフェースを搭載している。最大積載量は2.7kg、最大3つのペイロード(別売)を同時に積載できる。

Zenmuse H20を搭載したM350 RTK

Zenmuse H20シリーズ :ズームカメラ、広角カメラ、サーマルカメラ、レーザー距離計の4つのセンサーシステムを搭載。

Zenmuse H20N :ズームカメラと広角カメラに低照度環境で性能を発揮するスターライトセンサーを搭載。2つのサーマルズームカメラやレーザー距離計を併用すると、ハイブリッド方式のペイロードとして幅広い業務で活躍する。

Zenmuse P1 :航空写真測量用に設計されたカメラ。フルサイズセンサーと交換可能な単焦点レンズを3軸ジンバルスタビライザーに搭載。

Zenmuse L1 :Livox製のLiDARモジュール、高精度IMU、およびマッピングカメラを搭載。飛行プラットフォームに装着時、L1は終始リアルタイムで3Dデータを取得し、複雑な構造でも詳細データを効率的に捉え、高精度の再構築モデルを提供する。

サードパーティー製ペイロード :ガス検出器や拡声スピーカー、マルチスペクトルセンサーのようなカスタムペイロードを、DJI Payload SDK経由で組み合わせることができる。

スマートなオペレーション

 ウェイポイント、マッピング、オブリーク、飛行帯ミッション、地形フォロー、スマートオブリーク(Zenmuse P1が必要) 、ピンポイント、ライブミッション記録、AIスポット点検など、豊富なインテリジェント機能を備える。

高精度マッピング
 ウェイポイント、マッピング、オブリーク、飛行帯ミッションをサポート。地形フォローとスマートオブリークは効率的なデータ収集を可能とし、DJI Terraと併用することで高解像の2Dや3Dデジタル画像を素早く取得。高精度かつ高効率のマッピング業務を実現する。

上空と地上間の連携
 高精度なピンポイントやクラウドベースのリアルタイムマッピング(DJI FlightHub 2が必要)といった機能を使用することで、上空と地上、クラウド間を連携。機体が画像収集を完了した後、DJI FlightHub 2が業務現場のモデリングを素早く実行し、機体オペレーターと地上にいるオペレーターにコマンド情報を伝送する。送信機とFlightHub 2は、共に点・線・面での描画やリアルタイム アップロードに対応し、機体と連携してリアルタイムでオペレーションビューをライブ配信できるため、上空と地上間の連携が必要な業務においてコミュニケーションを円滑にする。

高精度の自動点検
 ライブミッション記録を介して、飛行ルートファイルを生成・保存。そのファイルを使い自動化されたオペレーションを実行でき、繰り返しの多い点検作業も簡単・効率的に行うことができる。AIスポット点検を使用する場合は、自動での構図合わせや撮影対象の手動選択に対応し、繰り返し撮影する際の精度や点検作業の品質を向上させる。

拡張可能なエコシステム

Payload SDK
 ガス検知器、拡声スピーカー、マルチスペクトルセンサー、計算モジュールといったさまざまなサードパーティ製ペイロードを取り付け可能。E-Port、SkyPort V2、DJI X-Portに対応する(SkyPortとX-Port部品は別売)。E-Portは、Payload SDK V3以降のバージョンに対応し、Payload SDKを使用して開発したMatrice 30シリーズ用のサードパーティ製ペイロードと互換性を持つ。

Mobile SDK
 カスタム可能なモバイルアプリを開発可能。

クラウドAPI
 DJI Pilot 2アプリを介して、サードパーティ製クラウドプラットフォームに直接接続。データ転送やライブ配信、飛行ルート割り当てといった機能にアクセスできる。

▼Matrice 350 RTK
https://enterprise.dji.com/jp/matrice-350-rtk