2020年11月12日、山梨県小菅村とエアロネクストは、ドローン配送事業の実現化およびドローン配送導入による地域活性化に向けた連携協定を締結したことを発表した。今後両者は、ドローン配送導入による農業・観光・産業・経済の振興、地域雇用・人材育成・地域環境整備、および地域防災への貢献社会・インフラの整備を推進していく。

 具体的には、小菅村ならびに村民の理解と協力のもと、エアロネクストは小菅村に物流ドローンの研究開発拠点兼試験飛行場を設置し、新しい物流の実証を実施するとともにドローン配送定期ルート(ドローン実験線)の開設を行い、ドローン物流常時運用の社会実装を目指す。

木版の協定書を掲げるエアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏(左)、小菅村長 舩木直美氏(右)
小菅村をデモ飛行する物流専用ドローンの最新試作機

協定について

1. 締結日
2020年11月12日

2. 協定の内容
(1)ドローン配送導入による農業・観光・産業・経済の振興に関する事項
(2)ドローン配送導入による地域雇用および人材育成・地域環境整備に関する事項
(3)ドローン配送導入による地域防災への貢献および社会インフラの整備に関する事項
(4)小菅村、エアロネクスト両者にて協議し必要と認める事項

3. 具体的な取り組み(予定)
(1)物流ドローンの研究開発拠点兼試験飛行場の設置
(2)ドローン配送定期ルート(ドローン実験線)の開設
(3)ドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流の実証実験

協定締結の背景

 東京から約2時間、多摩川源流部に位置する人口715人(2020年9月1日現在)の小菅村は、村の情報発信基地「道の駅こすげ」の開業、県外の企業との連携や誘致、「タイニーハウスデザインコンテスト」の開催など、地方創生に向けた取り組みを実施している。また、イノベーションや新技術も積極的に推進しており、地方創生の成功モデルとして全国から注目されているという。
 一方で、ピーク時の人口から1/3となった人口減少化や過疎高齢化(高齢化率46%)、自然災害、高度情報化社会への対応、また物流に関しては大手配送会社の全国の配達限界エリアの一つでもあり、配達頻度や回数などに課題がある。

 エアロネクストは、独自の機体構造設計技術「4D GRAVITY(*1)」をコアに、様々な産業用途のドローンの研究開発を重ねてきたが、特に荷物の有無や種類による重心の変容など、機体が不安定になる物流用途では4D GRAVITYが必須技術となることから、特に物流用ドローン機体「Next DELIVERY(*2)」の開発に力を入れている。
 2022年度の「空の産業革命レベル4(*3)」(陸上輸送が困難な地域における生活物資や医薬品の配送、都市を含む地域における荷物配送)を見据えたドローン物流の社会実装のためには、十分な研究開発のための飛行環境や実証実験のフィールド、社会実装に向けた具体的な定期航路の開設が不可欠であると考え、同社は様々な自治体やパートナーと対話してきた。

 この連携協定により、両者が相互に連携、協力し、村の課題や村民のニーズに沿って、ドローン配送導入による農業・観光・産業・経済の振興、地域雇用および人材育成・地域環境整備、地域防災への貢献および社会インフラの整備を推進することで、ドローン配送事業の実現化と、ドローン配送導入による地域社会および地域経済の発展に貢献していく、としている。

協定式後の飛行デモ

 協定式の後には「道の駅」と村内集落間における野菜や商品等の配送・宅配を想定し、山女魚の塩焼きやワサビ、ヒマラヤヒラタケなど小菅村の名産品を箱に詰めた荷物をドローンで配送する飛行デモを村内で実施。物流専用ドローン最新機体の飛行を披露すると共に、飛行後でも荷物の崩れのない配送品質を確認できた。

物流専用ドローンに荷物をセットするスタッフ
小菅村の名産、山女魚、ヒマラヤヒラタケ、ワサビなど荷物の中身

両者コメント

小菅村長 舩木直美氏
 「連携協定の締結によってエアロネクストと小菅村がパートナーとなることで、村の発展にお力添えしていただけることに期待をしています。小菅村では2014年に大雪災害にあい、その時にドローンの必要性を強く感じました。災害に強い村作りにもドローンを活用していければと考えています。小菅村もスピード感をもって協力していくことで、双方にとって有意義な取り組みになればと思います」。

エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏
 「小菅村は村長をはじめ村の方々も親しみやすく親切で温かく、素晴らしい村です。我々を受けて入れて頂き大変嬉しく思います。この度の小菅村との連携協定の締結によって、我々の活動を村の課題解決に役立たせて頂くと共に、今までにどこも実現できていない物流ドローンを中心とした新スマート物流の社会実装を大きく加速させ、小菅村から日本全国、そして世界に発信していきたいと思っています」。

注釈

*1 4D GRAVITY :機体重心を最適化することで、飛行中の姿勢、状態、動作によらずモーターの回転数を均一化して、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能を向上させる構造設計技術。機体の分離結合構造とペイロードの接続の仕方に特徴を有しており、エアロネクストはこの技術を特許化して4D GRAVITY特許ポートフォリオとして管理している。

*2 Next DELIVERY :物流用途に特化した飛行性能、応答性能、着陸性能に優れた4D GRAVITY搭載ドローン。荷物のある往路も荷物がない復路も、また突風等飛行姿勢に影響を与える状況下でも常に適正重心を維持する構造により、モーターの回転数を均一化することで、速く・長く・荷物の傾かない効率的で安定した飛行を可能にする。

*3 空の産業革命レベル4 :2020年7月に発表された小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会による「空の産業革命に向けたロードマップ2020」で明記されている、2022年度を目標とした「有人地帯での補助者なし目視外飛行」の実現フェーズのこと。