ドローンにおける物件投下とは、ドローンに搭載した物件を空中にある状態から地上に落とす飛行方法を言う。

 航空法では、飛行中のドローンから物件を投下することを原則として禁止しており、国土交通省からの承認がなければ実施してはならない。

物件投下の詳細

 ドローンから物件を投下する際は地上の人等に危害をもたらす可能性が高く、機体全体のバランスが崩れて操縦ミスが起きやすいなどの懸念より、物件投下は航空法第132条の86第2項第6号によって禁止されている。

 これに違反して無承認の物件投下を行った場合は、50万円以下の罰金が科される。

 航空法では「地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそれがないもの」であれば、投下することが承認されているが、2024年5月時点では該当するものが定められていない。そのため、執筆時点でこの例外が適用されることはない。

物件投下に該当する行為

物件投下について説明する図版
(出所:資料をもとにせりぽよが作成)

 物件投下はドローン等に積載している物件を空中から地上に投下する行為を示す。この主な例としては、農業でドローンを使用する際の農薬・水などの散布が該当する。

 飛行中に空中から物件を分離する行為は物件投下に当たるが、輸送した物件をドローンを操縦して地表に置く行為は物件投下には該当しない。無人航空機を使って設置する(置く)場合も同様であり、計測機器を設置する場合なども物件投下に含まれない。

 なお、ドローンが飛行中であろうと、着陸してからであろうと、物件を地面に置く行為や人が地上で受け取る行為は物件投下には当たらず、吊り下げの範疇に含まれる。

物件投下を実施する場合の追加基準

物件投下のための追加基準
(出所:資料をもとにせりぽよが作成)

 ドローンにて物件投下を行う際は、以下の追加基準を満たす必要がある。

1. 機体が不用意に物件を投下する機構でないこと: ドローンの機構は、誤って物件を投下しないように設計されていなければならない。これは、物件の投下が意図せずに行われることを防ぐための重要な基準である。

2. 実績の要件: 無人航空機を飛行させる者は、5回以上の物件投下の実績を持ち、物件投下の前後で安定した機体の姿勢制御ができることが求められる。

3. 訓練の実施: 必要な実績および能力を持っていない場合、無人航空機を飛行させる者は、その関係者の管理下で第三者が立ち入らないよう措置された場所において、物件投下の訓練を行わなければならない。この訓練は、安全な物件投下のために不可欠である。

4. 補助者の配置: 物件を投下しようとする場所には、無人航空機の飛行状況および周囲の気象状況の変化を常に監視できる補助者を配置しなければならない。補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行できるよう必要な助言を行う。ただし、特定の基準に適合する場合は、この限りではない。

5. 注意喚起: 物件を投下しようとする場所には、第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者を配置する必要がある。これも、特定の基準に適合する場合は例外となる。

6. 高度の制限: 補助者を配置せずに物件を投下する場合、高度は1m以下とする必要がある。

7. 立入管理区画の設定: 物件投下を行う際の高度、無人航空機の速度および種類、投下する物件の重量および大きさに応じて、物件を投下する場所およびその周辺に立入管理区画を設定することが求められる。

8. 第三者の立ち入り対策: 立入管理区画の性質に応じて、飛行中に第三者が立ち入らないための対策を行うことが必要である。