令和2年9月18日、楽天は、白馬村山岳ドローン物流実用化協議会の一員として、長野県白馬村の白馬岳の登山口にある「猿倉荘」から、山頂にある山岳宿舎「白馬山荘」および白馬岳頂上宿舎までの、最大約1,600mの高度差におけるドローンを活用した目視外飛行での物資配送の実証実験に成功したことを発表した。離陸地点と着陸地点の高度差が約1,600mある場所でのドローンによる物資配送の実現は、国内初の事例になるという。

 今回の実証実験は、長野県白馬村を含む11の企業・団体・自治体(※1)が参画する同協議会が、山岳エリアの物資輸送における課題解決を目指し、2020年8月中旬から9月中旬までの約1カ月にわたり実施したもので、同社はドローンの配送ソリューションの提供や運用を行った。長野県白馬村の白馬岳(標高2,932m)の登山口にある「猿倉荘」(標高1,250m)から、日本最大級の山岳宿舎「白馬山荘」(標高2,832m)および白馬岳頂上宿舎(標高2,730m)までの片道約5kmをドローンの配送ルートとし、振動により傷みが生じやすい桃や梨など最大5kgの物資を傷つけることなく配送した。また、従来の輸送手段であった歩荷(ぼっか ※2)で約7時間かかるところを、ドローンでは約15分の飛行時間に短縮できた。なお「白馬山荘」から「猿倉荘」への復路では、建築廃材などを配送ボックスに積み込み配送した。

※1 参画企業および団体: 白馬館、白馬村振興公社、からまつ、白馬村、MountLibra、eロボティクス、丸和運輸機関、カナモト、KELEK、先端力学シミュレーション研究所、楽天

※2 荷物を背負い、徒歩で山小屋などに荷揚げをすること

(左)「猿倉荘」で物資(桃)を配送ボックスに積み込む様子(右)飛行するドローン
(左)「白馬山荘」への着陸の様子(右)山荘スタッフへ物資を手渡し

 山岳エリアに位置する長野県白馬村においては、山荘間での物資輸送は大きな課題となっている。現在、スタッフによる歩荷輸送やヘリコプターによる物資輸送を行っているが、険しい道のりでの歩荷輸送は危険が伴い、ヘリコプターによる荷揚げは費用が高騰している。さらに、白馬山荘までの飛行ルートは、上昇気流や下降気流が急に発生する複雑な地形特性に加え高度上空における空気の薄さから、正確な飛行のためには機体の高い揚力性能が必要とされ、天候不順時にはヘリコプターの飛行自体が不可能になることもある。

白馬岳の険しい登山ルート(楽天提供資料より)

 物資輸送が滞るなど万が一の事態が起きた場合は山小屋が孤立する危険性もあることから、同協議会は2018年より従来の手法よりも効率的かつ危険性の低いドローンを活用した物資配送の実証実験に取り組んできた。楽天は、2020年から同協議会に参画し、ドローンの航続距離や無線通信などの山岳エリアならではの課題解決に向けてドローン配送ソリューションの提供を行っている。

 同社はこれまで「ドローン配送による物流困難者の支援」を事業目標のひとつに掲げており、離島など物流困難地域に住む人々を支援するため、実証実験や新たな物流ソリューションの提供を、12の県で実施してきた。今回の山岳エリアにおける物流支援は、白馬村のみならず日本各地の山岳エリアで共通する課題を解決する一助となる可能性があり、今後は実証実験で得た知見を全国の山岳エリアでのドローン配送ソリューションの提供拡大に向けて生かしていく。また、将来的に地元地域の人材が活用・運用できるオペレーション体制の確立と、それに伴う地域雇用の創出を目指す、としている。

実証実験の概要

実施期間 : 2020年8月中旬〜2020年9月中旬まで(約1カ月)
配送ルート : 「猿倉荘」(標高1,250m)から離陸し「白馬山荘」(標高2,832m)および白馬岳頂上宿舎(標高2,730m)に着陸
飛行距離 : 片道約5km
配送物資 : 桃や梨などの果物 他(最大5kg)
運営主体 : 白馬村山岳ドローン物流実用化協議会
ソリューション提供 : 楽天株式会社

令和2年ドローンによる物資輸送飛行ルート(白馬村山岳ドローン物流実用化協議会リリースより)
白馬山荘(楽天提供資料より)