2025年10月13日に閉幕を迎えた大阪・関西万博会場内のモビリティエクスペリエンスにおいて、ANAホールディングス(以下、ANAHD)とJoby Aviation(以下、Joby)は、9月30日から実施してきた空飛ぶクルマ「Joby S4」による最後のデモ飛行を成功させ、有終の美を飾った。格納庫と離着陸場があるEXPO Vertiport(以下、ポート)前には、ラストフライトを間近で見ようと大勢の来場者が詰めかけ、入場規制が行われるほど人気を集めていた。
万博では184日の会期中、3機種(HEXA、SkyDrive、Joby)による空飛ぶクルマのデモフライトが行われた。いずれも万博の目玉の一つとして話題を集め、一部トラブルはあったものの三者三様の機体が実際に空を飛ぶ姿を目にする貴重な機会となった。
パビリオンや大屋根リングからも見える海上ルートを8の字飛行
最後のデモ飛行を行ったeVTOL「Joby S4」のフライト実績は、9月30日~10月13日のうち12日間で計24回、総飛行時間は約4時間となる。ANAの特別塗装を施した機体は、10月5日から万博仕様としてミャクミャクのステッカーが追加された。搭乗人数はパイロット1名、乗客最大4名の計5名で、デモ飛行実施時はパイロット1名のみが搭乗。なお、飛行の許認可はJobyが取得し、すべての運航を実施した。
機体はJobyの本社がある米国で設計・製造された。離着陸時はプロペラが上を向いて垂直移動し、上昇後にプロペラが横向きになり、飛行機のように速い速度で水平飛行する、米国の分類ではベクタードスラストというタイプにあたる。動力はバッテリーなのでヘリコプターよりも静かにゼロ・エミッションでの飛行を実現する。
| 「Joby S4」の仕様 | |
|---|---|
| 全長 | 7.5m(操縦部6.4m) |
| 全高 | 約3.75m |
| 最高速度 | 時速200マイル(時速320km) |
| 航続距離 | 160km |
| 飛行音 | 45.2デシベル(500m上空飛行時) |
飛行ルートは、ポートを離陸した直後に会場西側海上へと向かい、海に張り出した大屋根リングの南側にある突堤上空あたりで折り返し、ポート近くまで戻って再びリングへ向かい8の字を描くコースを数回繰り返すというもの。1回あたりの飛行時間は約10分で、3社中最も長い距離と時間であった。海上を飛ぶ際には翼で揚力を得る完全遷移状態で水平飛行し、最高時速は220km、飛行高度は300mと発表されている。
ただし実際のルートは「できるだけ多くの来場者に身近に飛行する姿を見てもらうため」飛行許可範囲でギリギリ夢洲に近づけるよう工夫されていた。
飛行する姿は西側団体休憩所あたりが一番長く見えたようだが、その他にも会場の南側やリングの上、屋上施設があるパビリオンからも見えたと報告されている。著者はポート近くと休憩所の2か所でそれぞれ見学したが、ポート付近で飛行していた他の2社とは異なり、あっという間に海上へ飛び立ち、その後も長く飛行していたことに驚かされた。また、常にプロペラを高速回転させて浮上するマルチコプタータイプに比べて、離着陸時も静かなので、気付いたら離陸していたという点にも驚いた。
機体が見える度に周囲から声があがり、見学している人たちが「とにかく速くて静かなのでびっくりした」といった感想を口にしているのが印象的だった。そうした声がはっきり聞こえるほど静かで、飛んできても見逃してしまったという声もあちこちで聞かれたのが面白かった。
