3月13日から15日の3日間、千葉県千葉市の幕張メッセで「Japan Drone 2019」が開催された。出展社は前年の160社から222社と大幅に増え、3日間の入場者も14861人と前年より三千人余り増えるなど、日本のドローン市場の伸びを象徴するイベントとなった。

NTT/NTTドコモグループ

 今回の出展社の中でひときわ大きなスペースを割いていたのが、KDDI/プロドローンと、NTTドコモ/エヌ・ティ・ティ・データ/エヌ・ティ・ティコムウエア/NTT空間情報とNTT西日本グループのブースだ。NTTグループとKDDIという日本を代表する通信事業者が本格的にドローン産業に取り組み始めていることの表れだといえる。

 NTTグループでは、NTT西日本が4月1日から発足させた株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークとしてブースの半分を占める規模で出展。同社はNTT西日本グループがこれまでに行ってきた設備管理のノウハウを継承する形で新たに発足させた新会社で、鉄塔、橋梁、法面のほか、太陽光パネル、風力発電機のドローン点検と機器販売、パイロット育成研修に取り組んでいくとしている。また、同社は、先ごろDRONE FUNDが出資したマレーシアのエアロダイン・ジャパンと共同でインフラ保守点検サービスのオペレーションを行うとしており、エアロダイン社のブースも設けられていた。

鉄塔や橋梁、法面を中心に、ドローンによるインフラ・設備点検を行うジャパン・インフラ・ウェイマークのブース。
橋梁点検用のドローン。ACSL製の機体で、ビジュアルSLAMを搭載し、非GPS環境下で安定した飛行ができる。
鉄塔点検用の小型機。ジンバルを介してソニーのカメラRX10を搭載している。
遠隔目視点検ではNTTコムウェアの「KnowledgeMap4D」を使用。3Dモデル上で点検必要箇所を写真と共に表示できる一元管理ソフトだ。

 NTTドコモのブースではドローンプラットフォーム「docomo sky」のさまざまなソリューションを出展し、同社がこれまでに行ってきた基地局点検の技術や、5Gを使ったリアルタイム映像伝送ソリューション、ドローン農作業支援ソリューションなどを展示。また、デモエリアでは基地局点検やソーラーパネル点検のソリューションの紹介や、球体型浮遊ドローンを使った映像演出ソリューションを披露していた。

点検、農業といった産業分野でのドローン活用ソリューションを出展していたNTTドコモのブース。
「docomo sky基地局点検」はドローンが撮影した映像からAIが鉄塔のサビを検出するソリューション。すでにNTTドコモグループでは鉄塔点検に従事するスタッフを200人あまり擁しているという。
企業で複数のドローンとパイロットを管理する「ドローン鍵管理ツール」。ドローンの操縦に使用するアプリを入れたスマートフォン・タブレットがカギとなって、飛行申請通りのフライトが行われているかが管理できる。
回転するLEDフレームの残像効果を利用してさまざまな表示が可能な「浮遊球体ドローンディスプレイ」。高速回転するLEDフレームの反トルクは、水平方向に推進力を発生する補助用モーターの推力で打ち消す。

KDDIグループ

 KDDIは2016年に「スマートドローン構想」を発表して以来、このスマートドローンを使ったソリューション開発を行ってきたが、今回のJapan Drone 2019ではその用途別ソリューションを機体とともに披露していた。

 3月6日にKDDIではこのスマートドローンプラットフォームを活用して、今年度6月から用途別ソリューションの提供を開始すると発表している。Japan Drone 2019では「広域監視」「鉄塔点検」「風力点検」「測量解析」「精密農業」という5つの用途に向けたソリューションを展示していた。このプラットフォームには、これまでにも開発に関わってきたプロドローンの機体、ウェザーニューズの気象情報、ゼンリンの地図情報、そしてテラドローンの運航管理システムを採用している。

スマートドローンのソリューション提供を発表したKDDIのブース。中央には2018年12月にスタジアム警備の実証実験に使用された機体を展示。
鉄塔点検や風力点検に使用するドローンはプロドローンと共同開発したオリジナル。風力発電機の点検に使用する「KD-W01」は耐風性に優れた機体となっている。
鉄塔点検用ドローン「KD-I01」はパナソニックのミラーレスカメラを搭載。塔の周囲を右回りに周回しながら撮影するため、左側面を監視するステレオカメラセンサーを搭載している。
スマートドローンプラットフォームを活用したアイサンテクノロジーのレーザー測量用ドローン「Winser」と人命救助に供する広域検索ドローン「KD-R01」。

プロドローン

 KDDIと同じ一角でブースを出展していたのはプロドローンだ。同社は2018年4月に資本・業務提携を結び、KDDIの持分法適用関連会社となっており、KDDIのスマートドローンプラットフォームの機体開発を担っている。

今回もオリジナリティあふれるドローンを出展していたプロドローンのブース。

 今回のプロドローンのブースで最も目を引いていたのは、対話型救助用パッセンジャードローン「SUKUU」だ。同機は人命救助用のドローンで、救助要員がたどり着くのが難しい災害現場から、取り残された要救助者を救助するための機体だ。現場に到着した際にはスピーカーから要救助者に対して呼びかけられるほか、要救助者が搭乗した際にはタブレットでドローンから離れた救助要員と対話できるという、“対話”をテーマにしているのが大きな特徴となっている。また本機は自動航行ではなくあくまでもパイロットがFPVによって操縦するスタイルで、同社ではいわゆるエアモビリティとは区別している。

対話型救助用パッセンジャードローン「SUKUU」。あくまでも救助用ということで人は立って搭乗するスタイルで、その分コンパクトに折りたたんで車にも搭載できるという。

 このほか、フレーム兼用モノコックダクトカバーを採用した機体や、天井・壁面に薬剤を塗布するためのドローン、さらには長年のシングルローター機開発のノウハウを生かした、自律飛行も可能なシングルローターの農薬散布ドローンなど、個性的な機体を展示していたプロドローン。また、三菱重工業のブースでは、同社と共同開発している監視用無人機を展示していた。

工場や倉庫で物品を運んだり、トンネル点検等に使用するための「PD4-FG1」。プロペラガード自体がモノコック構造のフレームとなっている。荷物は機体の上面に搭載する独特のスタイルを採用。8月発売予定。
農薬散布用ドローン「PDH-AG1」は、ガソリンエンジンを動力源とするシングルローター機。エンジンを採用することでモーターを使ったドローンより長時間の飛行が可能となっている。
ショーボンド建設と共同開発した壁面液体塗布作業用ドローン「PD8-PR」。天井や壁面にコンクリートの劣化防止剤を塗布するために、8ローター+推進用の1ローターでロールを天井や壁に押し付けて作業する。
三菱重工業のブースで展示されていた沿岸監視用無人機。ガソリンエンジンを搭載したシングルローターヘリコプターで、最大120km/hでの巡航性能と、4kgのペイロードを搭載して2時間以上の飛行が可能だ。

DJI JAPAN

 今回はより産業用途に力を入れたと言われているJapan Drone 2019。そのためDJI JAPANのブースも産業用ドローンやソリューションに注力した展示となっていた。一般には初めてとお目見えとなったのが、2月に発売となったばかりの「Matrice200シリーズV2」で、ブース内には「Matrice210 RTK V2」を展示。機体の上面、下面には衝突防止用ビーコンが追加されたほか、新たに採用されたOcuSync2.0に合わせてコントローラーも「Cendence S」へと変わっている。

セキドやソフトバンクC&S、トプコンソキアポジショニングジャパンら10社のパートナー企業も出展したDJI JAPANのブース。
Matrice200シリーズV2のなかでもデュアル下方/シングル上方ジンバルの装備と、RTKモジュールを搭載した「Matrice210 RTK V2」。
従来機との外観上の違いは上下面に付く衝突防止ビーコンと、小ぶりになったRTK用のGPSアンテナだ。
Matrice200シリーズV2に合わせてリリースされた「FLIGHTHUBエンタープライズ」。プライベートクラウドが利用できるほか、専用アプリ「DJI Pilot PE」と組み合わせることで、高いレベルのセキュリティ要件を求めるユーザーに対応する。