令和8年(2026年)1月1日、改正行政書士法(以下、改正法)が施行された。「行政書士法なんて、行政書士以外には関係ないのではないか?」そう考えているドローン事業者が多いのではないだろうか。しかし改正法は、これまでのドローンビジネスの慣行を一変させる「激震」となる可能性がある。
本記事では、ドローン法務を専門とする行政書士の視点から、改正法がドローン実務に与える影響と、ドローン事業者が直面し得るリスクについて解説する。
改正行政書士法とは何か?ドローン業界に直結する改正ポイント
行政書士法(以下、法)は昭和26年(1951年)に公布され、令和8年(2026年)で制定から75年を迎えた。今回の改正は、この75年の間で最大の改正と言われている。本改正による法の主要な変更点は、以下の通りである。
1. 「目的」規定から「使命」規定への変更(1条)
2. 職責規定の新設(1条の2)
3. 特定行政書士の業務範囲の拡大(1条の4)
4. 無資格者による業務制限の明確化(19条)
5. 両罰規定の強化(23条の3)
このうち、ドローン事業者が影響を受けるものは4及び5である。そのため、本記事ではこの2点に絞って解説する。
無資格での申請代行は違法に、ドローン申請業務と改正行政書士法の関係
改正法において最大のポイントの一つが、業務制限の明確化である。法では従来から、官公署に提出する書類及び権利義務関係又は事実証明に関する書類の作成(以下、独占業務)を、行政書士のみが業として実施できる業務として規定している(官公署に提出する書類の作成には、オンライン申請等によって作成する電磁的記録も含まれる)。
具体的には、無資格者による業務制限について、改正前は「行政書士又は行政書士法人でない者は業として独占業務を行うことができない」と法で規定されていた。
ドローン業務においては、例えば以下のようなDIPSによる申請や申請に付随する書類の作成等がこの独占業務に該当し得る。
- 無人航空機の登録申請
- 機体認証の登録申請
- 技能証明の取得申請
- 飛行許可・承認申請
- 飛行計画の通報
- 事故等の報告
- 飛行マニュアルの作成
- 飛行経路図の作成
しかしこれまでは、「業として独占業務を行うことができない」という文言への抵触を避ける目的で、一部のドローン事業者が、無償提供、コンサルティング料、会費・手数料等といった名目を用い、DIPSによる申請及び付随書類の作成(以下、申請等)を実施していた実態がある。
1. サービス・付帯業務としての申請等
- ドローンスクール受講者への無料特典
- コンサルティング契約に伴う付随サービス
- 有償コミュニティ・サロンの会員特典
2. 物販や取引維持を目的とした申請等
- ドローン購入者に対する購入特典
- 元請業者による申請等の無償一括代行
- 下請・協力業者による申請等の無償代行
改正法では、業務制限に関する規定に「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加された(19条)。これにより、名目の如何を問わず、実態として申請等を行うことでドローン事業者が報酬を得ていると判断される場合、改正法1条の3に規定する独占業務に違反することが、条文上より明確になった。
なお、19条はあくまで「業として(報酬を得て)」独占業務を実施することを禁止するものである。したがって、ドローン飛行を行う事業者自らが独占業務を行うケース(本人による申請データや付随書類等の作成)は該当しない。この点は混同の無いよう注意したい。
総務省の行政書士制度に関するWEBページには、総務省から各府省庁や自治体に対し、行政書士又は行政書士法人でない者による関与を防止するための取り組みを行うよう、令和7年(2025年)6月7日付改正法公布通知にて依頼をしている旨が記載されている。
▼総務省-行政書士制度
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/gyouseishoshi/index.html
国土交通省では、当該取り組みの一環として、自動車関連業務において改正法違反となる事例等を公開している。ドローン業界においても同様に、申請等に関する改正法違反について、国土交通省が今後厳格に取り締まる可能性は高いと考えられる。
▼国土交通省-行政書士法違反となる事例等
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001747440.pdf
違反すれば会社も処罰対象に、ドローン事業者に及ぶ両罰規定のリスク
改正法では、1条の3に規定する独占業務への違反に対する罰則が大幅に強化された。具体的は、改正前から規定されていた、違反行為者に対する「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」(21条の2)に加え、違反行為者が属する法人又は人に対する「100万円以下の罰金」(23条の3)が追加された。これにより、違反行為があった場合、違反行為者のみならず法人又は人に対しても罰則が課され得る。
つまり、自社の従業員や委託先等が違反行為をした場合、雇用元・委託元であるドローン事業者の責任も問われ得る。「従業員や委託先が勝手にやったことであり、事業者には責任が及ばない」といった抗弁は通用しにくい。
ドローン事業者が今すぐ見直すべき実務対応
改正法違反を生じさせないよう、ドローン事業者は今後、どのような取り組みを実施すべきだろうか。例えば、以下が考えられる。
コンプライアンス・バイ・デザインによる適法な業務フローの整備
- 自社業務の棚卸し(申請等が業務に含まれていないかの点検)
- 棚卸し結果を踏まえた業務内容やフローの見直し・修正
- 契約書の改訂(見直し・修正に伴う契約内容の変更)
- 委託先・取引先の法令遵守状況の点検
- 法令遵守に関する従業員・委託先等への教育の実施
改正法を踏まえた業務の線引き
- 提供範囲は教育に限定(申請等に関する手順・操作の説明に留める)
- 申請等を業務から完全に切り離す(本人対応を依頼または行政書士へ取次)
専門家との戦略的パートナーシップ
- 行政書士との提携(申請等の業務委託、顧客依頼の取次)
- 行政書士との顧問契約(法対応に関する助言、教育の委託等)
法令遵守がドローン事業の競争力になる時代へ
今回の改正は、行政書士の独占業務の範囲を拡充するものではない。条文上の記載を明確化し、これまでの誤った解釈や理解に基づく一部の不適切な運用を是正することで、国民の権利利益を保護することも目的の一つとしている。
昨今のドローン業界を取り巻く制度等の変化からも分かるとおり、業界の発展をさらに加速・推進するため、ドローン事業者には、さらなる法令遵守とコンプライアンス意識の向上が求められている。正しい知識を持ち、適法な事業運営を行うことが今後、ドローン事業を長く継続するための最大の防御作となる。そのためには、ドローンに関連する法令や手続き等に精通した行政書士の活用もより一層重要となるであろう。
法令を遵守し、コンプライアンス意識の高いドローン事業者が顧客や取引先からの信頼を獲得して成長することで、安全安心な環境の下、ドローンがより一層普及していくことを筆者は期待している。
参考:
- 行政書士法(昭和二十六年法律第四号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004 - 新旧対照表
https://www.soumu.go.jp/main_content/001021148.pdf - 行政書士制度
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/gyouseishoshi/index.html - 【別添】行政手続窓口等における行政書士法違反の防止に向けた取組について(令和8年1月1日一部更新)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048262.pdf - 行政書士法違反となる事例等
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001747440.pdf
