2021年11月25日、ヤマト運輸と岡山県和気町は、医療商材や個人宅までの処方薬などの輸送におけるドローンの経済的実現性を検証する実証実験を12月6日より開始すると発表した。

 同実証は、2021年10月に両者が締結した「ドローン輸送に関する連携協定書」に基づき実施するもので、持続的な医薬品輸送ネットワークの構築を目的としている。ドローンを用いて医薬品を届けるにあたり定められた「ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)に準拠した実験となる。

 高齢化、過疎化が進む地域では、医薬品流通ネットワークの維持が深刻な課題となりつつある。特に中山間部ではコロナ禍でオンライン診療が普及しても、患者が処方薬の受け取り手段を確保できないといった新たな課題も顕在化している。労働力不足も危惧される中、持続的な医薬品流通ネットワークの構築による社会課題の解決が求められている。

 岡山県の東南部に位置する和気町でも、中心部を離れると高齢化による買い物難民や交通弱者の増加、老朽化したインフラ対策といったさまざまな地域課題に直面している。同町はその解決手段のひとつとして、2018年から積極的にドローンを活用した実証実験を推進してきた。

 ヤマト運輸は、持続的な医薬品輸送ネットワークの早期構築を目指している。課題解決の有効な手段として期待されるドローンは、2022年度に有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4)に対する許可・承認制度を新設する航空法の一部改正が予定されている。

 そして今回両者は、参画パートナーである病院、調剤薬局、医薬品卸とともに、医薬品卸や宅急便センターから医療機関、オンライン診療・服薬指導から山間部の個人宅への一貫医薬品流通におけるドローン輸送の実証実験を行う。

 検証期間は、2021年12月6日~2022年1月末までの、計12日間を予定。対象エリアに配達を行う医療用医薬品等の商品を、医薬品卸ティーエスアルフレッサの物流拠点からヤマト運輸が集荷する。その後、宅急便センターから医療機関までの納品および、オンライン診療・服薬指導後の処方薬の患者宅までへの配送について、ガイドラインに準拠した業務手順書をもとに、その有用性と経済的実用性の検証、課題の明確化を行う。

 実験では有効性の検証として、ドローン輸送の品質に関する課題と、離発着の荷役作業や運行のオペレーションの具体化・課題の洗い出しを行う。経済的実現性については、機体の必要スペックの確定、全ての参画パートナーにとって経済合理性があるかの想定コストシミュレーションを検証する。

 配送には、宅急便センターから医療機関への医薬品卸納品スキームではヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター「Fazer R G2」、医療機関から個人宅への処方薬配送スキームでは空解の電動VTOL(垂直離着陸型)固定翼ドローン「Qukai Fusion」を活用する。

実証実験のスキーム
飛行ルート・区間(飛行ルートは変更する場合がある)

 今後ヤマト運輸は、2022年2月以降は第2フェーズとして、ドローンポートを使用せず個人宅へ離着陸する技術検証および、ドローン運航の内製化検証を行う予定である。また、都市部でもドローンの社会実装に向けた取り組みを進め、将来的には複数の温度帯における医薬品輸送や宅急便の配送などに活用を広げていく方針だ。

 和気町は、町内における医薬品輸送ネットワークおよびオンライン診療体制の構築をヤマト運輸と進め、持続的な医療提供体制の確保、安心して住み続けられるまちづくりを目指すとしている。

使用する機体とスペック

【医薬品卸納品スキーム】宅急便センター~医療機関

会社・型式名ヤマハ発動機「Fazer R G2」
サイズ全長縦367cm(ローターを含む)、横全幅73cm、全高123cm
航続距離90km ※衛星通信使用
航続時間1.67時間(100分)
運べる重さ35.0kg

【処方薬配送スキーム】医療機関~個人宅

会社・型式名空解「Qukai Fusion」
サイズ全長148cm、全幅210cm、全高51cm
航続距離120km
航続時間2時間
運べる重さ2.5kg