ドローンにおける「フェールセーフ」とは、飛行中に何らかのトラブルが発生した際に、ドローンが自動的に安全な行動を取るためのシステムのことを意味する。

 フェールセーフは、機体を破損から守るだけではなく、自分も含めた周囲の人間の安全を守る上でも非常に重要だ。

フェールセーフの基本

 フェールセーフは、ドローンが予期せぬトラブルに遭遇したときに備えて設計されている。トラブルとしてありがちな例は、以下の2つだ。

 もちろん、これらのトラブルが起きていない通常時でも任意にフェールセーフ機能を実行できる。

ドローンとプロポの通信が途切れる

 ドローンと操作者の間の通信が途切れた場合、ドローンは事前に設定しているフェールセーフモードを実行する。通信が途切れるトラブルは信号や磁気が不安定な場所や、障害物が多い環境で発生しやすい。

バッテリー残量、電圧の低下

画像:バッテリー情報などが表示されたプロポの画面
「DJI Phantom 4 Pro+ V.2.0」のバッテリー情報(プロポ画面)

 ドローンのバッテリーが劣化している場合、飛行前には問題がなく満タンに充電されている状態であっても、トラブルが起きることはある。例えば、飛行開始後に突然バッテリーのセル電圧差が生じたり、バッテリー残量が急激に減るなどのトラブルが多い。

 ドローンのバッテリーが危険なレベルまで低下した場合、事前に設定したフェールセーフが作動し、ドローンを安全な場所に着陸させることができる。

フェールセーフの主な機能

 フェールセーフ機能はいくつか種類があるが、市販されているドローンの多くは「その場でホバリング」「その場で着陸」のほか、リターン・トゥ・ホーム(RTH)と呼ばれる機能が搭載されている。

 RTHはフェールセーフ機能としてもっとも使われることが多い機能であり、基本的には任意で行うか、バッテリー残量が低下した時などに実行されることが多い。

RTH最大高度より高い位置でドローンが飛行:下降せず水平移動、垂直に降下し着陸/RTH最大高度より低い位置でドローンが飛行:RTH最大高度まで上昇、水平移動、垂直に降下し着陸
RTHの例(出所:資料をもとにせりぽよが作成)

 RTH機能は非常に便利だが、緊急時に作動する前に、ドローンがどのように離陸地点まで戻ってくるのかを確認しておきたい。

 メーカーや機種によっても異なるが、設定してる最高高度よりも現在ドローンが飛行している高度が低い場合は、上昇してから水平移動で離陸地点まで戻ってきて着陸する。逆に、ドローンの高度が設定高度よりも高い場合は、特に何もせず、そのまま水平移動で戻ってきてから着陸という流れだ。

 このような動きをする際、飛行環境によって適した最大高度は異なる。また、ドローンは水平移動で戻ってくるため、障害物があればそのまま激突してしまう可能性が高い。そのため、飛行環境次第では、RTHよりもその場でのホバリングまたは着陸が適していることもある。

 それぞれの機能の特徴を事前に把握した上で、飛行前に環境に応じたフェールセーフ設定を行うことが望ましい。