目視外飛行でドローン運用を無人化!afterFITの点検ソリューションを視察

 今回は北関東にある2MWの太陽光発電所でafterFITによるデモ飛行が実施された。同社は「DroneNest」と呼ばれる据え置き型のドローンポートを使ったソリューションを提供しており、前述した通り目視内飛行による点検が主流となっているなか、目視外飛行(レベル3飛行)の点検を提案している。なお、同社はソーラーパネル点検において、レベル3飛行の許可承認取得の実績を持つ数少ない企業だ。

 目視外飛行のソーラーパネル点検は、据え置き型のドローンポートを設置し、PCを使って遠隔地からドローンを飛行させるといった仕組みだ。これが可能になれば、点検事業者の派遣が不要となり、いつでも状況を確認することができるため、人件費と交通費を削減できるうえ、定期的な点検が可能になるという。

山頂に設置されたDroneNest。これを設置するには場所や周辺の通信システムなどノウハウが必要となるため、afterFITでは設置サポートも行っている。
格納されているDJI Mavic2 Enterprise Dual。下部には格納庫内で充電するためのスクエア状の接触式充電装置を装着。ドローンは全天候型ではないため、雨天時に運用はできない。
DroneNestの隣には通信システムや風速検知システムなどの運航に関わる情報取得装置が設けられていた。

 高低差のある2MWの太陽光発電所の山頂にDroneNestは設置されていた。DroneNestは全天候型のドローンポートで、中には可視光カメラと赤外線カメラを搭載したDJI Mavic2 Enterprise Dualが格納されている。

 遠隔地のPCから離陸ボタンを押すと、DroneNestが開き、自動的にドローンが飛行を開始。事前に作成した飛行ルートに沿って飛行し、ドローンはデータを取得していく。なお、DroneNestの外観の様子や内部のドローンの様子はDroneNestに内蔵されたカメラで遠隔からも確認できる。

撮影を終えるとドローンはピンポイントでポートへ帰還した。

 今回のように高低差のある現場では、安全性確保と点検品質を保つためにも飛行高度毎にブロック分けをして数回に分けて飛行させているという。作成したルートの飛行を終えるとドローンは自動的にDroneNestの上空に帰還し、DroneNestの離陸地点に貼られたマーカーを認識してピンポイントで着陸した。着陸後はドローンに備えられた接触端子による充電装置を使い、ポート内で自動充電を開始する。なお、当日は気温が高く、真夏や真冬にはドローンへの影響などもあるかと思われたが、DroneNestには温度センサーとエアコンが内蔵されており、温度によるトラブルも防止できる構造となっているという。

飛行中はPCに撮影映像が表示される。

 飛行中はドローンに搭載されているカメラ映像がPCに表示され、ドローンの位置情報や飛行高度、風速などの飛行に関わる情報がレイアウトされている。基本は自動航行によって点検を行うが、万が一の場合にはPCからドローンと搭載カメラを操縦することができる。奥村氏は「目視外飛行は直接ドローンを目視できず、搭載カメラの映像をもとに操縦するしかない。ドローンの周辺環境(電柱や電線、その他の障害物など)が分からないので、無暗に移動するのは危険が伴う。そこで、操縦する際にはカメラで安全確認ができる前方にしか移動させないといった条件を設けている」という。

赤外線カメラで撮影したデータ。熱を黒と白で表しており、日射量の具合なども影響する。

 同社のソリューションには、DroneNestとドローンのほか、クラウドサーバーとAI解析サービスも含まれる。撮影データをPCからクラウドサーバーへアップすることで、自動的に解析が行われ、異常箇所を可視化したレポートが提出される。AI解析はソーラーパネル点検のほか、工事段階の測量業務や進捗管理や風力発電設備の点検にも使用しており、DroneNestの設置は工場の定期点検や工事の進捗管理などにも有効だという。

 また近年、太陽光発電所では銅線の盗難被害が相次いでいる。銅線の盗難被害は電力の生産ロスだけでなく、修理にも時間とコストが必要となる。同社のソリューションは警備監視としても役立てられ、赤外線カメラを使った夜間の不審者検知やドローンに搭載されたスピーカーによる呼びかけで犯罪の抑制が可能だ。

 同社は3年間使用する想定でソリューションの提供価格を約1000万円とし、500kW以上の太陽光発電所から導入を推奨している。今後、レベル3飛行の規制緩和やソーラーパネル点検の手法の改定など、ドローンを活用しやすい方針にシフトしていく可能性も高く、より一層期待が高まっている。