大阪府は機体運航や必要人員等のオペレーションシナリオを定義

 続いて大阪府商工労働部産業創造課参事の貞末和子氏が「空の移動革命に向けた大阪における取り組み」について紹介した。発表された内容の多くはネット上などに公開済みのものだが、そこに2023年度の取り組みを追加する形で現状が説明された。

大阪府 商工労働部 産業創造課 参事 貞末 和子 氏

 大阪府では2025年の万博をマイルストーンに、空飛ぶクルマの実現に向けた具体的で実践的な協議・活動の核として、2020年11月に「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設立している。

 事業者を中心に国の「空の移動革命に向けた官民協議会」と連携しながら、制度設計やルール作り、実証実験の実施などによる課題の洗い出しを行うワーキンググループとしてのBlue Table、新たなサービスや価値の提供を生み出すGreen Table、多様な人々とオープンに意見交換する機能を果たすOrange Tableの3つで構成され、現時点でBlue Tableは非公開を含めて56社・団体、Green Tableは22社・団体が参加している。2023年度に実施するアクションプランが複数あり、ロードマップに基づいて様々な準備を進めている。

大阪版ロードマップ
2023年度に実施予定のアクションプラン

 発表の中では、2022年度に行われた空飛ぶクルマ社会実装事業環境調査の概要が紹介されたが、設置されるVポート(バーティポート)の種類やルート数に基づいて、保守、ベース、楽観の3ケースで市場規模や経済波及効果を試算している点が興味深かった。

 例えば拡大期において、成熟期も自律飛行を見込まない保守ケースでは府の内外にVPクラス(米国のVポート3分類のうち、垂直離着陸用飛行場=Vertihubとしての機能を有するもの)を8カ所設置してルート数を18に、成熟期に自律飛行を見込むベースケースではVPクラスにVSクラス(単一離着陸帯を有するVポート)を10カ所設けてルート数を24に、成熟期に全てが自律飛行を見込む楽観ケースでは15カ所のVポートでルートを49にというように、それぞれのケースを想定した上で調査が行われている。

市場規模と経済波及効果を3つのケースで試算。

 ベースケースによるオペレーションシナリオでは、2025年頃の立ち上げ期は、限られた機体と人員でオペレーションを開始し、約14機で1日当たり約169便を運航し、最大で約510人を輸送可能な世界観を想定している。2030年の拡大期は約36機で1日当たりの運航は約470便とし、最大1419人の輸送を、さらに2035年の成熟期は約158機で1日当たり約1839便を運航し、最大7174人が輸送可能になると想定している。

 Vポートの設置数やルートの種類、機体の種類、運用時間などの諸条件に基づいたオペレーションシナリオを整理しており、このあたりの数字は今後、事業化を進める他の地域でもある程度参考になりそうだ。

大阪府では諸条件に基づいたオペレーションシナリオを整理している。

 2023年度は、空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業費として、1億5000万円の予算(当初)を設けている。そのうち補助事業は離着陸場等拠点整備補助で5000万円、令和6年度は2億円に拡大する。補助率は2分の1以内で、上限は2カ年のトータルで5000万円としている。

 その他には実証実験、調査・検討、社会受容性向上補助があり、それとは別に委託調査事業として、空飛ぶクルマの社会実装事業環境調査、社会受容性向上事業があり、情報発信やイベント開催にもそれなりの予算を設けているのがわかる。すでに9社の事業が採択されており、その中では31社が様々な取り組みに参画することが予定されている。

事業の推進を補助する当初予算額として1億5000万円が用意されている。
補助金の採択を受けた事業とその内容。