2025年は、大阪・関西万博での取り組みなど、空飛ぶクルマ関連の動きが活発に行われた。「空飛ぶクルマビジネス調査報告書2026」の関連企画として、2025年12月の記事では、国内の動向を中心に2025年の振り返りを行った。
今回は、2026年の国内の展望について分析を行う。2020年代後半の商用運航の実現に向けて、制度整備や地域連携、事業連携、技術開発などの取り組みが進むことが予測される。
制度整備
空飛ぶクルマの商用運用の実現に向けて制度整備が進む。空の移動革命に向けたロードマップや空飛ぶクルマの運用概念(ConOps)の改訂が行われる。電波上空利用に関して報告書案が示される。
日本では、空の移動革命に向けた官民協議会(事務局:経済産業省、国土交通省)の議論に基づき、空飛ぶクルマの産業政策や制度整備が進められている。空の移動革命に向けたロードマップ2022では、大阪・関西万博でのフライトの実現が重要なマイルストーンとして設定された。政府機関は、万博でのフライトの実現に向けて制度整備を進めた。
2025年8月28日に開催された官民協議会では、大阪・関西万博後の社会実装の実現イメージ(案)が示された。導入初期(2020年代後半)、中期:成長期(2030年代前半)、長期:成熟期(2030年代後半)、将来:完成期(2040年代以降)の4つのフェーズが示された。導入初期では、商用運航が一部先行する地域でスタートする。2地点間運航や遊覧飛行などがイメージされている。
官民協議会では、2025年度の検討項目として、(1)空飛ぶクルマの制度整備に係る検討、(2)無操縦者航空機に係る検討、(3)ConOpsの改訂、(4)ロードマップの改訂を行うことも示された。
総務省の情報通信審議会は電波上空利用作業班を設置し、次世代空モビリティなど、電波の上空利用について議論を進めている。2026年3月に作業班で報告書案をまとめた後、パブリックコメントや作業班・電波有効利用委員会での修正審議を経て、6月頃に情報通信技術分科会への報告を行う予定となっている。
地域連携
先行エリア(大都市圏・観光地など)を中心に、机上検証や実証実験などが行われる。自治体と事業者などが連携したプロジェクトが展開される。
東京都の「空飛ぶクルマ社会実装プロジェクト」は、2030年の市街地での展開を目指している。2025年10月23日、東京都政策企画局は、「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」Ⅰ期の実施事業者を発表した。日本航空を代表事業者とするコンソーシアムと野村不動産を代表事業者とするコンソーシアムが選定された。
このプロジェクトでは、事業エリアとして、臨海部エリアや河川上エリアでの運航サービスの実現を想定している。今後の想定スケジュールとして、2025年度は準備・調整・計画・検討、2026年度は実証飛行、2027年度はプレ社会実装の推進が予定されている。
愛知県では、あいちモビリティイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」に基づき、新しいモビリティの実装に向けた取り組みが行われている。早期社会実装を目指すローンチモデルとして、限定されたエリアでの空飛ぶクルマによる遊覧飛行の実現を目指す方針が示されている。
大阪府は、万博後の取り組みとして観光分野を主な柱として設定している。大阪は観光地として世界的な発信力がある。大阪府は「空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」を通じて事業者へのサポートを行っている。
観光地では、自治体や事業者などが連携し、遊覧飛行や拠点間飛行の実現に向けた取り組みが進められている。
事業連携
空飛ぶクルマの商用運航の実現に向けて、事業者同士の連携活動が加速する。運航サービスを開始するための準備が進められる。
日本では、空飛ぶクルマに関する分野で、スタートアップや事業者(製造業、交通、商社、不動産、建設・土木、通信、デジタル、電力・エネルギー、保険など)による連携活動が活発になっている。
大手航空事業者は、空飛ぶクルマを活用した移動サービスに参入する動きを進めている。ANAホールディングスはJoby Aviationとエアタクシー事業について検討を行っている。Soracle(住友商事・日本航空の合弁会社)はArcher Aviationと連携した活動を進めている。Soracleは2026年に大阪・関西エリアでの実証運航を予定している。
SkyDriveは鉄道事業者と連携した動きを展開している。同社は国内の鉄道会社4社(近鉄グループ、Osaka Metro、JR東日本、JR九州)と資本業務提携契約を締結している。
空飛ぶクルマの商用運航を実現するためには、技術力や資本力など、様々な要素が必要になる。産業として裾野が広いため、分野を越えた連携活動が求められる。
技術開発
空飛ぶクルマの機体、運航管理システム、地上インフラなどの技術開発が進む。万博での成果を活かし、社会実装の実現に向けた準備が行われる。
国土交通省はこれまでに4社(SkyDrive、Joby Aviation、Volocopter、Vertical Aerospace)からの型式証明申請を受理している。航空機の安全性などを証明するためには、認証を得ることが求められる。
空飛ぶクルマの運航管理システムには、安全なフライトオペレーションを支援するための役割がある。大阪・関西万博では実験的な運用が行われた。
地上インフラ(バーティポートなど)に関しては、安全な離着陸や充電、整備、気象・風況観測などを行うための技術開発が進められている。
まとめ
空飛ぶクルマに関する動向について、前回の記事では2025年の振り返り、今回の記事では2026年の展望の分析を行った。万博での成果などを検証した上で、2026年は制度整備や地域連携や事業連携、技術開発などの取り組みが進む。産業エコシステムの形成に向けた活動を継続的に行うことが重要になる。
関連リンク
国土交通省:空の移動革命に向けた官民協議会
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk2_000007.html
経済産業省:次世代空モビリティ
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/airmobility.html
総務省:情報通信審議会 情報通信技術分科会 電波有効利用委員会 電波上空利用作業班
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_yukoriyo/dempajokuriyo/index.html
東京都:空の移動革命実現に向けた東京都官民協議会
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/cross-efforts/soranoidoukakumei
愛知県:あいちモビリティイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」
https://a-idea.jp/soramichi/
大阪府:空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110020/energy/evtol/index.html
Soracle「大阪・関西万博およびその後の社会実装に向けた取組みについて」(2025年4月3日)
https://www.soraclecorp.com/press/press_250403/
ANAホールディングス、Joby Aviation「ANAホールディングスとJoby Aviation エアタクシー事業合弁会社設立の本格検討開始 10月1日から大阪・関西万博にて空飛ぶクルマデモフライトを一般公開」(2025年8月5日)
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202508/20250805-3.html
SkyDrive「「Japan Mobility Show 2025」にて「鉄道×空飛ぶクルマ」を展示」(2025年10月21日)
https://skydrive2020.com/archives/67064
空飛ぶクルマビジネス調査報告書2026
| 書名 | 空飛ぶクルマビジネス調査報告書2026 |
| 著 | 合同会社ポリシーデザイン |
| 編集 | インプレス総合研究所 |
| 発行所 | 株式会社インプレス |
| 発売日 | 2025年12月11日(木) |
| ページ数 | 168ページ |
| サイズ | A4判 |
| 定価 | CD(PDF)版・電子版 11万円(本体10万円+税10%) CD(PDF)+冊子版 12万1,000円(本体11万円+税10%) |
| ISBN | 978-4-295-02359-3 |
| URL | https://research.impress.co.jp/report/list/cishidaieamohirite-i/502359 |
▼2025年の空飛ぶクルマ関連の動向(国内)
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/news/1188022.html
高橋 伸太郎 (合同会社ポリシーデザイン 代表社員)
次世代空モビリティに関する分野では、産業戦略の提言や、スタートアップへの支援活動、教育・研究プログラムの推進などを行ってきた。現在は、合同会社ポリシーデザイン代表社員、DRONE FUND顧問などを務める。
