2022年12月5日の改正航空法施行により無人航空機操縦者技能証明(操縦ライセンス)制度が創設されてから3年が経過しました。技能証明の有効期間は3年のため、新制度の創設当初に取得した方は初回の更新時期を迎えることになります。すでに航空局から更新時期の案内メールの送信が始まっています。そこで、今回は技能証明の更新について解説します。
更新時期と申請期限
更新の時期
技能証明の有効期間は3年ですが、有効期間満了日の9か月前から更新講習を受講することができ、有効期間満了日の6か月前から更新の申請が可能です。
ここで非常に重要な点は、2025年12月9日に公布・施行された航空法施行規則の改正により、更新の申請は有効期間満了日の6か月前から『1か月前まで』の間に行わなければならないとされたことです(航空法施行規則236条の57)。これは、更新手続きには、申請から最大1か月程度を要する見込みであることから、更新手続き中に技能証明の有効期間が満了し失効することを防ぐための改正とされています。
2025年12月15日時点では、型式認証を取得した機体は、第一種が1機種(マルチローター)、第二種が12機種(マルチローター7機種、ヘリコプター5機種)であり、まだ技能証明を用いた特定飛行(※)を行う機会のなかった技能証明保有者が多数ではないかと思われますが、有効期間満了日の6か月前から1か月前までの間に更新の申請を行わなかった場合には、技能証明は失効するため注意が必要です。
また、更新講習修了証明書の有効期限は3か月のため、証明書が発行されたら早めにDIPSで更新の申請手続きを行ってください。
※ 技能証明を用いて許可承認不要での特定飛行を行うためには、型式認証取得機種であっても、機体認証を受ける必要があります。
更新に必要な要件と講習内容
更新に必要な要件
技能証明を更新するためには、
- 登録更新講習機関での無人航空機更新講習の修了
- 身体適性に関する基準を満たすこと
が必要となります。
登録更新講習の内容
登録更新講習には、学科講習と実地講習があります。実地講習は技能証明の停止処分を受けている場合にのみ必要とされますので、停止処分を受けていない場合には学科講習の受講だけで足ります。
学科講習は、教本と視聴覚教材(動画教材)を用いて行われ、オンライン講習やe-ラーニングも認められていますが、オンラインやe-ラーニングの場合は、講習の実施後に対面での効果測定(修了演習)を実施することが求められますので、現時点では、オンラインだけで更新講習を修了することはできません。学科講習の完全オンライン化については、航空局で対応を検討中とされています。
講習時間数と身体適性検査
講習時間数
| 技能証明の停止処分 | 区分 | 学科講習時間 | 実地講習時間 |
| なし | 一等 | 75分 | 不要 |
| 二等 | 50分 | 不要 | |
| あり(※) | 一等 | 105分 | 15分(操縦演習5分 / 指導・質疑応答10分) |
| 二等 | 80分 | 11分(操縦演習6分 / 指導・質疑応答5分) |
※ 航空法132条の53第3号から第5号による技能証明の効力の停止処分
身体適性検査
一等25kg以上の場合には身体適性検査証明書等が必要となりますが、それ以外の場合は自動車の運転免許証を提示することで身体適性検査を満たすことができます。
更新手続きの流れと実例
更新手続きの実際の流れ(技能証明の停止処分なしの場合)
筆者は2023年3月に技能証明を取得したため、2026年3月に有効期限を迎えます。
2025年8月に航空局からの「更新期限のお知らせ、更新講習受講のご案内」メールを受信したことから、11月に更新講習を受講しました。
学科講習の内容は、航空局作成の教本を使用した講義と、事故例とその教訓をテーマとした動画の視聴でした。筆者が技能証明を取得したときからの制度面での大きな変更点としては、レベル3.5飛行の制度の創設があり、解説講義でもこの点には重点が置かれていました。
技能証明の停止処分を受けていない場合は、学科講習の受講で更新講習は修了になります。講習を修了すると、登録更新講習機関から無人航空機更新講習修了証明書が発行されますので、更新の申請手続きの際には、DIPSで必要事項を入力したうえで、この修了証明書と運転免許証をアップロードしました。
なお、身体適性検査のため提出する運転免許証に関して、裏面の提出が漏れていたため再申請(再度のアップロード)が必要となりました。運転免許証の表面にある「条件」欄(筆者の場合は「眼鏡等」)が更新されていないか確認のために、裏面の添付も必要とのことでしたので、ご注意ください。
更新に係る費用
更新手続きには、技能証明書の交付手数料2,850円に加え、登録更新講習機関における更新講習の受講料が必要となります。更新講習の受講料は講習機関ごとに異なりますので、受講を検討している講習機関に確認してください。
なお、筆者は今年、小型船舶操縦免許(有効期間5年)の更新手続きも行いました。小型船舶の更新講習は、講義と視聴覚教材あわせて約60分で、更新に要した費用は、今回受講した技能証明の更新とほぼ同じ程度(交付手数料含む)でした。
失効を防ぐための注意点
失効しないために
上記のとおり、航空法施行規則の改正により、更新の申請は有効期間満了日の1か月前までに行わなければならないものとされたことから、有効期間満了日の直前に更新の申請をしたのでは間に合わないことになりました。
これから技能証明の有効期間満了を迎える皆さまは、期限までに更新手続きが間に合わず技能証明が失効することのないよう、更新講習の実施日程や業務の都合なども踏まえて余裕をもったスケジュールを立てて、更新手続きを進めるようにしてください。
【ドローン事業に役立つ法規制解説】
Vol.6 国土交通省が登録講習機関に対して厳重注意-不適切事項を解説
Vol.5 国土交通省が登録講習機関に対して厳重注意-法令違反の内容を解説
Vol.4 ドローンの国家資格取得後に注意すべき事項
Vol.3 VTOLの技能証明についての課題と実務上の対応方法の検討
Vol.2【2024年】ドローン操縦者技能証明試験の概要と実務上の課題
Vol.1 ドローンの国家資格と民間資格の違いを解説、課題が残るVTOLの運用
岩元昭博 弁護士
2006年東京大学法学部卒業、2007年弁護士登録、2019年University of Washington School of Law(LL.M.)修了、2020年ニューヨーク州弁護士登録。
上場企業・中小企業に関する訴訟・紛争対応、人事・労務、コンプライアンス、組織再編等の企業法務、地方自治体に関する行政法務などを中心に業務を取り扱う。
東京都(法務担当課長)及び国土交通省航空局(無人航空機安全課専門官)での業務経験があり、航空局では2022年12月改正航空法施行によるドローンのレベル4飛行実施に向けた制度整備を担当。
2023年にリーガルウイング法律事務所を開設し、現在に至る。
