阪神・淡路大震災から30年を迎えた神戸市では、防災に関するさまざまな取り組みが進められている。その中でも注目されるのが、ドローンの活用だ。行政・地域・スタートアップが一体となって、災害対応力の強化を目指している。

 ゴールデンウィーク初日の4月26日・27日には、複数の港エリアを舞台にした体験型防災イベント「レジリエンスセッション 震災と未来のこうべ博」が開催された。会場では、ドローンやモビリティ、ロボットのデモンストレーションや操縦・運転体験が行われ、多くの来場者でにぎわった。

陸・海・空をカバー!最新ドローンと防災モビリティが集結

写真:会場入り口
イベントは兵庫県神戸市のメリケンパーク(写真)を含め、3つの会場で行われた。

 メリケンパークでは「陸・海・空の防災モビリティ」をテーマに、ドローンの展示や体験、非常時に活用できる車両や作業ロボットが42か所のブースにわたって展示された。

 災害時にドローンは、一般的な可視光カメラによる状況確認だけでなく、レーザーで周囲のデータを取得するLiDARや赤外線カメラなどの多様なセンサーを搭載して、より迅速・高精度な情報収集に活用されている。風雨に耐える頑丈な機体、狭所探索を行う小型な機体、緊急出動に対応する据え置き型の格納タイプ(ドック)など、状況に応じたさまざまな機体が紹介されていた。

写真:台の上に展示されたさまざまなドローン
DJIの産業用ドローン「Matriceシリーズ」をはじめ、重量物を搬送する「FlyCart 30」、小型な「Mavicシリーズ」、さらには屋内を点検するために球体のガードに囲われた「ELIOS 3」を展示。
写真:ドローンドックに設置されたドローン
箱型のドローン収納庫(ドック)を設置することで、緊急の事案などに対応する。

 最近ではスピーカー機能付きのドローンの活用が広まっている。会場では、音響メーカーとの連携で録音音声を広範囲にわたって伝えるドローンが紹介された。音響メーカーの技術により、屋外でもスピーカーの音声を広範囲に届ける工夫がなされており、無線機による災害のリアルタイム通知の機能も搭載されていた。

写真:スピーカー搭載ドローン
展示されていたスピーカー搭載ドローン。空から現場の状況を把握し、避難場所までの誘導案内などを行う。

 さらに、高輝度なLEDを搭載するドローンショー用の機体を災害対応に活かす例も紹介されていた。これは非常時に誘導サインを表示するなどの用途も期待されている。

写真:ドローンショー用の機体
ドローンショー用の機体は災害時の案内に使用できる。

子どもも夢中!水中ドローンやマグネットドローン体験

 来場者にドローンへの親近感を持ってもらう工夫も随所に見られた。例えば、マグネットを吊り下げたドローンでお菓子を吊り上げる体験や、水中ドローンの操作体験コーナーでは、子どもたちが簡単な説明だけで楽しく操作していた。

写真:ネットに囲まれたスペースでドローンを操縦する様子
写真:プールの中の水中ドローン
子どもたちがドローンの操縦体験を行うコーナーも複数用意されていた。

 また、ドローンを搬送するための専用車両も展示。機体の収納や充電、整備が可能で、遠隔の病院と連携して採血検体をドローン輸送する実用的な仕組みも披露された。加えて、近年注目される車中泊対応車両が、災害時の一時避難スペースとして有効活用できる点も紹介されていた。

写真:車両内部に格納されたドローン
ドローンの運搬用設備や遠隔監視用のモニターなどを常備した車両。
写真:車両内部の様子。机の上のモニター、ノートPC、送信機
専用車両では遠隔地と連絡を取りながらドローンを操作できる。