UAVレーザー測量に用いられるドローン用レーザースキャナや、ガソリンエンジンとバッテリーのハイブリッドドローンを独自に開発・販売しているのが、大阪市に拠点を構えるアミューズワンセルフだ。特に近年は、測量用レーザーで一般的な近赤外線ではなく、可視光領域の波長であるグリーンレーザー(緑色の光)を使ったスキャナに注力しており、浅い水の中や濡れた地表面でも正確な測量ができるため、導入が広がっている。
そんなアミューズワンセルフは、2025年春に、グリーンレーザーを採用したレーザースキャナ「TDOT 7 GREEN LITE」を発表した。本機は2024年にリリースした「TDOT 7 GREEN」をベースに、計測に必要なものだけに絞って機能を搭載することで重量を2.9kgに軽量化した。これにより、重量約3.6kgのTDOT 7 GREENではペイロードの制限を超えるため搭載できなかったDJIの「Matrice300/350RTK」にも対応した。
同社では今秋、全国各地で、このTDOT 7 GREEN LITEをはじめ、産業用ドローンの最新モデル「GLOW REV2.0」といった同社の取扱製品を体験できる「実演ロードショー2025」を実施している。今回は11月25日に群馬県昭和村で開催されたデモフライト講習会を取材した。
TDOT 7 GREEN LITEはDJIの新しい産業用ドローンMatrice 400にも対応
講習会の冒頭ではTDOT 7 GREEN LITEによるデモフライトが行われた。本機を搭載するドローンはDJIから今夏リリースされたばかりの「Matrice 400」だ。会場となった、総合スポーツ施設である千年の森J-Wingsの上空を自動航行で飛行するデモンストレーションを行った。
前述の通りTDOT 7 GREEN LITEは、Matrice300/350RTK(M300/350)にも搭載できるように軽量化したレーザースキャナではあるが、奇しくも本機のリリースと前後して、DJIがM300/350の後継機となるMatrice 400(M400)を発表したことで、ユーザーもM400に機材を移行していくのは自然な流れだろう。アミューズワンセルフではTDOT 7 GREEN LITEもM400への対応を行っており、この日はその開発過程をお披露目する形となった。
M300/350では機体下面前方のジンバルに直接TDOT 7 GREEN LITEを搭載できたが、M400では重心キャリブレーション機能がないため、同じように前方ジンバルには搭載できない。そこでアミューズワンセルフでは、M400の下面後方のサードジンバル取り付け部に、TDOT 7 GREEN LITEを装着するためのアタッチメントを開発。この日は試作品と見られる削り出しアルミ製のアタッチメントを介してTDOT 7 GREEN LITEが取り付けられていた。
また、レーザースキャナは大きな電力が必要となるため、DJIのペイロードマウントであるSkyport V2からの電力供給では不足する。そこで、アミューズワンセルフでは、専用アタッチメントを作成して動くようにした。
さらに、機体下面に取り付けられたTDOT 7 GREEN LITEは、離着陸時に地表面とのクリアランスが確保できない。そこで、M400のスキッドに差し込む形で、スポンジ状のスペーサーを取り付ける形で利用する。このスペーサーは着陸時のクッションも兼ねている。
「ゲートウェイ」で飛行中も常にTDOT 7 GREEN LITEの状態を監視できる
TDOT 7 GREEN LITEを搭載したドローンは、DJIのアプリであらかじめ設定したルートに従って離陸から計測まで行う。一般的なレーザースキャナでは、離陸前にスキャン開始、着陸後にスキャン停止の操作を行う必要があるほか、飛行中のスキャナの状態は確認することができない。
しかし、TDOT 7 GREEN LITEでは、新たに「ゲートウェイ」と呼ばれる無線LANハブを用意。このゲートウェイは機体と直接通信すると同時に、手持ちのスマートフォンやPCとWi-Fi接続し、Google Chromeなどのブラウザで専用のアプリケーションを起動することで、TDOT 7 GREEN LITEのステータスやスキャン開始・停止などの操作が行える。これにより、ソフトの画面上でスキャンの開始・停止操作ができるほか、飛行中のTDOT 7 GREEN LITEの状態を確認することができる。
ソフトの画面上では、GNSSの衛星の受信状態や温度、アライメントの完了といったステータスを確認することが可能だ。また、M400のコントローラーの画面上では、今TDOT 7 GREEN LITEが計測している地形をリアルタイムで表示するため、飛行中、常に計測の出来高を確認することができる。
この日のデモフライトは10分程度で終了したが、ペイロードに余裕のあるM400ではTDOT 7 GREEN LITEを搭載した状態で30分程度の飛行が可能だという。
M400になって機体のLiDARが上面前方にあるために、TDOT 7 GREEN LITE用のGNSSアンテナをそこに取り付けることができない。機体の後面に搭載した場合は、機体のバッテリーを交換する際に人がアンテナの上に覆いかぶさる形になってしまい、GNSSの受信状態が悪くなってしまう。
そこでアミューズワンセルフでは、M400の左前方ローターアームに取り付けられる専用GNSSアンテナを新たに開発した。このアンテナはボルトなどを使うことなく脱着ができる。また、M400は電源を落とすことなくバッテリーを交換できるホットスワップの機能があるが、ホットスワップ時にはM400から供給される電力が不足するため、モバイルバッテリーなどからTDOT 7 GREEN LITEのUSBポートに電力を供給することで、レーザースキャナの電源を切ることなく計測の継続が可能だ。
TDOT 7 GREEN LITEユーザーの疑問に応える実践的な講習会
この日は残念ながら断続的に小雨が降るあいにくの天候ということもあって、飛行デモンストレーションはTDOT 7 GREEN LITEのみとなってしまったが、天候が良ければGLOW REV2.0や、アミューズワンセルフが扱うCHCNAVのレーザースキャナAA10/15を搭載したX500の飛行デモも見られるという。
TDOT 7 GREEN LITEの飛行後は、会場を屋内に移して、計測したデータの取り扱いについて実践的な講習が行われた。
TDOT 7 GREEN LITEが計測したデータは、本機に装着したSSDに記録される。飛行後はそのデータを直ちに現場でPCなどにバックアップ。現場もしくはオフィスに戻ったら、そのデータをアミューズワンセルフのクラウドサービスにアップロードすることで解析が行われる。同社のクラウドサービスはGNSS補正情報配信サービスのジェノバと契約しており、電子基準点の情報をもとにTDOT 7 GREEN LITEで計測したデータを補正される。ただし、飛行による計測のデータの品質が、この解析にかかる時間と成果に影響するため、飛行前後のキャリブレーションがとても大事だという。
こうしたTDOT 7 GREEN LITEを使った計測において実践的な情報が提供されるのが、このロードショーが“講習会”とうたうゆえんである。TDOT 7 GREEN LITEでは飛行の開始時と終了時に必ず“8の字”になる経路で飛行して、アライメントを行うことになっているが、このアライメントを正しく行うことで、フットプリント(レーザーが計測した地上の地点)のブレを抑えることができるという。
また、TDOT 7 GREEN LITEは浅い水中の地形も計測することができるが、水中ではレーザー光の速度が落ちるため、計測した距離が近くなってしまう。そこで、水面下では距離が約25%減じているという前提で解析処理を行うことになっているといったアナウンスも行われた。
会場には、アミューズワンセルフの産業用ドローンの最新モデル「GLOW REV2.0」も展示されていた。ガソリンエンジンとバッテリーを併用し、最長4時間の飛行を可能としたハイブリッド式と、インテリジェントバッテリーを採用したバッテリー式がある。コネクタの接続の必要がないスマートバッテリーを採用したほか、ローターアームを格納できるため、収納時のサイズが約60×60cmとコンパクトで、現場での迅速な展開・収納が可能であるという。
夏の草むらでも地表面と草の境界がはっきり出ることからグリーンレーザーが選ばれる
この実演ロードショーは、開催地の地元にあるアミューズワンセルフの代理店が運営や集客を行っており、今回、群馬県で開催された講習会は、群馬県前橋市のソッキテックが運営を行った。同社は測量機器の販売・メンテナンスを行っている企業で、測量機器のひとつとしてアミューズワンセルフの製品を取り扱っている。この日、講習会には13社23名が来場した。
ソッキテックの顧客でも、すでに10社以上がグリーンレーザーを導入しているという。群馬県は海や湖といった大きな水面がない県ではあるが、「夏の草むらではグリーンレーザーの方が地表面と草の境界がはっきり出る」といった理由でグリーンレーザーが選ばれる。また、ダム湖のような水深の深い水面では、マルチビームソナーを採用するユーザーが多いが、それでもその縁の浅いエリアはソナーが使えず、グリーンレーザーを使うユーザーが多いという。
アミューズワンセルフの実演ロードショーは無料で参加でき、2026年2月以降まで全国で開催される予定だ。同社の最新のグリーンレーザーやドローンのデモフライト、計測・解析に関する実践的な講習会が行われるため、興味のある方は参加を検討してほしい。
お問い合わせ先
アミューズワンセルフ
https://amuse-oneself.com/
実演ロードショー2025
https://amuse-oneself.com/event/road_show
