若者と外国人が支える新しい測量の担い手
ドローンの操縦は、ゲーム世代の若者にとって馴染みやすい。実際、測量業界では若年層の関心が高まりつつある。また、大西氏は「ベトナムやタイなどの外国人技術者も注目されており、母国でICT技術を学び、日本の現場で即戦力として活躍している」という。
一方、日本の教育現場ではBIMやCIMといった建設ICTを学ぶ機会が少なく、ドローンの操縦技能を教える教育機関も限られているのが現状だ。DSEROは、こうした課題に対応すべく、デジタル技術と3次元データの理解を深める教育を推進している。「複数の技術が相互連携していることを理解する力が成功の鍵です」と大西氏は語る。
続けて「教育課程でドローンを学ぶことで、就職活動の競争力は大きく向上する。ドローンを取り扱う分野は将来性が高く、新たな価値を生み出すことに期待しています」とコメントした。
ドローンで広がるインフラDXの可能性
すでに現場では、ドローンを使った“デジタルツイン”の活用が進んでいる。例えば新名神高速道路の建設現場では、ドローンで取得したデータを設計図に重ねて、mm単位で出来形の確認ができるようになった。従来は足場を組んで人が目視で点検していたが、人命事故の削減や作業時間の短縮につながっている。
水道インフラでも、掘削作業の過程を3次元データで記録し、埋没物の位置や深さを正確にシミュレーションすることが可能になり、アーカイブを残すことで維持管理にも役立てられている。従来は平面図を用いていたため、深度情報が欠落していたが、3次元データによって維持管理の精度とスピードが格段に向上している。
このような変革を支えるのは、コマツやソフトバンクなどが提供する最新技術だ。自動・遠隔化された建設機械やドローンの活用をビジネスに組み込み、市場をけん引している。
さらに、ドローンによるレーザー測量の登場により、3次元データの取得が一段と容易になり、ドローンの適用範囲は着実に拡大している。
最新技術による効率化が進む一方で課題もある。建設現場は外注によって測量から施工、点検までが別々の企業に分かれているケースがほとんどだ。データの受け渡しや活用がスムーズに行かない現場も多い。制度と現場の運用が技術の進化に追いついていない「過渡期」にあると言える。そこで、DSEROは資格制度を通じた人材育成によって、業界の基盤を下支えしようとしているのだ。
