2025年5月26日、ドローンの通信技術を手がけるイスラエルのElsightは、目視外飛行に利用する通信プラットフォーム「Halo」の支援実績をまとめ、その一部を公開した。
Haloは、ドローンの目視外飛行に特化して設計、特許を取得した、LTE、5G、衛星通信、無線通信を統合可能なプラットフォーム。複数の4G/5Gネットワーク、衛星通信、場合によっては無線通信(RF)などを統合し、途切れない接続を保証する。遠隔飛行に加え、一人のオペレーターが同時に多数のドローンを管理することもできる。
米国フロリダ州のハリケーンでの災害評価と復旧支援
米国フロリダ州がハリケーンHeleneの直撃を受けた直後、被災地の状況をいち早く把握し、復旧活動を進めることが急務となった。道路は倒木や浸水でふさがれ、人が現場に近づくことすらできないエリアが多く存在していた。そこで、災害対応に特化したドローン運用を行うCensys Technologies社が、ElsightのHalo通信プラットフォームを導入した。
従来のドローンは目視範囲内の4マイル(約6.4km)前後までしか飛行できなかったが、Haloを搭載することで、最大20マイル(約32km)以上の遠隔飛行が可能になる。これにより、ヘリコプターや車両ではたどり着けないエリアでも空から迅速に状況確認ができるようになった。
甚大な被害が発生する自然災害発生時など、迅速な意思決定が求められる現場では、リアルタイムでの情報共有が求められる。Haloのプラットフォームは、複数の通信回線(5G、LTE、衛星)を統合し、高解像度の画像や状況データをリアルタイムで収集し、指揮チームへ即座に転送可能。救助チームは現場の状況を正確に把握し、適切な判断を迅速に下すことができる。
災害現場では、スタッフの移動に時間とコストがかかることに加え、危険地域に向かうための安全確保が大きな課題である。ドローンにより被害範囲の確認や状況の把握を自動化し、現場への人的負担を大幅に軽減。人員の移動リスクや時間、コストを削減し、救援や復旧のスピードを格段に高めることができた。
通常、目視外飛行(BVLOS)には厳しい規制が課せられているが、Haloは安定通信と運用実績をもとにFAA(米連邦航空局)からSGI免除を取得。この特例により早期にBVLOS飛行を実現し、被災地への即応体制を整えることができた。
全米規模のインフラ点検
米国では、何百kmにもわたる天然ガスや原油のパイプラインが山中や人里離れた地域を通って敷設されている。パイプラインの定期点検は、爆発事故や環境汚染を防ぐために極めて重要となる。しかし、地上から目視で点検するには極めて長い距離を移動する必要があり、人件費や時間もかかる。
Elsightは、Phoenix Air Unmanned社が実施する大規模なインフラ点検プロジェクトにおいて、Haloプラットフォームを提供。通常であれば複数日かかる320マイル(約515km)のパイプラインの点検作業を、Halo搭載ドローンにより1日で終えることができた。
山間部や人の住んでいない広大な土地において通信が途切れることは、ドローンの失踪につながる。HaloはLTE、5G、衛星通信を同時に使い、特定の通信が一時的に不安定になってもLTE/5Gの通信、衛星リンクなどとつながることで飛行を継続する。
ドローンにはLiDARや光学ガスイメージング(OGI)といった高精度センサーが搭載されており、パイプラインの形状やガス漏れの兆候を正確に検出。これらのデータを飛行しながらリアルタイムで地上の運用センターに送信し、即座に異常を判断できる体制を構築した。
通常であれば点検のためにトラックやヘリコプターで現場へ向かい、数時間をかけて人が歩いて調査する必要があった。Haloを利用したことで、現場に人が行かずに広範囲の状況を画像やセンサーからのデータを通じて点検することが可能になった。
米国の複数のクライアントが、厳しい規制があるBVLOS(目視外飛行)の飛行許可をFAA(連邦航空局)から取得している。
英国の鉄道インフラ点検・監視
英国の鉄道会社(Network Rail)は、ドローンを使った鉄道点検や監視をより安全で効率的に行いたいと考えていたが、BVLOS(目視外飛行)は法律的にも技術的にも難しいという課題があった。
従来は目視内で飛行させていたドローンを、目視外で安全に飛ばせるようにするため、Dronecloud社と連携して専用の飛行管理ソフト(Flight Management System)を進化させ、どこに飛ばし、どのくらい飛行したのか、緊急時の対応も含めて一括で管理できるようになった。
英国バーミンガムの鉄道指令センターにBVLOS(視界外飛行)テスト環境を設置。通信環境が複雑な都市部でも、Haloのマルチリンク通信(LTE/5G/衛星)を使うことで安定した飛行を実現した。
ドローンが撮影した映像やセンサーデータをリアルタイムで地上の管理チームに送信。これにより、現地に人がいなくても状況をその場で把握し、即座に対応できる。
ドローン運用を各地でそれぞれ行うのではなく、本部で一括管理する運用モデルを設計。例えば「〇〇駅周辺のドローン点検をリモートで担当者が操作・モニタリング」といったことが可能になる。
Haloは、英国民間航空局(CAA)と協力し、安全に準拠したBVLOS運用モデルの認可を可能にした。
Elsightは、日本国内での製品販売・技術サポートにおいて、総販売代理店であるナビコムアビエーションと連携し、Haloの日本展開を拡大している。災害対応や防災、物流、インフラ点検など、信頼性の高い通信を必要とする分野に重点を置いており、複数の国産ドローンメーカーや自治体との関係を構築している。
